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151国会 文教科学委員会会議録 2001年06月25日
○山下栄一君 各参考人、お忙しいところをきょうはありがとうございます。わずか十五分の陳述で本当に申しわけない。日ごろの多くのお訴えしたいことがあったと思いますけれども、申しわけない状況だなということを感じながら質問させていただきたいと思います。
今回、学校教育法を中心に教育三法の審議中でございます。教育という人間の行為、営為といいますか、非常に根源が問われているような状況になってまいりました。
そんな中での今回の法案審議でございますが、私は、この前ある本を読んでいまして、大人が一センチ変われば、それもよく変われば子供は一メートルよく変わるという、そういう言葉に出会いました。私も子供が三人おります。そして、教育現場でも、中学生、高校生と格闘していっぱい失敗しまして、今そのことが非常に教訓になっております。大人は子供の時代が必ずあったわけですけれども、すっかり忘れてしまう。子供のころのことを忘れてしまって、完成品みたいな気持ちになって子供に接する場合があるわけです。自分の子供なんかを見ていまして、子供の成長というのは物すごいなと。大人が親としてついていけない、ついていけないから権力的に対応してしまうというふうな面もあるなと。大人が一センチよく変われば子供は一メートルも変わるんだ、それほど敏感なんだと、子供は。そういうことをもう一度大事にしていかなきゃいかぬのではないかということを感じておるわけです。
そんな中で、きょうは、子供とお父さん、お母さん、学校の先生、その直接的触れ合いがどんどん世の中から少なくなっていく中で、現場で格闘していただいております瀬戸参考人に特に、今のお二方は質問されませんでしたもので、私はお聞きしたいわけでございます。
〔委員長退席、理事松村龍二君着席〕
子供の立場に立った公的な機関というのはそんなに多くないなと。そんな中で、川西市で平成十一年に設置された子どもの人権オンブズパーソン条例、そして制度、これは私は画期的な制度であるなということを感じておりまして、将来、少しずつこの意義が大きくなっていくのではないかと自分自身評価させていただいております。
私も関西出身でございまして、川西市の取り組みは非常に評価させていただいておるわけでございますけれども、相談、調査、調整活動を通していろんなかかわりを、子供にもかかわるし保護者にもかかわる、教員にもかかわる、そして行政の機関、警察も含めたいろんな行政機関にもかかわっておられて、さまざまな社会のひずみをもろに感じておられるのではないか。象徴的に、子供が、保護者が電話をかけてきたりしてパーソンに訴えるわけですけれども、その背景は非常に複雑であり、社会のいろんな問題点を集中して感じられてきたと思うわけです。
一年数カ月の取り組みの中でいろんなことを感じられたと思いますけれども、現場でいろんな経験をされた中で、先ほどソーシャルワーク的な活動とおっしゃいましたし、実際、問題解決に当たっていくと、自分たちがコーディネートしたりサポートしてあげると、八割がもう自分たちで解決していくんだというような言葉が先ほどたしかあったと思うんですけれども、その辺のことをもう少し経験を通してお話しいただければありがたいと思っております。
〔理事松村龍二君退席、委員長着席〕
○参考人(瀬戸則夫君) これは初期のころの相談ですけれども、母親と子供が二人いたのかな、それであと母親のおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に住んでいる人が相談に来られて、申し立てしたいと。小学生の話だったと思うんですけれども、教員が暴言をして、うちの子ばかり排除するというような訴えがあって、申し立てして、調査して意見を言ってほしいというような案件がありました。
しかし、それからしばらくして、おばあちゃんが来ました。ちょっと待ってほしいと言うんですね。その後もう一度お母さんにも聞くし、それから子供自身にも聞くということになる。それから、そのお二人の了解を得て教員にも実は話を聞きました。そうすると、やはり教員自体にもその子供に対する十分な理解がなくて、ややちょっと一面的な対応になってしまったということがあったようです。
それと、その母親自身におじいちゃん、おばあちゃんとの関係があって非常にいろんな悩みを抱えているということ。実は教員と一度も話したことがないというようなことがわかりました。ですから、その子供自身もそういった母親のいろんな不安定なことから、子供自身がやや少しとっぴな行動がクラスの中であったということでなったということがわかりました。
それをそれぞれ聞いていくと、やはり親自身がいろんな問題を抱えていて、子供自身もそのことについて気にしているということ。それで、教員の方がそのことがわかった時点で子供の動きというのがよく見えてきた。どなり散らす必要もないというようなことですね。というようなことがありまして、申し立てはやめて、あと直接保護者と教員が話ができるというようなことができたケースがありました。
事ほどさように、私ども十五万都市ですけれども、私どもが見た範囲でも、とにかく、同じ日本人という言い方はちょっと問題がありますけれども、同じ日本語は通ずるのに現実に意思疎通が全くできないというような感じを持ちます。それは子供と教員との関係にもありますけれども、特に親と教員との間にほとんど日本語が通じないかのごとき現状が出ているというような感じがしまして、何か通訳的な人間が要るんじゃないか。それが、ソーシャルワーク的な活動が学校現場において、特に保護者と教員との間で必要なんじゃないか。そこのときには、それぞれの立場、思いもあるんだけれども、子供にとってよりよい関係をどうするかという観点でいま一度保護者と教員にそれぞれ問題を整理してもらうというようなことによって、子供が非常に楽になる、子供自身が力を発揮できるというようなことをたくさん経験しています。
それで、親はやはり自分の過去のことにとらわれております。自分の一定のイメージでもって、学校のあるべき姿その他、子供のあるべき姿を持っております。しかし、現実に子供自身は現にその学校、クラスで生きているわけですね。ですから、親が非常に怒っていて、もうまさに自分の全存在をかけて怒っているというときでも、その子供自身はいろいろ苦しみやら課題はあるんだけれども、やはりそこの学校、クラスで楽しく通っていきたい、先生ときちんと話がしたいという思いがあるわけですね。
そういう意味で、子供の最善の利益に立ちつつ、子供、保護者に寄り添って話を聞く、それから教員にも話をするということを続けることでほとんど、七、八割それぞれの当該の方々が問題の解決の起点に立ち得るというようなことで、そういった機関が今までなかったなと私はこの二年半の経験で思っているわけです。
○山下栄一君 川西市の場合は、三人のパーソンというのは、きょうお見えの瀬戸さんは弁護士で、あとは大学の先生、児童福祉、保育等の専門の先生、もう一人の方は障害児教育の専門家という三人の方がパーソンだと。それ以外に、条例なんかを見ますと、それを補佐する五人の調査相談専門員がいらっしゃる。五人の方の選ばれ方ですが、専門的な分野、教育とか福祉とかいろいろあると思うんですけれども、こういう活動をするのにふさわしい専門性を持った人はどういう専門分野なのかということ、このパーソンの方とそれを補佐する役割というのも非常に重要だと思うんですけれども、そのことをお聞きしたいことと、それからこの条例のパーソンの制度は行政機関の中でどこに位置づけられるか、市長の附属機関というふうにここに書いてありますけれども、市長の附属機関がいいのか教育委員会の附属機関がいいのかということ、これも大きな観点だと思うんですが、その二点、ちょっと教えていただけたらと思います。
○参考人(瀬戸則夫君) 専門員は週四日詰めておりまして、基本的に電話相談をとりあえず彼らがやるわけですが、大学修士課程卒業以上ということ、それとかそれ同等の国際的な子供にかかわったとか、そういったような一定の基準を設けておりまして、公募して試験で選ぶというようなことになっております。今までは小児科の医師と、それから教育学の非常勤講師と、それから国際子ども権利関係のNGOの専門家というような方が選ばれております。最近、一人、小児科の方がアメリカへ留学されて、女性一人だけ、別の方に変わっております。
それから、二つ目ですけれども、市長の附属機関か教育委員会の附属機関かということですが、私は条例の検討委員会のメンバーでありまして、当初、実は教育委員会の附属機関ということで条例の案としてはつくっております。それは、私自身とかほかの皆さんもそうですけれども、いじめ問題を契機にして、そういった機関が必要だという問題発想から条例案として提起されたわけですね。ところが、市議会の中で、教育委員会、学校だけなのかというような素朴な疑問も議員の中にあったんだろうと思います。結果的に市長部局に置いて、教育委員会の方は教育委員会の規則でこの条例について最大限尊重するという形でブリッジして、教育委員会も一定程度拘束を受けるというようなことでできております。
それの功罪ですけれども、今この二年半やって、案件が多いのは、当然というか学校問題、教育委員会の関係でございます。それで、それについては私どもも結構一定の効果を発揮しているというふうに思っております。
ただ、子供の問題は常に、先ほども申し上げましたように、医療の問題、それからもう今は絶えず児童相談所との絡みが特に小中の場合には非常に多くかかわっております。そちらについてどれだけ十分なことがというようなことは、課題は私どもも抱えておりますけれども、子供の問題について私どもは逃げずに全部やります、可能な範囲で対応しますという姿勢が例えば多くある学校の問題についても一定の力を発揮するんじゃないかということで、結論的には、結果的に教育委員会のことが中心であるけれども、場面を限定せずに全領域というふうに条例づくりをしたという議会の決定は私は非常によかったと思っております。
○山下栄一君 ありがとうございました。
あと二つ質問させていただきたいと思いますけれども、私は、教育の世界、学校の世界には権力的措置は基本的になじまないというふうに思います、権力というのは外から押しつけるわけですから。教育というのはやっぱり、太陽と北風じゃないんですけれども、内から解放していくという、そういう考え方が子供の内発性を大事にするというか、そういうことが大事だというふうに思うわけです。
理想どおりなかなかうまくいかない場合もあるわけですけれども、基本的に学校現場では権力的措置はなじまない。しかし、非常事態、先ほど木村参考人もおっしゃっておりましたけれども、非常事態のときにはやはり秩序をしっかり守らにゃいかぬ、子供の命を守らなきゃならないという、そういう観点はどうしても必要なわけで、それを忘れてしまうと教育それ自身が崩れてしまうという面もあるわけです。
したがって、例えば出席停止処分というのは、特にこれは義務教育においては、学校に行かなきゃいかぬという一方で学校に来るなという処分ですから、これは非常に慎重でなきゃならないという、そういう議論が成り立つわけだと思いますし、私は、問題行動を起こす子供、これはどんな子供も起こし得る、自分の子供も起こし得るということを忘れてはならないというふうに思いまして、別の何か特定の方、特定の子供だけが起こすものでも何でもない、今はそんな時代環境だというふうな中で、この出席停止処分というのは発動するまでが勝負だと。それも、学校現場だけで努力するのではなくて、地域の総力を挙げて取り組む仕組みが大事だと。それほど今教員自身も苦しんでいる、学校任せにされてもたまらないという、そういう状況だと。みんなの、地域の、警察も含めた、児童相談所も含めた、また地域の工場の経営者の方も含めた、それこそさまざまなサポート体制、それが、文部省でも学校サポート委員会、サポート体制というようなことが今一生懸命言われていると思うんです。
そんな中で、実際、学校現場で教員が子供をいじめたり体罰をしたり、そんなことも起こるけれども、受けた方の子供はそれを訴えていく場所がない。学校は行政機関という面は少ないわけですけれども、行政不服審査の仕組みも教育現場にはない。処分の仕組みだけは学校教育法二十六条にある。それを今回、二十六条の改正で手続のことが規定されたことは私はすばらしいことだというふうに思いますが、子供の意見を聞くということは法律では明記されていない。それは教育委員会規則なんかでこれから運用面でと先ほどもおっしゃっていましたが、検討され、そうなっていくというふうに私は信じておるわけです。
そんな中で、私は、この川西市の子供とか保護者が持っていきようがなかったその受け皿として極めて大事な部署ができたなという意味で、非常にユニークだというふうに評価しておるわけでございます。そんな意味で、私ども推薦させていただいて、きょうは川西市の方から来ていただいたということでございますので、ちょっとお話しさせていただきました。
木村参考人にお聞きしたいと思います。
先ほど体験学習のお話をされました。また、健全な職業観、勤労観の養成は特に今の日本の教育システムでは極めて重要だということを前から木村参考人はおっしゃっておりますし、私も同感でございます。しかし、来年から学校五日制が始まって、学校現場は知的系統学習中心ですから、そこに体験学習というようなことが入ってくると、それは両立する面もあるんでしょうけれども、何か知的部分が、どんどん系統立てて教えることが減っていくようなことになってしまうわけです。それが学力低下というような議論に結びついてしまうという、私はそうではないとは信じておるんですけれども、本当の知的学習というのは学力低下に結びつかない、時間の問題、授業が少なくなったら学力低下が起こるという問題では私はないと思うんです。
だけれども、知的学習と体験学習を両方しっかりやることが物すごく大事だというふうに思いまして、それはどこでやるんだと。もちろん学校現場でもやるけれども、社会の中でそういうものを、なかなかコミュニティーが崩れていますから難しいわけですけれども、それをつくり上げていくことがお父さん、お母さんをサポートすることになっていくし、教員もサポートすることになっていくというふうに思うんですね。
この議論はこれから物すごく重要になってくると。それを単に義務化みたいなことだけで言っていくと非常に反発ばかり呼んでいくのではないか。これは国民大運動として社会体験学習を工夫をしながら広げていくという試みが極めて大事だ、職業観の養成、勤労観の養成も学問の生活化という観点から物すごく大事だというふうに思っておりまして、そういう議論も国民会議でなされたというふうに思いますけれども、こういう観点からの木村参考人の御所見をお伺いしたいと思います。
○参考人(木村孟君) 私も、今、山下議員の御指摘の点は大変重要だと思います。
やはり日本の社会で欠けておりますのは、今、例えば一つ体験学習をとりますと、そういう体験学習を子供たちにさせる社会の仕組みが非常に乏しいということだと思います。
私も前後四年ほど英国に住みましたけれども、あの社会は非常にうまくできておりまして、何万という子供たちにさまざまな体験学習をさせるNPOが存在しております。私の友人も大変大きなNPOの長をしておりますが、その活動状況を見ておりますと本当に頭が下がる思いで、実に細かく社会を見て、社会の各層あるいは各地域、そういうものに訴えかけて、子供たちを引っ張り出して、家庭で十分指導できなかった部分を社会の中でやろうという仕組みができておりまして、我が国でもやはりそういうふうな方向へ全体のメカニズムを持っていかなきゃいけないのではないか、そういうふうに私は考えております。
○山下栄一君 ありがとうございました。