151国会 農林水産委員会会議録 2001年06月14日
○山下栄一君 財務省、来られていますね。それでは先にタコの話から。
具体的な事件のことで、まず、法案の中身にもかかわる話でございますので、この冷凍のタコの輸入脱税事件の件なんですけれども、企業犯罪と言えると思いますし、非常に重たいこれは事件だなというふうに感じております。それで、こういう特恵関税にかかわる犯罪は初めてだそうなんですけれども、この事件の概要について財務省からお願いします。
○政府参考人(寺澤辰麿君) お答え申し上げます。
冷凍タコの関税率につきましては、一般税率は七%でございます。特恵関税制度を利用した場合には、これが開発途上国を原産地とするものについては五%の税率が適用となります。さらに、後発開発途上国を原産地とするものにつきましては無税となっているわけでございます。
先生御指摘の本事件でございますが、大手水産会社が西アフリカから冷凍タコを輸入するに際しまして、実際には原産地が五%の特恵税率が適用されるセネガルまたはカナリー諸島等であったにもかかわらず、無税の特恵税率が適用されるガンビア共和国またはモーリタニア・イスラム共和国を原産地と偽って輸入申告をいたしまして、関税額約四億円を免れていた嫌疑のものでございます。
本件につきましては、去る五月八日、東京税関が関税法違反嫌疑事件といたしまして東京地方検察庁あて告発しております。
○山下栄一君 これ、なぜ発覚、わかったのかということですね。これちょっと教えてくれますか。
○政府参考人(寺澤辰麿君) お答え申し上げます。
私ども、通関をいたしました後も、それぞれの輸入申告の内容について、適正であったかどうかを担保いたしますために事後調査等を行うことがございますが、いろいろな業界紙の情報等を踏まえまして、事後的に調査をして、この事実をつかんだということでございます。
○山下栄一君 それはいつわかったんですか。
○政府参考人(寺澤辰麿君) 平成十二年の一月ぐらいに業界紙にいろいろなタコの輸入に関する疑惑が掲載されておりますので、そういったものも参考にしながら内偵を進めてきたということでございます。
○山下栄一君 業界紙を通してわかったと。今、平成十二年とおっしゃったけれども、平成十一年じゃないのかなと思うんですけれども。
これ、だから、告発されたのはつい最近ですよね。何でこんな時間がかかったのかということと、今、大手水産会社とおっしゃいましたが、これ一社だけなのか、どうなっているのか。この辺ちょっとお聞かせください。
○政府参考人(寺澤辰麿君) 具体的にどういう調査をしてどれぐらい時間がかかったかといった個別の内容及び現在調査をしております内容につきましては、答弁を控えさせていただきたいと存じます。
○山下栄一君 私の質問聞いていただいていなかったのと違うかなと思うんですけれども、なぜこんな時間がかかったのかということは、そんな別に中身にかかわるとかいう話じゃなくて言えると思うんですけれども、何で時間がかかったんやと。それと、大手水産会社というのは、一つなのか二つなのか三つなのか、その辺ちょっとわかりませんかということです。
○政府参考人(寺澤辰麿君) 先ほどお答えいたしましたように、その業界紙等の情報等を踏まえて東京税関におきまして内偵調査を進め、いろいろ調べたわけでございますが、具体的にどういう調査をしてどれぐらい時間がかかったかといったことにつきましては答弁を控えさせていただきたいと思いますし、現在、私どもが冷凍のタコの輸入に関します関税法違反で告発いたしておりますのは一社のみでございまして、現在調査中のものにつきましては答弁を控えさせていただきたいということでございます。
○山下栄一君 だから、検査していたということですな。内偵していたというお話。立入検査、強制検査、それぞれいろいろやられた上で事実が確認できたので告発したということだと思いますけれども、一社以外にも調査の会社があると。
私、これ非常に国際的な信用にかかわる事件だと思うんですね。本来、途上国への、またそういう、これからしっかり国づくりをして、支援する必要があるという使命を感じて、日本が国際貢献ということも考えて特別関税制度の対象にした国だと思うんですね。国際貢献の本来そういう貿易制度であるにもかかわらず、それを悪用したと、それも大手の会社が悪用したということは、国際社会においても大変なこれは信用失墜だと思うし、日本の資源管理のもとで一生懸命操業されている国内漁業者にとっても、何やっているんだ、やってられないよというふうなことじゃないかなと私は思うんですよ。
こういうことは、今、西アフリカのガンビアですか、特恵関税ゼロというのは別にこの国だけじゃないと思いますし、またこういうことは、多分税関の方も、もう横行しているというのが新聞の記事ですけれども、横行しているのかどうか、その辺はわかりませんけれども、こういうことは理屈で言ったら考えられるなと。ほかにもあるのかもわからぬなというのが税関の態度になかったらいかぬと思うし、大手といえども信用できないな、ちゃんとやらにゃいかぬなということで今いろいろ仕事をされていると思うんですけれども、これは税関にとっても、何をやっていたんだと追及されるべき、国民の税金で仕事をしていて何をしているんだというふうなことだと思うんですよ。
この事件に対して、これは氷山の一角なのか、これは特異な例なのか、それの判断とか、今後こういう問題にどういう対処をしようとされているのか、その辺をお聞かせください。
○政府参考人(寺澤辰麿君) お答えを申し上げます。
先生御指摘のように、特恵関税制度というのは、この制度の趣旨は、開発途上国の輸出所得の増大、工業化の促進を図るために、開発途上国を原産地といたします貨物につきましては一般の税率よりも低い関税率を適用して開発途上国の経済発展を助けようという制度でございますので、私ども、その当該開発途上国の原産地証明を見て判断をしているわけでございます。
今回の事件は、その原産地証明が偽造されたという事件でございますので、この事件を教訓といたしまして、関税局、税関におきましては、適正な通関を確保するために、特恵関税の適用を受ける輸入申告に対する審査を強化してございます。さらに、輸入量の多い特恵関税適用物品等の取引形態等につきまして輸入者からヒアリングを実施する。また、外交ルートやWCO、これは世界税関機構と言っておりますが、こういった国際機関を通じまして、原産地証明書の発給状況、また特恵受益国に船籍を有します漁船名等につきましての情報収集を行うとともに、必要があれば現地調査も実施してみたいと考えております。さらに、外交ルートを通じまして、適正な証明書が発給されるように関係国に要請をする等の対策を講じているところでございます。
○山下栄一君 原産地証明書の偽造も何か非常に、大変巧妙だったそうですけれども、こういう事件は大変困った事件なわけですが、この大手の信用あるはずの会社が、マルハですか、そういう事件を起こしたということは、業界にとっても大変なこれは話だと思うんです。また、水産庁、農水省としてもこれはゆるがせにできない事件だと思うんですけれども、どこまでこういう問題について水産庁が権限あるのか私もよくわかっておりませんが、水産庁としてはどういう取り組みをされたのか、されつつあるのか、お願いします。
○政府参考人(渡辺好明君) 事件の報道がございました五月九日、この日にマルハの社長が私のところに参りました。
私からは三点申し上げました。一つは、水産物流通業界のリーダー的地位にある会社が特恵関税制度を悪用したことはまことに遺憾である。二点目には、事件の関係者と会社自身がしっかりとけじめをつけること。そして、三点目でありますが、再発の防止のための組織的な対応をしてほしいということで、五月九日の報道を受けましてそういった指導をいたしました。
その後、五月十一日に、水産庁長官名で輸入業者の団体である社団法人日本水産物輸入協会を通じまして、再発防止の指導を文書で行ったところでございます。なお、この点につきましては、たまたま五月二十九日にメンバーの総会がございましたので、担当課長が直接そこに出向きまして、その点をさらに重ねて指導いたしております。
いずれにいたしましても、私どもとしては、こうしたことが再発しないように、システムとしてチェック体制を社内に設けるということを重点に指導しているところでございます。
○山下栄一君 今、いろいろ御指導されているそうなんですけれども、特に社団法人日本水産物輸入協会、これは所管外だと思うんですけれども、この協会に指導したという、その指導できる根拠は何なのかなということを教えてくれますか。
○政府参考人(渡辺好明君) 物資を所管する省庁として、言ってみれば農林水産省設置法に基づいて、所掌物資に係る輸出入並びに関税、国際協定等云々に関することという所掌事務がございますので、それをよりどころとして行っております。
もちろん関税制度自身は、国内の漁業者を守るために通常の関税が設けられているところでありますので、それを特恵関税制度という形で相手国のことを考えて低くしているわけでございますから、そういう点からも私どもとして意見を言う立場にある、指導する立場にあると考えております。
○山下栄一君 五月の初めに指導したと言いましたよね。それまでは全く知らなかったということですか。
○政府参考人(渡辺好明君) 事柄は、事実に基づいて、しかも相手方が認めたという状況がございましたので指導いたしました。それまではこういったことは承知をしておりません。もちろん、業界紙でいろいろなうわさがあるということはどの世界でもあることでございますけれども、司法当局が強制捜査に入った、それも、相手方がそれを認めたということを機として指導したところでございます。
○山下栄一君 これ、ガンビアからのタコの輸入が激減していますよね、平成十二年。平成十一年が五千五百二十六トンで、平成十二年、四百七十八トン。十分の一以下に激減している。
十二年の統計のとり方はちょっとよくわかりませんけれども、平成十二年に激減しているということは、つい最近、多分この事件と関連があって減っていると思うんですけれども、多分、関連があると私は思うわけです。これは、だから、起訴されたとかそういうことで減ったんじゃなくて、業界紙とかにうわさでそんなことが一遍に広まって、これはちょっとやばいというようなことがあったのかということからこれは減ってしまっていると思うんですよ。それを最近になって指導し始めたというのも全然わかりません、私はわからない。と同時に、この取り組みがちょっと甘過ぎるなということを感じます。
日本水産物輸入協会という社団法人は、さっきも質問しましたけれども、これは、だけれども、水産庁は指導できない協会じゃないんでしょうか。
○政府参考人(渡辺好明君) 先ほども御説明いたしましたが、法人としての所管は経済産業省でありますけれども、私どもは、水産物の輸出入その他所掌物資でありますから、それについて、そういう場をかりた指導をすることは可能でありますし、先ほど重ねてと申し上げましたけれども、メンバー会社に対しまして担当課長がさらにそれを口頭で、きちんと目の前で説明をするということも所掌事務の範囲内であろうと思います。
○山下栄一君 組織はそうかもわからぬけれども、実際事件を起こしているのは全部じゃないし、マルハの名前をさっき出しましたけれども、こういうところを組織的にちゃんと指導を何でできるのか僕はよくわからない。経済産業省とはよく連携をとられているんですか。きょうは来ていませんけれども。
○政府参考人(渡辺好明君) 関税問題は財務省、そして、この団体の所管で輸出入一般を行っておりますのが経済産業省でありますので、経済産業省の農水産物の貿易を担当しておりますところとは連絡をしております。
○山下栄一君 きょうは経済産業省に来てもらったらよかったんですけれども、経済産業省にヒアリングした段階では、これは該当業者が悪いんだと、だから組織的にこの協会を指導する気もないしという話だったんですけれども、どういう連携でこれをやっているのかなということを感じました。大臣の頭に入れていただきたいと思いますけれども。
水産行政一般の観点から指導はできても、だけれども、きちっとやるかどうかなんというふうなことまでちゃんと監督できるんですか、これは。御指導は呼んでされたとしても、ちゃんときちっとそれが、御指導が担保されるというのは、そういう権限はないんじゃないかなと思うんですけれども、水産庁には。
○政府参考人(渡辺好明君) 重ねて申し上げますけれども、関税制度というのは、言ってみれば、国内のこの種の業に携わる方々のためのある種の防護壁でもあります。それが悪用されたということでありますから、そういった観点からの指導は所掌事務の範囲内にあると私どもは考えておりますし、指導をした結果、それがどうなったかということにつきましては、報告を求めるという形でフォローアップはきちんとしたいと思っております。
○山下栄一君 ちょっとよくわからないな。社団法人の監督責任は経済産業省にあるはずだと僕は思うけれども、この組織そのものは。指導はできても、それは指導の入りぐあいというのは僕は疑問だと思います。
何が言いたいかというと、経済産業省と財務省とそれから水産庁がよくしっかり連携をとって、危機感を持って臨んでもらいたいということの御要望でございます。これが広がっていってどんどん、どんどんというか、ほかにも、つい最近、どこだったかな、山口県の会社の報道がされておりましたけれども、広がる様相を見せておるわけですから、より厳しく指導していかにゃいかぬ、そんなことができるのかなと。大臣、どうなんですかね、これは。
○国務大臣(武部勤君) 今回の関税法違反事件につきましては、漁業者のみならず国民の水産物輸入制度に対する不信感を起こすことになりかねないわけでありまして、さらにまた輸入相手国との信頼関係を損なうことも懸念されているわけでありますので、我々はまことに遺憾なことだと、かように考えているわけであります。
したがいまして、今先生、どんな指導ができるんだ、そういう権限が農林水産省にあるのかということでございますが、これは再発防止に向けましては、権限があるとかないとかという、そういう問題ではないのではないか、ただいま申し上げましたように。
したがいまして、この日本水産物輸入協会に対しては、傘下の会員企業に対してもきちっとしたチェック、監視体制を整備されるようにという、これはお願いということになりましょうが、しかし、農林水産省としては一種の指導だと、かように考えているわけでありまして、その結果いかんによって、徹底されなければ、これは政府、関係府省とも連携をとり、協議をした上でしかるべく改善を期していかなきゃならぬと。
そういう意味では、私ども、これは所管外だとは思っておりませんで、むしろ第一義的に水産物の輸入制度というものの信頼性を確保するために、またこれは漁業者にも影響してまいります、国民に対しての信頼関係、輸入国に対する信頼関係というものは、今国会で今審議をお願いしております水産基本法の理念というのは、水産物の安定供給ということを一つの理念にしているわけでありますので、このことは看過できないと、そういう考えで臨んでまいりたいと思います。
○山下栄一君 TAC法改正、今回の法改正、これは漁獲の作業もそうですし量もそうだと思いますけれども、これをさらに制限をしていこうという法改正だと思うんです。それにかかわる今回の事件じゃないかなと。これ輸入割り当てのない、タコというのは輸入割り当てがない、そんな中でこういう形で輸入されていると。まさにこれは、先ほども申しましたけれども、国内業者にとっては水産行政は一体どうなっているんだという不信が高まっていく話だというふうに思うわけです。
今回の法改正の中でこういう事件が起きたということについて、水産庁長官はどのように受けとめておられますか。
○政府参考人(渡辺好明君) 事件そのものは、まことに遺憾な、あってはならないことだと思っております。
ただ、私ども、情報収集体制を、やはり国内外ともにもう少しアンテナをしっかり磨いて、いろいろなものを集め、常にそういう問題意識を持っておくということが大事だろうと思っております。
もちろん、財務省の貿易統計あるいは在外公館を通じた調査というのはあるんですが、それ以外にもいろいろなルートで資源の動向なり貿易の状況というものを掌握してかかる必要があると思っております。
○山下栄一君 こういう状況について、先ほど統計をちょっと出しましたけれども、ガンビアからの輸入状況はそれまで、平成十一年までどんどんふえておったと。事件が発覚してから激減しておるわけでございまして、こういう把握の仕方なんですけれども、漁獲、それぞれの輸入量もそうなんですけれども、例えばタコにしてもどこの国から、原産地はどこの国からどれだけ入っているんだという形の掌握の仕方が私は必要だと思うんですけれども、されていないんだったらこれはやっていかなければいかぬし、そういう把握の仕方の工夫というか改善についてはどういうふうにお考えでしょうか。
○政府参考人(寺澤辰麿君) 例えば、今問題となっております冷凍タコの輸入貿易統計につきましては、毎月、冷凍タコの輸入数量、金額を公表しておりますが、それはすべて国別にも公表しておりますので、この統計を活用していけばそういった異常な動きというのはキャッチできるのではないかと考えております。
○山下栄一君 異常な動きがキャッチできるはずだけれどもできていなかったということだと思うんですけれども、それは所管それぞれの連携かもわかりません。いずれにしても、ちょっと何か御指導し始めたのも五月からなんというふうなことをおっしゃっているし、だから、私は、これは、取り組みとしては水産庁、農水省、それから、今答弁いただきました財務省、税関業務もそうだと思いますし、それから経済産業省、この辺の連携の問題ではないかなと思うんです。この指導のあり方もそうだと思いますけれども、僕は、経済産業省からきょう来てもらっていないからどうしようもないですけれども、余りにも危機感がないなと思いました。
そういう意味で、ぜひ大臣にこの辺の、今回の事件を教訓として、国際的な信用をなくし貿易行政は一体どうなっているんだということ、そして国内の業者に水産基本法をつくろうという段階でこういう事件が起きている、TAC法を改正しようというところで事件が起きているということについて、水産行政の根幹を揺るがす事件だというとらえ方が大事ではないかと。
そういう意味でも、先ほど大臣もおっしゃいました、危機感を感じておられると思いますけれども、連携が物すごく大事だというふうに思うんですけれども、この点のお考えをお聞きしたいと思います。大臣に聞きます。
○国務大臣(武部勤君) まことに今回の違反事件は遺憾にたえないと思います。それは、先ほど来申し上げましたように、漁業者のみならず国民の水産物輸入制度に対する不信感を起こしかねない、また輸入相手国との信頼関係を損なうという、そういう懸念もございますし、ただいま先生御指摘のように、世界の垣根、国境というものは低くなっておりまして、輸入国というものが、これがどこからどのような形で国内に輸入されているのかということについては十二分に注意を喚起する必要がある、かように思います。
したがいまして、諸外国における水産物貿易と水産資源の関係に関する調査等も含めまして、関係府省と連携をさらに強化するように努力したいと私は思います。
○山下栄一君 財務省、結構でございます。ありがとうございました。
次の質問。
多面的機能、これは午前中もこの話、質問ございましたけれども、午前中の答弁でも、渡辺長官の答弁では、多面的機能も林業と農業、それから水産業、水産業はちょっと違うんだという話、御答弁ありましたですね。もうそれは全然納得できなくて、何でかなと、私は基本的におかしいなとは思ったんですけれども。これは今回の法律の中にも書いてありますけれども、水産業・漁村が持つ多面的機能、こういう表現が法律の文章にあるんですけれども、これは中身はどういうことなんですか。
○政府参考人(渡辺好明君) もう少し言葉を足して言いますと、水産物の供給というのが水産業そして漁村の基本的な機能です。それ以外にもたくさん機能を果たしているだろうということで、水産物の供給以外の多面にわたる機能、これを総称して多面的機能と言っているわけです。
多面的機能という言葉がかなり広く水産業と漁村について出てまいりましたのが、平成十一年度の漁業白書でございます。平成十一年度の漁業白書で、いわゆる多面的機能として例示をされておりますのは五項目ございます。一つは「健全なレクリエーションの場の提供」、それから二つ目には「沿岸域の環境保全」、三つ目は「海難救助への貢献」、四つ目は「防災、国境の監視」、五つ目は「固有の文化の継承」。
これを一つ一つ見てまいりますと、水産業や漁村そのものが物理的に果たしている機能というよりは、そこに人がいて、人が果たしている機能というふうに考えるのが素直ではないかなと私たちは考えたわけでございます。
それから、重ねて申し上げて恐縮ですが、農業・農村なり林業・山村につきましては、既にこれまで勉強の成果があり、これを数字に幾つかのやり方で換算をしたものもあるわけでございます。水産の世界ではそういうものがございません。そういうふうな実態、あるいは海外でもこのことを前面に押し出しているというふうな状況にもございませんので、多少位置づけが他のものとは違っているなというふうに思っているところであります。
○山下栄一君 基本理念の中にもそれが明記されていないところにあらわれていると思うんですけれども、僕は、基本理念の中に入れるべき考え方がないのがおかしいというふうに思います。人とのかかわりの中で機能、それはそうかもわからない、確かに海難救助とか国境監視への貢献、そういう役割、漁村、漁村というよりもそこにいる漁場従事者ですよね。僕は、例えば農業・農村、林業・森林か、そういうような基本法、名前になっております。この法律は水産基本法になっているわけですね。ちょっと言い方が違うわけですな。
そこにもあらわれているのかもわかりませんけれども、第一次産業としての水産業というあり方ではない、別の観点からの公益的機能、国民全体、人類全体への役割があるんだと、それは水産業にはないのかという、多面的機能、特に公益的機能という観点、こういう観点は余りないんですかね、水産庁長官のお考えには。
○政府参考人(渡辺好明君) 公益的機能という言葉と多面的機能という言葉を先生二つ使われましたけれども、公益的機能というのがどちらかといえば、これまで農林水産の世界で使ってきた中ではやや狭い。それは具体的に何を意味するかといえば、酸素を供給する、水を供給する、土砂の流出を防止する、そういった非常に装置なり物がストレートに果たしている機能を言ってきたわけですね。その外側にもう一つ、伝統文化の継承であるとかレクリエーションの場の提供であるとかというものが加わって多面的機能というふうに言っているわけでございます。
水産の場合には、酸素の供給であるとか水の浄化であるとか土砂の流出の防止であるとか、そういうのは水産業なり漁村そのものがやっているわけではなくて、そこに人がいて初めて果たせる機能なものですから、そういうふうな位置づけが多面的機能としてはふさわしいのではないかというふうに私たちは、これは論理の世界ですけれども持ってまいりました。
そうすると、水産業の健全な発展、そのための漁村の振興、こういう近くに施策として入れて、多面にわたる機能はだれも否定するわけではないけれども、それが十分に発揮できるように施策を充実していくというのが法律の構成上、一番落ちつきがいいというふうに思ったわけでございます。
○山下栄一君 環境保全の観点から、先ほど漁業白書の中で、「沿岸域の環境保全」という、これ、沿岸域の環境保全だけでいいのかと。田んぼも森林も自然環境の観点から大きな役割を果たしている。それで、水産業の観点では、沿岸域、自然環境の保全という役割が海、川、湖にあるんだと。そういう自然環境の中で人が水産業を営んでいる。漁村そのものも、農村、山村と同じように、多面的な機能というか公益的機能というか、どういう言い方がいいかわかりませんけれども、言葉のイメージはそれぞれ勝手に理解するからわからないんですけれども、重みを持ち始めた時代だと、それが自然と都市との共生という大臣が何遍もおっしゃるようなことじゃないのかと思うんですけれども。そういう面が非常に水産基本法になってくると突然薄くなってくるというのは何かおかしいなというふうに思えてならないんですよ。森林と同じように、田んぼと同じように、海の文化、湖も川も含めてですけれども、そういうものをどのように漁村、そして漁村に住む方々が取り組み保全していくかという観点が、非常にこれが大事になってくると。魚をとるにしても、資源を維持していくためにもそういう観点が大事だと。
海の環境、湖の環境、川の環境、そういう面が何となく薄いような私の印象なんですけれども、この辺はどうなんですか、大臣、ちょっと教えていただけませんか。
○国務大臣(武部勤君) 先生の御議論は非常に重要だろうと思いますね。今後の課題に私はなってくるのではないかと思うんですね。農業基本法も、食料・農業・農村基本法と、こういうふうに農業としてとらえていないわけですね。農村だとかあるいは食料の問題でありますとかと、非常に大きな概念でとらえている。林業基本法でもないわけですね、森林・林業と。
だから、私は個人的な考えですけれども、森には森の多面的機能がある、海には海の多面的機能というものは紛れもなくあると思います。そういう意味で、今後、海洋の問題というのは、本当に未知の世界が非常に多いんですね。
私どもの地元で流氷が一番大きな漁民の、またそこで生活する者の災いだったわけですよ。しかし、最近になりましてから、自然環境という問題あるいは資源問題という観点から、流氷が来るおかげで今日まで永続的な漁業の振興、地域の発展につながっていると、最近は観光客も来ますから。
そういう意味では、海というふうにとらえると親水の問題だとか、あるいは森が大気浄化作用があるとすれば、海は、最後は何でも水に流せという言葉があるように、ここで自然生態系の回復力といいますか、そういったものがあって我々は生き長らえているんだろうと思います。
そういう意味では、今回この基本法に多面的機能ということを理念として位置づけてはおりませんけれども、問題提起はしているわけでありまして、そういう意味では山下先生の御議論というものは我々も重く受けとめなきゃならない。今後、国内的にも国際的にもこういった議論や調査の積み重ねによりまして、今お話のありました多面的機能というものをどのような法体系でどのように位置づけていくかと、あるいはいずれこの基本法の改正ということも将来はあり得ると、こう思うわけでありまして、そういう意味では多面的機能を有していないというような考え方は毛頭ありません。そういう問題提起を抱えながら、施策の中できちっとやっていくべきものはやっていくし、追求していかなきゃならない問題については追求、調査をしていくと、こういう考え方で臨むべきだと、かように思います。
○山下栄一君 渡辺長官もそういうふうに言ってくれたらわかりやすいんだけれども、お立場があるから難しいのかなと、よくわかりませんけれども。
それで、これ私、あれは一般質問のときでもさせていただきましたけれども、農業も国民が支えると、林業、これから審議するわけですけれども、林業も国民が支えるという、水産業も国民が支えるという、そういう考え方というのは大事だなというふうに思っています。ところが、この水産基本法では、国民というよりも水産物の供給を受ける消費者という、それが新しい考え方なのかもわかりませんが、何でこれは消費者だけなのか、消費者という観念だけなのかなというふうに思うんです。だから、国民が水産業という産業を支えるんだという観点が必要ではないかと。そういうのが余り水産基本法では、国民というのが消費者になってしまっているのはなぜかなと思うんですけれども、この点をちょっとまた教えていただけませんか。
○国務大臣(武部勤君) 消費者という、そういう狭い考え方といいますか、消費者も決して狭くはありませんで、全国民は消費者であり国民であると。先生の言わんとすることは、いわゆる食の安全だとか安心だとかそういうことだけではないと、もっと広い意味で水産の問題というものをとらえるべきであろうと。昨今、プレジャーボートなども非常にふえております。やっぱり海に対するあこがれというものが幅広く国民の中にあるんだろうと思います。しかし、そこで漁業をする者とプレジャーボートでレジャーに興ずる者との間にいろんなトラブルがあります。そこで、海難事故などがありますと、本当に地域の漁業者は大変な苦労をさせられているわけですね。
そういうようなことを考えると、しかも、さらにつけ加えて言うならば、輸入海産物につきましても、それこそ向こうの海でどういうような形でどんな操法で漁業が行われているのかと。そういったことが自然環境にあるいは資源に影響を与えていないのかというようなことは、やっぱり国民の幅広い理解とあるいは合意というものがあってしかるべきだと、私はかように思います。
そういう意味では、基本法の概念もやっぱり人間と自然、生産者と消費者、都市と漁村との共生というふうなことにも結びつく幅広い効果をもたらすものを期待しているというふうに理解しているわけです。
○山下栄一君 それに関連して、基本法三十一条に都市と漁村との交流というのがあるわけですが、この観点も都市の、都市は確かに消費の場かもわかりませんけれども、そういう観点でこれ都市と漁村の交流ということを考えられているのかなと、それだけかなと。都市と漁村の交流を推進する目的をお願いします。
○国務大臣(武部勤君) 私が就任してから、都市と農山漁村との共生、対流という言葉を使っております。必ずしも交流ということだけではないと。交流というのは、都市の住民と農山漁村の住民とが交わるという考えですけれども、一人の人間に都市的生活もあるいは漁村的生活もともに享受できるということを理想としているわけでありますので、今後、いわゆる都市と農山漁村の対流、共生というような考え方に立ちますと、例えば今IT革命が進められているさなかでございます。やはり都会の人たちが漁村に来ても、広々とした海、青い空、さわやかな潮風、おいしい魚だけじゃない、やっぱりそこで泳いだ後、釣りをした後、部屋に戻れば、そこでインターネットを利用してすぐ自分の職場とつないで仕事の延長がそこでできるというようなプラットホームといいますか、共通社会基盤というものを完璧に整備するという意味の漁村であり農村であるということを我々は想定して、この法律の目指すところも具体的にはそういう方向づけを念頭に置いて今後の政策展開をする必要があると、かように考えているわけであります。
○山下栄一君 私も、対流ですか、大変重要なことだと思いますし、交流することによって、特に教育の場としてもこれはとらえられているわけですけれども、そういう漁業という第一次産業の技術、そしてそこから出てくる文化に触れることによって、そういう生産とか技術とかいう観点を超えた全人格的な価値が漁村また漁村の地域にあるということを発見するといいますか、そういう観点からの漁村の再発見というのか、そういうことがないと、担い手の問題にしても何の問題にしても非常に未来の面で暗くなってくるというか、そういうふうに思います。
漁業をされている方も、もちろん魚をとるわけですけれども、魚をとろうと思っても最近非常にとりにくい、魚がとれなくなってきていると。したがって、生態系の保全という観点が漁業者そのものにも求められているということを実際携わっている方もおっしゃっておるわけでございまして、そういう時代なのだなということ。第一次産業のとらえ方がやはり新しい観点でとらえ直さないと、全国民がやはりもっともっと理解する努力をしないと、食の安全保障の観点からもそうですけれども、人間の豊かな心を養うという意味でも、全く違う観点からのとらえ方が非常に必要な時代になってきているということを感じております。
次に、自給率の話、午前中もお話がございました。これはカロリーベースじゃない、重量ベースだと。
この自給率の目標については、食料・農業・農村基本計画ですか、ここには平成九年度六〇%、食用ですね、これは平成二十二年度六六%、こういうふうに書かれてあると。
今回の水産基本法でも、水産基本計画の中にこの自給率の目標を設定するということがうたわれておるわけですが、午前中の質疑では、この食料・農業・農村計画、平成十二年閣議決定されたこの六六%、これはそのまま踏襲されるのではないかと思うんですけれども、何かそうでないようなことをちょっと感じたんですけれどもね。これは水産基本法でも水産基本計画の中にこの目標の設定がうたわれている。この具体的な中身はどうしていくのか、どういうふうにして積算されていくのか、六六%が変わるのか、そんなことはないとは思いますけれども、この点、どうなっているんでしょう。
○政府参考人(渡辺好明君) 午前中の御議論の中でもお答えをいたしましたけれども、基本計画を年度内につくります。その中で自給率の目標というものが出てまいります。これは水産政策審議会にお諮りをして御審議いただきます。具体的に水産物の自給率の目標を、いつをスタート台にし、いつを目標年次にして何%にするか、そのときの表示をどうするか、各具体的な品目の何らかの目標を示すのかということはこれからでございます。
ただ、水産物というのは日本人の食生活の一構成要素であります。午前中、カロリーへの寄与率が五%ぐらいというふうに申し上げましたけれども、そういう中で、ある種、この新しい水産の資源管理という哲学を織り込んで、日本の二百海里水域を最大限持続的に利用するとした場合には、これだけ水産物を供給することが可能であろうという計算を当時いたしまして、それが積算基礎として六六%。ですから、このこと自身が閣議決定ではなくて、積算の基礎ということでありますが、相当な努力をしてこの数字を積み上げております。これは大きな参考になると思っておりますが、具体的な審議はこれからさせていただきたいと考えます。
○山下栄一君 ずっと自給率が減ってきているわけですね。それで、十二年度は五五%でしたか、それを二十二年に六六%を設定しても、何となく本当かなというふうな考え方しか出てこないんですけれども、いろいろ苦労されて積み上げたというお話がありましたが、なぜこう下がってきているのが上がっていくのかということを教えてくれますか。
○政府参考人(渡辺好明君) 食料・農業・農村基本計画の自給率を算定をいたしましたときに……
○委員長(太田豊秋君) 簡潔にお願いいたします。
○政府参考人(渡辺好明君) 参考として出しましたのが、このまま自然体でいくとどうなるかという数字が食用で五〇%、それから相当な努力をすると六六%と、こういうことにしたわけでございます。そのときの前提条件は、望ましい食生活の姿として適正な栄養バランスの実現や食べ残し、廃棄の減少に向けて消費者及びその関係者が積極的に取り組むことを前提に設定をする。
それから、生産努力目標については、漁獲努力量の削減や、資源の積極的培養による我が国周辺水域における資源の回復、新規漁場の開発等遠洋漁業における漁獲量の確保や養殖業の積極的展開、食用への仕向け割合の向上等の具体的な課題に関係者が一体となって取り組むことを前提に設定したと。趨勢でいくと五〇%を六六%まで引き戻せるのではないかということでその当時は積算をいたしました。
○山下栄一君 済みません。時間過ぎておりました。えらい申しわけありません。ちょっと時間を間違えまして、申しわけありませんでした。
終わります。