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国会質問

151国会 本会議会議録 2001年06月15日

 

○山下栄一君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました学校教育法の一部を改正する法律案、社会教育法の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨説明に対し、小泉総理及び文部科学大臣に質問をいたします。

 最初に、先日、私の地元の大阪で起きました校内児童殺傷事件についてお伺いいたします。
 教室に包丁を持った男が乱入し、児童や教員を次々と刺し、小学校の一年生、二年生の子供たち八人が亡くなりました。平和な希望の世界が一瞬のうちに地獄と化しました。日本の教育史上、前代未聞の大事件となりました。亡くなられた子供たちや御家族に心より哀悼の意を表します。また、まだ入院されている方々を初め、心身深く傷を受けられた池田小学校の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
 学校の安全管理のあり方が問われております。子供たちの命を断じて守ることは、すべてに優先する政治の仕事であり、学校の使命です。学校は決して無防備であってはならない。そのための警備のあり方を真剣に、また早急に検討すべきです。その際、地域に開かれた学校づくりの全面的見直しについては、私はそれは正しいのかと考えております。教員だけではなく、地域の大人の総合的連帯で、全力で学校、子供を支えるという考え方に立った安全管理制度を追求すべきではないかと考えております。総理、いかがでしょうか。

 次に、精神医療体制の見直しです。
 精神、心の専門家のニーズは高まる一方であります。精神疾患は、特定の人だけではなく、だれにも起こり得る病、そんな時代を迎えているのではないか。現代社会は精神的ストレス社会です。人間の豊かな心をはぐくんできた自然は周りから消え、さらに人間同士の直接的触れ合いは減少する一方です。人間精神の鍛えの場も機会も減っております。家庭、学校、地域も、時には永田町や霞が関も心の専門家を必要とする時代となりました。しかし、その数は絶対的に不足しています。精神医学も心理学も、その学問分野では中心的扱いを受けてこなかったのではないか。
 心の専門家の養成と配置は緊急の国家的課題だと考えますが、総理、いかがお考えでしょうか。
 触法精神障害者への対応が議論になっております。我が党も直ちに検討会を設置いたしました。
 凶悪犯罪を犯しても、精神障害が認められれば責任が問われないのはおかしいという声が高まっております。無罪や不起訴となった精神障害者の方々の処遇のあり方を、法制度そして専門治療施設の設置を含めた保健福祉制度、再犯防止のための支援制度などの観点から早急に検討すべきであります。その際、精神障害者やその家族を孤立させない、地域みんなで支えるという理念に立つことが大事ではないか。総理の所見をお伺いいたします。

 問題を起こす子供への対応について質問いたします。
 今回の法改正で義務教育における出席停止制度がテーマとなっております。出席停止処分は、就学義務を課す今日の義務教育制度下の例外的規定であり、緊急避難措置であります。教室の世界に行政処分たる権力的措置は本来なじみません。今回の法改正は、この規定を発動しやすくするのではなく、発動に当たっての手続の明確化を図り、要件を厳しく規定したことは評価できます。それについての文部科学大臣の答弁を求めます。
 私は、出席停止処分を発動するまでどんな努力を学校が行ったか、このことが問われなければならないと思います。どんな劣等児でも優等生にしてみせるとの迫力で教員が連帯して問題行動のある子供に当たる、場合によっては地域のおじさん、おばさんの協力も得る、児童相談所や警察の知恵も借りる、そのようなあらゆる努力を学校が地域の支援を受けて行う。文部科学省などが推進する学校サポートチームの考え方は、出席停止発動後だけではなく発動の前の取り組みとして大切だと考えますが、文部科学大臣の見解を求めます。

 出席停止処分を受けた保護者そして当該子供は、昭和三十八年に制定された行政不服審査法の適用除外の扱いを受けております。学校教育における行政不服審査手続について、法律の創設を含め早急に検討すべきと考えますが、文部科学大臣の御所見をお伺いいたします。
 兵庫県川西市が、平成十一年、全国に先駆けて設置した子どもの人権オンブズパーソン制度はそのすばらしいモデルになると考えておりますが、あわせてその評価を伺います。
 問題を起こす子供は特別の子供ではない、だれでも起こし得るという認識が大事であります。安易な排除の論理は、問題児から守るつもりであった子供にもマイナスの効果を及ぼす可能性があります。
 問題を起こす子供に対する教育はどうあるべきか、学校そして社会の教育力が問われております。安易な出席停止の発動は教育力を衰弱させると考えますが、文部科学大臣の所見をお伺いいたします。

 次に、教員の資質向上の問題です。
 一たん教師になれば生涯教師という考え方は見直す必要があります。教師の転職への道を開く今回の法改正は評価します。少子化時代、教員社会の高齢化は深刻な問題です。問題教員だから転職ではなく、教員経験が他の社会分野で生かされる前向きの転職が理想です。
 私は、教員の教える技術そして人格の向上は、研修会方式ではなく、授業の公開がかぎを握ると考えています。教師は授業が勝負です。私は、百の研修会より一回の公開授業、参観日は特定日だけではなく毎日参観日、これが最大の資質向上策である、コストもかからない、このように考えますが、総理はいかがでしょうか。

 最後に、子育て、後継者育成の重要性について総理のお考えを確認したいと思います。
 本来、動物は激しい生存競争の中で後継者世代を育て上げることを至上命題としてきました。魚も鳥も動物も子育ては命がけです。他方人間は、この子育て事業の優先順位を社会の進歩とともにどんどん低くしてきたと言えないでしょうか。快適で便利な生活を求める中で、最も基本的な後継者育成を中心部から周辺に追いやってきたのではないか。心の空洞化が拡大する中で、また児童虐待が激増する中で、子育てのだいご味、我が子を自身が感動するような大きな人間に育てることができたと言える子育ての喜び回復運動が必要ではないでしょうか。
 子供の専門家が大変少なくなってきました。医学では小児科の先生は主役ではありません。警察の捜査でも裁判所でも少年院でも、少年の心がわかる専門家が不足しています。児童の専門施設である児童福祉施設や児童相談所は予算も人員も貧弱です。日本は戦後五十年、子供を大切に扱ってこなかったのではないか。今日の青少年が引き起こすさまざまな問題は、そのしっぺ返しではないかとさえ思えます。
 大人中心社会から子供を大切にする社会への転換こそ構造改革の柱だと訴えたいと思いますが、総理のお考えをお尋ねし、質問を終わります。(拍手)

   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山下議員にお答えいたします。
 地域に開かれた学校づくりとその安全管理についてのお尋ねであります。
 学校が地域における大切な存在として、また保護者や地域の人々に学校に対する理解をより深めてもらうために、これまでどおり学校を地域に開かれたものとしていくことは私も必要だと考えております。
 この開かれた学校と安全管理という面をどうやって両立させていけばいいか、これは今後、真剣に検討していかなければなりませんが、開かれた学校も子供たちの安全確保が絶対条件でありますので、この点を重視しながら安全対策にも努めていきたいと思っております。
 心の専門家の養成の充実についてですが、社会が非常に多様化し複雑化して、ストレスも増大していると思います。国民の心の健康を確保するということは重要な課題であるという山下議員の認識は、私も同感でございます。
 今後、精神科医等の養成の充実に努めるとともに、医師、看護婦、臨床心理士、精神保健福祉士等に対して、心の健康づくりについての研修の強化を図るなど、心の専門家の幅広い育成に努めてまいりたいと思います。
 触法精神障害者への対応についてのお尋ねでございます。
 今回の事件については、現在、捜査機関が捜査継続中であり、容疑者について刑事責任を問うことができるかどうかも含めて、今後の捜査の推移を冷静に見守る必要があると思います。
 ただ、最近どう考えても異常としか思われないような凶悪な犯行形態の事件が相次いで発生しておりまして、安全な社会に対する国民の信頼が失われつつあると私も痛感しております。
 安全な社会に対する国民の信頼を回復するためには、凶悪犯罪への対策を強化する必要があります。中でも、精神に障害がある人による犯罪への対応において刑事手続と医療の間で連携の不備があれば、その不備を改める検討を行う必要があると私は考えます。こうした刑事手続の側面と医療的な側面の両面についての検討結果を踏まえて、制度的に不備があるということであれば、関係者の人権にも配慮をしつつ、必要な改善が必要ではないかと思います。
 教員の資質向上策について、授業の公開についてのお尋ねがございました。
 学校教育は、その直接の担い手である教員の資質能力に負うところが大きく、その向上を図ることが重要であります。
 このため、各都道府県教育委員会等においては、教員の資質能力の向上に向けてさまざまな工夫を凝らすことが必要であり、授業を広く公開することもその有意義な一つの試みであると私は考えます。
 子供を大切にする社会を目指すべきではないかというお尋ねであります。
 議員御指摘のとおりだと思います。子供を育てるべき我々大人がみずからの責任を自覚し、学校、家庭、地域社会が一体となって子供たちが伸び伸びとやる気を持てるような社会を実現する必要があり、そのための施策の充実を図ってまいりたいと考えます。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣遠山敦子君登壇、拍手〕

○国務大臣(遠山敦子君) 山下議員の御質問にお答え申し上げます。
 初めに、出席停止制度の改善の効果に関するお尋ねでございますが、現行の法律では、出席停止について、性行不良であって他の児童生徒の教育に妨げがあると認める児童生徒に対して命ずることができると規定されているだけでありまして、具体的な要件が明確ではございません。また、その手続が規定されておりません。
 このため、今回の改正におきまして、その要件を明確化しますとともに、新たに手続や出席停止期間中の学習支援について規定することとしたものでございます。
 このことによりまして、問題行動を起こす児童生徒への対応が一層適切になされるようになりまして、他の児童生徒の教育を受ける権利が保障されますとともに、出席停止期間中の指導の充実が図られるようになると考えております。
 もとより、出席停止の措置をとります前に、教職員が一致協力をして生徒指導に当たるべきは当然のことと考えておりまして、その面の重要性は御指摘のとおりでございます。
 次に、サポートチームについてのお尋ねでございますが、問題行動の原因、背景につきましては、家庭のしつけや学校のあり方、地域社会における連帯感の弱まり、青少年を取り巻く環境の悪化などの要因が複雑に絡み合って発生していると考えられます。
 しかしながら、問題行動を起こす児童生徒への適切な対応は教育上極めて重要な課題でありまして、それぞれの事例に即し、学校において全教職員が一致協力して取り組みますとともに、学校のみならず関係機関の職員から成るサポートチームを組織して、地域ぐるみで指導、援助を行うことが重要であると考えております。
 また、学校における処分に関する不服審査についてのお尋ねでございますが、出席停止など学校におきます処分につきましては、児童生徒の権利にかかわることから、適切な運用に努めなければならないことはもちろんでございます。
 このため、今回の法改正では、出席停止を命ずる際に、保護者からあらかじめ意見聴取を行うことを義務づけるなど事前手続の規定を設けたところでございまして、これによって慎重かつ適正な手続がとられて、児童生徒の権利保護が図られることになると考えております。
 学校における処分につきましては、教育の性質上、一般的な不服審査にはなじまないものでありますことから行政不服審査法の対象外とされておりまして、このようなことを考慮いたしますと、新たな法整備には慎重に対処すべきものと考えております。
 また、川西市の子どもの人権オンブズパーソン制度についてでありますが、学校や教育委員会が、家庭や地域と連携協力しながら一体となって子供の健やかな成長を図っていきますためには、教育行政に関する意見や要望を十分に受けとめて、学校運営や教育行政に的確に反映していくことが大切であると考えております。
 お尋ねの兵庫県川西市の子どもの人権オンブズパーソン制度につきましては、こうした取り組みの一つとして、子供の人権救済の観点から設けられたものと理解いたしております。
 最後に、安易に出席停止を行うべきではないとのお尋ねでございますが、児童生徒の問題行動に対応いたしますためには、日ごろからの生徒指導を充実することがまずもって必要でありまして、学校が最大限の努力を行っても解決せず、他の児童生徒の教育が妨げられている場合に、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障する観点から、出席停止とすることとなります。
 こうした点を踏まえて、児童生徒の問題行動については、学校として生徒指導の充実を図る中で、児童生徒の悩みを受けとめ、内面の理解に努めるなどして、温かい信頼関係のもと、自己達成感を味わわせて問題の解決を図っていくことが重要と考えております。
 今後、法改正を契機といたしまして、問題行動の解決に向けて、日ごろからの生徒指導の充実に努めてまいります。
 以上でございます。(拍手)

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