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国会質問

154国会 憲法調査会会議録 2002年06月12日


○山下栄一君 まず、ちょっと今までお話しされていないことで、科学技術と人権という観点なんですけれどもね。特にバイオの技術と人権保障ということなんですけれども、農業、食料確保という観点から農業にバイオ技術を活用する、また医学、薬、これはがんの治療とか遺伝病の解決とかというようなことで、非常にこういう分野の開発技術、力を入れていくという流れなんですけれども、一方で、人権との兼ね合いで非常に深刻な問題が私はあると思うんですね。例えば、ヒトゲノムの解析がもう完了したとか、クローン人間の問題とか、これは私は物すごい人権の観点から大変重要なテーマだというふうに思います。
 科学技術の下で、またビジョンの下に、人権、それも根本的な人間の尊厳にかかわるような状況になってきているということから、国内というよりも地球的な規制、ルール作り、これが非常に私は緊急の課題であろうと。そういう議論が、特に日本では余り進んでいないように思うんです。それよりも、どちらかというとバイオ技術を新しい産業として力入れていこうというような流れの方が圧倒的に強くて、人権的な配慮というようなことが関心が弱いと、こういうように感じているんですけれども、それぞれ、この観点からの人権、要するにバイオ技術と人権という観点からの御意見をちょっとお伺いしたいと思います。


○会長(上杉光弘君) 両方ですか。御両者ですか。


○山下栄一君 そうしたら、横田さんに、済みません、まず。


○参考人(横田洋三君) はい、ありがとうございます。
 確かに科学技術の進歩に伴っていろいろな人権問題が出てきておりまして、今の御指摘の点もあります。現在、私が知っている動きでいいますと、例えばヒトゲノムの問題があります。
 簡単に申しますと、一人一人が人間は個性を持っておりまして、人格を持っておりまして、一人一人が尊厳を持っているわけなんですが、私という人間を規定しているものが科学的にだんだん解明されていきますと、これがヒトゲノムというところに、遺伝子の中にあって、それで全部分かる。そして、これをコンピューターでもって私のヒトゲノムというものを記憶させて私と同じ人間を再生するというようなことも可能になってくると、一体私という人間の尊厳がどうなるかというような問題が出てきておりまして、今、ユネスコではこの点について、やはりヒトゲノムは一人一人の人間の人格の一部であって、これは科学者が勝手に解明したり、それを場合によると特許を取ってしまうというんですね。私のヒトゲノムを特許を取るというような、もう私でなくなるわけなんですが、そういうことが科学的に技術的に可能になると同時に、それを場合によれば商売にするとか、そういうのが出てくる。これはやはり国際的に規制しなければいけないということで、ユネスコで決議案が出ておりまして、これは国連でもやがて取り上げられる方向にあります。
 日本からは京都大学の位田隆一教授が出て、大変活躍しておりまして、この点の国際的なルール作りをやっております。
 そのほか、臓器移植の問題、死の定義の問題、それから、例えば日常的なことでいいますと人工中絶、これが言ってみれば殺人に当たるかどうかというようなことも人権との関係で議論されております。そういう意味で、医学、科学技術の進歩、これに伴った人権問題というのはいろいろ出てきておりますが、日本では残念ながらこの点についての議論は深まっておりません。御指摘のとおりなんです。
 この一つの理由は、恐らく学問の縦割り化にあると思います。医学部に進む人は、人権なんて全然勉強しなくても医学のことをやれる。そうすると、医学の観点から面白い、科学的に面白いということをただ追求するという方向になります。
 これで怖いのは、例えば物理学者が面白いといって研究していった、突き当たったところが結局核兵器の開発というようなことになる、あるいは化学兵器あるいは細菌兵器の開発になる。そういうふうに、科学者が自分の科学の分野から面白いということで研究していくだけでいいのかという種類の問題、いわゆる科学と倫理の問題が出てきているわけです。
 海外では、もう既にこれを人権の立場からかなり議論しているわけなんですけれども、日本ではやはり、科学というのは科学者に任せる、そして倫理の問題は哲学、倫理学に任せる、人権の問題は法律学に任せるということで分かれているものですから、この状況を変えていかなければいけない。
 先ほど戸塚参考人が指摘しましたけれども、法科大学院をこれから作るという方向で今動いていることは御存じのとおりでございますが、その場合に、やはり法科大学院で法と倫理の問題をもっときちっと基本的に法律を専門にやる人に教育するということは大変重要なことではないかと思っております。


○山下栄一君 ちょっと済みません。戸塚先生にちょっと別に聞きたいことがございまして、時間があれば今の件も触れていただきたいと思いますけれども。
 先生が書かれた最新の論文の中に、いわゆる国連情報を日本語で入手できる環境にないという、これは大変重要な指摘だというふうに思いまして、早速これは国としてやるべきことだと私は思ったんですけれども、横田先生も人権委員会の小委員会の方で大活躍されている、また戸塚先生も国際NGOでも頑張っておられる、そういう様々な御経験あるわけですけれども、要するに、国連がどんな人権保障体制を組んでいて、どんな仕事をしているのかということを即時に日本国民一人一人がインターネット等を通じて知ることのできるような体制になっていないという。
 その国連のウェブサイト、日本語のウェブサイトを立ち上げるということ、これぐらいは国としてやれよという御提案は私は物すごく大事な提案だというふうに思うんですけれども、ちょっとアピールをしていただけたらと思います。


○参考人(戸塚悦朗君) 詳しいことは私の論文の末尾に、ひょうご国際人権問題研究会という私どもがやっております会がありまして、そちらの決議がございますので、是非それを見ていただければと思います。
 意外に費用は掛からない。ドイツがこれをやったときに百十万ドルということですから、当時でしたら、今でしたら一億何千万でしょうか、それでとてもできるかどうか。ドイツはニューヨークの情報だけですから、ジュネーブの人権情報まで入れると二億になるか三億になるか、年間その程度のお金でできるということらしいのです。別に常任理事国になる必要がないそうですので、是非御研究をお願い申し上げます。
 先ほど物すごく重要なことを御指摘になったんで、若干、一分ほどお答えしたいと思うんですが、実はバイオの問題ですね、これは日本はなぜ発展しないかと。私は、これは物すごく大きな理由があるというふうに思っております。
 この人権というのは、バイオ、つまり医学関係では人権というのはタブーなんですね。それはなぜ分かったかといいますと、私はスモン病という薬害事件をやりまして、その経験から、何でこんなことが日本で起きるんだろうというのを疑問に思ったわけですね。次に精神病者の人権問題をやりました。これで、日本の人権状況は物すごくひどい、特に医学であるというふうに思われたわけですね。
 イギリスに参りましたら、イギリスの精神科の教授が、それは天皇の戦争責任を追及していないせいだというふうに言うものですから、私はびっくりしまして、本当にそうなんだろうかと思ったんですが、次に取り組んだのが従軍慰安婦問題でありまして、実はこれは、最初医師の助言で始まっております。しかも、あらゆる場面で医師がすべて関与しております。これらの事件について医学部の系列で物すごくたくさんの人たちが関与している。七三一もそうであります。ところが、それについて医学部の方たちが本格的な調査研究、反省をしていない。これでは今後もバイオについては必ず人権侵害が起きると、私はそう思います。
 ですから、国会で是非これらの真相解明をする法律を作られて、もちろんそれだけではなくて過去の問題すべてですけれども、まず過去の問題点を全部洗い出して、そこからどのような教訓を酌み取るかということをおやりいただかない限り、日本では同じようなことが次々起きるというふうに思います。


○山下栄一君 ありがとうございました。

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