155国会 総務委員会会議録 2002年11月14日
○山下栄一君 公明党の山下でございます。
本来、質問順序は自民党さんの方からだったんですけれども、私の質問に対する答弁、根本副大臣に御無理をお願い申し上げましたことがありまして、質問順番変わりましたこと、御了解いただきたいと思います。
私は、この給与法の改正なんですけれども、公務員給与の前提となります本来の人事行政の在り方につきまして今日は確認させていただきたいという、それ一点で今日は質問させていただきたいと思います。
この人事行政における公正中立性の確保、これは大変重要であるというふうに言われておるわけです。人事行政また内閣の執行、これは行政権、行政の執行については公正中立を旨とすると。
ところが、私が感じますのは、去年の十二月末に出されました公務員制度改革大綱閣議決定、ここでちょっとその辺が若干ぼやけているのではないかなということを感じますので、原点でございますこの公正中立性の確保、この根拠ですね、なぜそういうことが大事なのかということにつきまして、もちろん法律の要請があるからだと思いますけれども、この点について人事院総裁にお聞きしたいと思います。
○政府特別補佐人(中島忠能君) 大変難しいといいますか、基本的な問題でございます。
この問題についてお答えするときに必ず触れておかなければならないのは、日本の官僚制というものの歴史、その中において、特に幹部公務員がどういう生きざまをしてきたかと、そのことによってどのような弊害が生じたかということをしっかり認識しておかなければ、この公正中立性の議論というのができない、またそれが理解できないということだと思います。
やはり戦前の幹部公務員、当時の言葉で言いますと官僚ということになるわけですが、時には政友会、時には憲政会、そういう政党と非常に密接に結び付いて、政権が替わるたびに大幅な幹部公務員の人事異動が行われたと。そのことによって行政の継続性とか中立性が失われていったという歴史があるわけでございまして、そしてまた政党の力が徐々になくなってきますと、今度は官僚は軍部と結託したと、そしてまた時には財界と結び付いたと。そういうような歴史がありまして、そういうような特定の勢力と結ぶことによって日本の政治、行政の方向性がゆがめられたんじゃないかという反省の歴史があるわけでございます。
そこで、そういう歴史の反省の上に立ちまして、憲法では十五条で公務員は全体の奉仕者であるということで、特定の勢力、特定の分野の利益というものに中立でなきゃならないという規定が設けられました。そして、この憲法の十五条の全体の奉仕者性というものをより具体的に担保していくために国家公務員法が制定されたということでございます。
そして、国家公務員法におきましては、もう先生の方がよく御存じかも分かりませんけれども、その中で人事院というものを設置いたしまして、人事院に公正中立性の重要な役割を担わせておるというのが今の公務員法の体系だというふうに御理解いただきたいと思います。
○山下栄一君 公正中立性の確保は憲法が要請するものだと、憲法十五条、公務員は全体の奉仕者だと、一部特定の勢力の奉仕者じゃないという。また、国家公務員法という法律も公正中立の確保ということを大事にしているという今お話がございました。
だから、これ公正中立というのは、時のそういう政権、政治勢力から距離を置くという、その中立性だという。また、先ほど、何でしたか、企業の話もされましたけれども、そういう私的な利権、それからも公正でなきゃならないという、そういうことだというふうに今思いました。改めて確認させていただきたいと思うわけですけれども。
ちょっと今、総裁も触れられましたけれども、その中立公正を確保するために公務員の、また人事行政の中立公正を確保するための制度的保障、これを法律はどういう形で担保しているのかということについて、もう触れられたんですけれども、もう一回確認させてください。
○政府特別補佐人(中島忠能君) それを担保するために国家公務員法というものが制定されたと。そして、国家公務員法では、その第一条に書いてございますように、民主的にして能率的な、効率的な行政というものを確保していこうということでございます。そして、国家公務員法の第三条でございますけれども、第三条で人事院に、人事行政の公正の確保及び職員の利益の保護等に関する事務を人事院につかさどらせるというふうに規定しておるわけでございます。それを具体的に国家公務員法の中では、政治的行為の制限についての定めとか、あるいはまた営利企業への就職についての定め、あるいはまた身分保障、分限とか懲戒の基準を定めさせると。分限とか懲戒というのは戦前はかなり乱用されることもあったということで、その基準というのを中立機関に定めさせるというようなことが行われたし、それ自身が大切に現在されておるということでございます。
現在議論になっております採用試験についてもそうでございますけれども、やはり採用の段階において、公務員というものは中立公正な仕組みの中で採用されなきゃならないというので、採用試験というものを人事院の所管にしておると。もちろん、企画立案も人事院の所管にされておるということでございます。
そういうような全体の仕組みの中で御理解いただきたいというふうに思います。一部分だけ取り上げて議論されますと、どうも議論が矮小化されていくということでございまして、公務員法全体の中の仕組みで中立公正性というものがどのように確保されようとしているのかというところを全体として御理解いただきたい。また、そういう御説明を申し上げなきゃならないというふうに思います。
○山下栄一君 根本副大臣にもちょっと後から確認させていただきますけれども、今、総裁から、人事行政は公正中立でなきゃならないと、そのための組織として人事院が作られたんだということだったというふうに思うわけですけれども。ということは、人事行政の中心、国家公務員法でも、中央人事行政機関として人事院と、第三条、「内閣の所轄の下に」という言葉で書いてあるわけですけれども、第二項に人事院の人事行政の中身について、今も触れられましたけれども、書いてございます。ということは、人事行政制度、日本の人事行政制度は中立公正性を確保するために人事院中心にやるんだということが国家公務員法の要請だと。
このことについては、行革担当副大臣も共有されていますんでしょうか。
○副大臣(根本匠君) 私も、人事院が公正公平の立場から人事行政をやる、これは私もそのとおりだと思います。
ただ、私も今日初めて答弁をさせていただきますが、今回の公務員制度改革のいろんな議論を通じて、私も私なりに、これはどういう整理をすればいいのか、どういう頭の整理をすればいいのかと実は考えておりました。ただいまも人事院の総裁の言葉にありましたが、一部だけで議論するんではなくて公務員制度全体の仕組みの中で考えてもらいたいと、そういう御答弁がありましたが、実は私も同じようなことを考えております。公務員制度、今回の公務員制度改革の発端が実はどういう考え方から来ているのかと、私はこの全体のグランドデザインが必要だろうと、こう思っております。
実は、これまでの行政改革の取組ですが、多少長くなって恐縮ですが、平成九年の行政改革会議最終報告、この報告の中では、自由かつ公正な社会を形成するにふさわしい二十一世紀型行政システムを作ろうと、こういう大きな方針を打ち立てておりまして、総合性、戦略性、あるいは機動性、透明性、効率性、簡素性の追求と、こういうものをまず打ち出しました。これを受けて、中央省庁再編改革が典型でありますが、内閣機能の強化を始め、中央省庁の再編、情報公開、政策評価制度等の整備が行われ、内閣総理大臣、内閣が広い権限と明確な責任を持って大胆かつ機動的な行政運営を遂行しようと。さらに、行政の執行や行政組織間の作用を対外的に透明にし、常に内閣総理大臣、内閣、各主任大臣の責任が国民から問われる内閣主導の枠組みの構築が図られてきております。
実は私は、今回の公務員制度改革というのは、そういう大きなこれからの日本の二十一世紀型行政システムをどう構築するかと、これが実はこの原点だと思います。中央省庁改革で言わばハードウエアの改革をしたわけですが、今回、我々が公務員制度改革で提起しているのは、人に着目して、言わばソフトウエアの改革として公務員の意識や行動原理を改革しようと、正に行政改革の中心的な課題の一つとして位置付けております。
そういう観点から、公務員制度というものはそもそも行政運営の基盤、実は、いかに効率的な、機動的な、国民に信頼される行政を展開するかという、私はそのある意味で手段だと思っておりますので、国民に対して行政運営の責任を有する内閣自身が、制度の中立性、公平性をきちんと確保しながら、その在り方を企画立案することが適当であると考えておりまして、その意味で今回の公務員制度改革の様々な具体的な案を提示しているわけでありまして、私は、その点では、この議論をする場合には、人事院の総裁がおっしゃられましたように、お互いに公務員制度全体の仕組みをどうするかという中で議論すべき問題だと、こう思います。
その意味で、人事院は、中立性、公正性の観点からこの制度論に対して具体的な意見を言っていただいて、議論していくと、こういう位置付けになるんだと私は考えております。
○山下栄一君 ちょっと今、私が最初ずっと確認させていただいたことと違う話が出てきていると私は思うんですけれどもね。内閣が公正中立を確保できるのかと。内閣総理大臣も政治家ですし、使用者の代表でもあるという観点もあると思うんです。公正中立性の確保ということは大前提で、憲法の要請、国家公務員法もそのために作られておると。国家公務員の魂は公正中立にあるんだというふうに、今そのことは共有するとは言われたけれども、内閣主導でという言葉も出てきたので、この人事院と内閣の関係ですね、特に公正中立性の観点から、もちろん、内閣もじゃ人事行政に口出ししているのかというと、そうでもないとは思います。各省ももちろん人の配置その他やるわけですけれども。
人事院と内閣の関係、公正中立性確保の観点から、このことについてちょっと、基本的なことかも分かりませんが、大事なことだと思います。その辺がちょっとあいまいになってきているのではないかという感じがしますので、総裁並びに副大臣、それぞれお考えをお聞きしたいと思います。
○政府特別補佐人(中島忠能君) 少し大きな問題に飛躍していきましたけれども、公務員制度とか人事管理制度、人事行政について内閣と人事院の関係というものを御議論いただくときに見ていただきたい条文があります。必ず目を通してくださいという条文が幾つかあります。それは、憲法で申し上げますと、やはり六十五条、そして七十三条の第四号と、この二つの条文は、今、先生がおっしゃいました、人事管理、人事行政について目を通していただきたい条文だというふうに思います。それから、国家公務員法で申し上げますと、十八条の二という条文と十九条、そして二十条と、この三つの条文はやはり基本的に目を通していただいて、頭を整理していただく必要があるんじゃないかというふうに思います。
少し具体的に御質問にお答えいたしますと、まず、人事行政、人事制度の公正中立性の確保に関して、内閣と人事院というのは、お互いに指揮命令をする、あるいは指揮命令を受けるという関係にはございません。それが一つ。そしてもう一つは、今申し上げました条文をお読みいただくと分かりますけれども、中立公正性の確保に関して、具体的に内閣ないし内閣総理大臣に直接的な権限というか責務というものが与えられた条文がないということでございます。具体的には、やはりそれを確保するための制度というものについての具体的な権限というのか責務というのは人事院に与えられておるということでございます。
○副大臣(根本匠君) 私は、先ほども申し上げましたように、公務員制度というのはそもそも行政運営の基盤でありまして、ある意味で手段であるとも申しましたが、国民に対して行政運営の責任を有する内閣自身が制度の中立性、公平性を確保しながらその在り方を企画立案することが適当であると、こう考えております。内閣が国会のコントロールの下で行政を執行する議院内閣制の下におきましては、国民に対して行政運営の責任を有する内閣が責任を持って人事制度の企画立案を行うことが基本だと私は考えております。その旨を閣議決定でも決めておりますが、私は基本はそこにあると思っております。
もとより、第三者機関である人事院が中立性、公平性の観点からチェックを行うことは私も重要だと思いますが、内閣も中立性、公平性を確保しながら行政を執行する使命を有しておりますので、私はそういう整理だと思います。
それから、一昨年十二月に閣議決定されました行政改革大綱では、中央人事行政機関が事前かつ個別、詳細にチェックする仕組みを見直す旨定めておりまして、それは取りも直さず人事院の役割そのものを見直すことにもなることになることからも、内閣が公務員制度改革の検討を進めることが大事だと思います。
私はここは、人事院が公務員制度改革のすべてを、国家公務員に関する制度のすべてを企画及び立案をする、すべてを人事院がやるということではないと思います。やはり、内閣は全体に国民に対して責任を持っているわけですから、国家公務員に関する制度の企画立案機能、これは私は当然に内閣が持っているものだと思っております。
○山下栄一君 公務員の人事行政について人事院が全部握っているというようなことは私、言っていないわけで、根本副大臣に確認しますけれども、公正中立性の確保ということが憲法の要請だと、国家公務員法もそういうことを明示していると、人事行政の中心は人事院であると、公正中立を確保する観点からそうなっているんだと。今、副大臣は、内閣は中立性、公正性を確保しながら人事行政についての企画立案をするということをおっしゃったわけですけれども、その根拠はどこにあるのかなと。
今、閣議決定の話をされましたけれども、僕は閣議決定よりも法律の方が上位だと思いますので、その辺のことがちょっとあいまいになってきているんじゃないかなというふうに思うんです。内閣が中立性、公正を確保しながら企画立案するという、そういうことはどこに根拠があるのかなというふうに思うんですけれども。
○副大臣(根本匠君) 私は、第三者機関である人事院が中立性、公平性の観点からチェックする、これは必要だと思うんです、これは人事院の機能そのものですから。ただ、内閣が、行政運営の基盤たるべき公務員制度をすべて人事院が企画立案までする、これは私はおかしいんではないかと。やはり、内閣が国会のコントロールの下で行政を執行する議院内閣制の下にありますから、国民に対して行政運営の責任を有する内閣が責任を持って人事制度の企画立案を行うことが基本であると思いますが、根拠といえば、総務省設置法の中には、第四条一号に「国家公務員に関する制度の企画及び立案に関すること。」と。要は、内閣が国家公務員に関する制度の企画及び立案に関することというのは根拠規定があるということで、私はここに、設置法に根拠があると思います。
○山下栄一君 僕は、冒頭申しましたように、人事行政は公正中立性を確保するんだ、旨とするんだということ、このことがちょっとやっぱりぼやけてきていると、機動性、弾力性確保の方が何か主流になってきて公正中立性ということが陰に隠れつつあるんじゃないかという、ちょっとそういう非常に危機意識がありましたので今お聞きしたわけです。
私は、人事院総裁のお考えと根本副大臣のお考えはずれておると、ずれがあるというふうに思います。
公正中立性を確保するため、人事院は内閣の指揮命令を受けるのではないということを先ほど総裁はおっしゃいました。内閣が統括しないで、したがって、それを国家公務員法では「内閣の所轄の下に」という言葉で言っているというふうに思うんです。命令を受けませんよと、そういうことによって公正中立性を確保していると、企画立案の主役は人事院なんだということを言っているのが国家公務員法であるというふうに思うんです。
今、総務省設置法の話もされましたけれども、大前提はそこにあることを確認しないと、これはぼやけてしまうと国民の側に立った公務員制度改革ができないのではないかと、こういうふうに思いますもので、この今おっしゃったずれは大事なずれだと思いますので、これは具体的なことでちょっとお話ししていかないかぬと思うんですけれども。
例えば採用試験。これはもう公務員の一番最初のスタートのところです。これは、今、企画立案は人事院がやっていると、それを今度は行革事務局というか行革担当大臣の下に移すというような案が出ているというふうに認識しているわけです。また、それと天下り、再就職の問題についても、再就職の最終決定を各省大臣に移すみたいなことになっていると。だけれども、この企画立案、基準を示すということを私はきちっと人事院がやるべきだというふうに思いますし、それを各大臣が仕切ってしまったら、これはもうますます国民の側に立てないというふうに思っているんです。
大事な部分についても人事院の権限を弱めようとする流れが出てきていることを見て非常に危惧を抱いているわけですけれども、このことについて、総裁、副大臣、それぞれお考えをお聞きして終わってしまいます。済みません。
○政府特別補佐人(中島忠能君) この問題を考えるときの必要な基本的認識というものは何かということをしっかり頭の中にたたき込んでおく必要があるだろうというふうに思います。やはり、現在の内閣というのは政党内閣制──議院内閣制というのは政党内閣制でございます。したがいまして、政党内閣制の下にどこまでのとにかく中立公正性に関する権限を与えるかということは厳しい議論を一遍していただく必要があるだろうというふうに思います。
私は、片山大臣とか、ここにいらっしゃる根本副大臣のような立派な方ばかりが内閣を構成されるとは限らないと。やはり、こういう制度というのは、人に頼っては駄目なんだと、制度に頼るようにしておかなきゃならないというのが基本だと思います。
そこで、私が申し上げておるのは、やはりそういう制度をきちんと作って、どういう人がその衝に就いても中立公正性が担保できるような制度にしておく必要があるということが基本でなきゃならないというふうに思います。
ただ、内閣がすべてどういう場合においても関心を持つべきではないとか、あるいは発言をすべきでないと、そういうことは私は申し上げません。やはり、時代が変わり国民の世論というものが変わってくると、内閣もある一定の範囲で関心を持たれるし、そしていろいろ発言をなさることもあるだろうと。それをどういうふうに担保していくかということを細かい議論をしていただく必要があるだろうというふうに思います。
○副大臣(根本匠君) 私も、人事院とそれから内閣の役割をきちんと定める、ルールで定める、これは非常に重要なことだと思います。ですから、総裁と私が言っていること、基本的に言っていることは変わりませんが、立脚している内閣の果たすべき役割と中立性、公平性の観点から果たすべき人事院の役割が、そこが十分に整理し切っていないということなんだと思います。
ただ、今、採用の問題やあるいは再就職の問題もありましたが、要は、採用の問題は、各省が行政ニーズに即した有為な人材を確保することが重要であるとの考え方に基づきまして内閣がその企画立案しましょうということでありますし、再就職につきましても、公務員制度改革大綱においては、再就職の承認基準については内閣の命令、政令できちんと定めるということにいたしました。これは、職員の適切な服務管理と行政の公正な運営に一義的な責任を有する人事管理者が行う承認の基準、これは内閣自身が厳格かつ明確な基準を定めることが適当だと、こう考えていることで、こういうルールにしようということであります。
また、人事行政の公正の確保及び職員の利益の確保の観点からは、内閣が政令で定める承認基準に対して人事院が意見の申出を行うことができる、こういう人事院の関与をルールとして定めようということにしております。