Home プロフィール 主な政策提言 国会質問 活動レポート 市民相談コーナー 情報BOX リンク集 事務所案内 ご意見

国会質問

165国会 本会議会議録 2006年11月17日


○山下栄一君 私は、公明党を代表し、教育基本法案について安倍総理に質問をさせていただきます。

 明治の初めの学制発布より百三十余年、さらに、戦後六十余年が経過し、日本の教育、人の命をはぐくむことは、かつて経験したことがないほど機能不全に陥っているように見えます。公表されている児童虐待、そして、その半分以上が実母によると言われています。学校教育の機能不全とも言える不登校問題、中学校では平均ではどのクラスにも一人以上は存在する計算です。実の親による児童虐待、そして不登校問題もともに例外現象ではないというとらえ方が大事だと思います。

 家庭、地域社会、企業、そして学校、すなわち、日本の社会全体が人を育てることに関し大変な機能不全状態にあるという強い危機感に立ち、社会そのものの在り方を問い直すべきときに来ています。そして、日本社会の最重要課題は、学校の教育力だけではなく、社会全体の教育力をいかに回復するかにあると強く訴えたいと思います。
 安倍総理、この私の問題意識を共有していただけますでしょうか。


 まず、最近起こっている深刻な課題について質問いたします。

 一つはいじめ問題です。

 いじめが主要な原因と考えられる小中学生の自殺が連続しております。いじめられる側にも問題があるという考え方がありますが、この考えの中にいじめがなくならない原因があるように思います。いじめに甘い社会であってはなりません。いじめられる側が悪いのではなく、いじめる側が一〇〇%悪いという考え方に立つことこそ生きた道徳教育であると思います。
 孤独地獄に陥っているいじめの被害者の心のやみに光をともす環境づくりが政治の仕事ではないでしょうか。子供の人権を断じて守るという強い決意に立っていじめ対策を取るべきです。
 学校内のいじめの情報を共有するための教員間の連携体制が恒常的にできていることが第一です。


 その上で、文科省、教育委員会、学校というラインの外に子供や保護者が相談できる第三者機関を地域につくる必要があります。分断された家庭と教育をつなぐ第三者的な相談機関と言ってもよいでしょう。例えば、兵庫県川西市や神奈川県の川崎市などに数年前から設置されている子どもの人権オンブズパーソン制度があります。また、茨城、兵庫、香川、大阪等で広がりつつあるスクールソーシャルワーカーの配置です。これは福祉と教育の連携という視点です。
 身近な地域で心の悩みを相談できる体制づくりについての総理の所見をお伺いいたします。


 次に、全国の高校の一割を超える学校で起きた未履修問題です。

 今や大半の中学生が高校に進学する時代です。その高校は、普通科、専門科、総合学科、また別の分類では全日制、定時制、通信制、また学年制と単位制など、高校の多様化が各県で著しく進んでいます。すべての高校生が学ぶべき必履修科目の在り方、履修時間の在り方を、継ぎはぎではなく高校教育の在り方を含め抜本的に見直すべきです。


 さらに、高校学習指導要領の弾力的運用についてです。国の基準は大綱にとどめ、具体的基準作りやその運営責任は設置者に任せるべきと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。


 次に、教育基本法案の主要な論点について確認したいと思います。

 我が党は、現行基本法の理念の骨格は堅持すべきだと主張しています。法案前文の「日本国憲法の精神にのっとり、」については、その精神の根幹は個人の尊厳の理念であると考えますが、いかがですか。


 次に、付け加えるべき理念としては生涯学習の理念です。
 人はだれも、いつでもどこでも学び、自身の人格を磨き、成長していく権利があるという考え方です。学ぶ側を重視する考え方に立ち、教える側は学ぶ側をサポートする役割という考え方です。この生涯学習の理念の意義について御所見をお伺いいたします。


 付け加えるべき理念として重視したい次の視点は、国際人権保障の流れです。
 父母及びその保護者は我が子の教育について第一義的責任を有する、これは子どもの権利条約で確認されたものです。人間は、自身の成長だけでなく、後継者をきちんと育てることが必然の責務のはずです。物質文明の進展とともにこの点が危うくなっています。児童虐待はその最たるものです。親の子育て責任が大前提で、その上に公教育があるというのが正しい考え方だと思いますが、総理いかがですか。


 多文化共生の教育という考え方も国際人権規約で保障されています。これを反映したのが、法案の二条五項で規定されている「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する」という部分です。我が国の伝統文化だけではなく、他国そして他国の伝統文化も尊重するという趣旨です。多文化共生の理念は、品格ある美しい日本、国際社会で信頼される日本をつくるための大切な理念と考えますが、いかがでしょう。


 次に、国を愛する態度についての考え方です。

 法案の方向性を示した中教審の答申で、国を愛する心を規定すべきと提言されました。我が党は、国家主義には反対、国という表現に統治機構は含まないと一貫して主張してまいりました。ナショナリズムではなくてパトリオティズムという考え方に立った表現として、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛しという規定になったと理解していますが、確認いたしたいと思います。


 また、国を愛する態度を教育評価の対象にすることは、基本的人権の柱である精神の自由を侵すおそれがあります。教育の評価の対象にしないことを明確にお答えください。


 自身が育った、また住んでいる町への愛着を感じない若者が多いと言われます。自身が育った郷土への愛着があって初めて国を愛する気持ちもわいてくるというのが自然の考え方ではないでしょうか。地域の歴史や生活、文化の学習を中心とした郷土教育の重要性は、現在、地域コミュニティーの崩壊が深刻な問題になっているだけに確認したい点です。郷土教育を充実させるための地域における様々な取組、特に自主的な郷土教材づくり、住民参加型の教材づくりは大変重要だと考えますが、いかがでしょうか。


 最後に、教員の在り方について確認したいと思います。

 教育、すなわち人を育てる行為は、医療や芸術と同様、文化的行為であり、自主性を重んじ権力から距離を置いて行われるべきものです。指揮命令という官僚統制は最小限に抑制すべきだと考えます。教育の自主性重視は教育行政において尊重すべきであります。


 教員の身分は、公務員の地位にある場合でも一般公務員とは趣を異にし、むしろ司法官の地位に近いものであると考えます。法案九条で、教員は自己の崇高な使命を深く自覚しとあり、また、教員はその使命と職業の重要性をかんがみ、その身分は尊重されとあるのはこのような視点からであると考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。


 現在、教員を取り巻く環境は厳しさを増す一方です。二十一世紀に入り、教員の仕事は激増しているにもかかわらず、人件費削減の中で学校への人の配置は増える気配は現在ありません。子供にとって最大の教育環境が教員自身であるという観点から、私は今、教員に必要なのは教員を形式的な評価にさらすのではなく、しっかりとサポートすることだと主張いたします。


 教育再生のかぎは、教員の応援体制を財政支援を伴わせて強化することであって、締め付けることではありません。免許の更新制も大事ですけれども、大学教員養成課程を充実させることであり、教師という職業はしんどくてもやりがいのある職業として若者が職業希望の第一位に挙げたくなるような環境整備が必要であると考えますが、御所見を伺います。


 児童虐待、そして不登校、日本の教育の行き詰まりが日増しに大きくなっている今だからこそ、人を育てることの重みを国民が共有し、国家のための教育ではなく、教育のために国家があるという理念のベクトルの大転換が必要です。政治や経済というより教育の深さが日本の未来を、子供の未来を決めると確信いたします。


 教育基本法案の国会審議を日本が教育で世界をリードする流れをつくるための突破口にと訴え、質問を終わります。(拍手)

  

 〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕


○内閣総理大臣(安倍晋三君) 山下栄一議員にお答えをいたします。

 社会全体の教育力の回復についてお尋ねがありました。
 学校、家庭、地域社会は教育においてそれぞれ重要な役割と責任を担っており、社会全体の教育力の再生は極めて重要な課題であると認識しております。

 いじめ問題に対応した相談体制づくりについてお尋ねがございました。
 いじめ問題については、子供の訴えなどの問題の兆候をいち早く把握し、学校、家庭、地域社会が連携して迅速に対応することが重要です。現在、地域の実情に応じて第三者機関を活用した取組やスクールソーシャルワーカーのような専門家を活用した取組があることを承知をしております。政府としても、子供一人一人を地域で一体となって守り育てていくため、教育機関や福祉機関を始めとした関係機関が連携した取組がなされるよう推進してまいります。

 高校の未履修問題に関連して、高校教育の在り方についてお尋ねがありました。
 各地の高校で大学受験のため必修科目を履修させていないことが判明したことは極めて大きな問題と考えております。今後、大学入試の改善とともに、高校生にとって必要な幅広い知識と教養とは何かという観点から、高校教育の在り方を検討する必要があると考えております。

 高校の学習指導要領の弾力的な運用についてお尋ねがございました。
 高校の学習指導要領は、必修科目を除き学校の判断で生徒が履修すべき科目を設定できるとともに、学校独自の教科、科目を設けることができるなど、現在でも教育課程の編成の上で高校の裁量を大きく認めております。各高校には必修科目の履修などルールはしっかりと守った上で、特色ある学校づくりのために裁量を活用してもらいたいと考えております。

 教育基本法案に言う日本国憲法の精神についてのお尋ねがございました。
 現行の教育基本法は、日本国憲法に定める理念を具体化するための規定を多く含むなど、日本国憲法と密接に関連している法律であり、このような理念の骨格は今回の改正によって変わるものではないことから、教育基本法案において引き続き「日本国憲法の精神にのっとり、」と規定しています。また、前文における「個人の尊厳を重んじ、」や、第二条第二号の「個人の価値を尊重して、」など、憲法の精神を具体化する規定を設けているところであります。

 生涯学習の理念の意義についてお尋ねがございました。
 科学技術の進歩等により人々は絶えず新しい知識や技術の習得を求められており、また、人生をより豊かなものにする観点からも生涯にわたって学習に取り組むことが重要であり、また意義深いものと考えます。
 このため、だれもがいつでもどこでも自由に学べる社会の実現が必要であり、このような学習者の視点に立って教育に関する各種の施策を推進することが重要であると考えます。このような観点から、教育基本法案においても生涯学習の理念を規定したところであります。

 父母の第一義的責任についてお尋ねがありました。
 教育は学校だけで全うできるものではなく、何よりも大切なのは家庭であります。すなわち、家庭教育はすべての教育の出発点であり、家庭の教育力の向上に努めることが公教育の充実につながるものと考えております。今回の教育基本法案においては、このような家庭教育の重要性にかんがみ、父母その他の保護者が子の教育について第一義的責任を有することを明確に規定しているところであります。

 多文化共生の教育についてお尋ねがありました。
 今日、急速に国際化が進展する中にあって、自らが国際社会の一員であることを自覚し、日本人として異なる文化や歴史を持つ人々といかに共生していくかが重要な課題となっており、自国の、自分の国のみならず、他国の伝統や文化などを尊重する態度を養うことが求められております。そこで、本法案では、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」を規定しており、こうした教育を通じ、世界に信頼され、尊敬され、愛される国の実現を目指してまいります。

 愛国心についてお尋ねがございました。
 法案に言う我が国を愛するとは、歴史的に形成されてきた国民、国土、伝統、文化などから成る歴史的、文化的な共同体としての我が国を愛するという趣旨であります。この趣旨を条文上明確にするため、伝統と文化をはぐくんできた我が国と郷土を愛すると規定し、統治機構、すなわちその時々の政府や内閣等を愛するという趣旨ではないことを明確にしております。このことは自由と民主主義を尊ぶ我が国にとって当然のことであります。

 国を愛する態度の評価についてのお尋ねがありました。
 我が国と郷土を愛する態度の評価については、子供の内心を調べ、国を愛する心情を持っているかどうかで評価するものではありません。学習する態度を評価するものであり、内心の自由にかかわって評価するものではありません。

 郷土教育についてお尋ねがありました。
 子供たちが地域の伝統と文化を学び、自分の生まれ育った郷土や地域を大切にする態度を養うことは重要であります。このため、郷土の人物や文化財、自然、産業など、地域の様々な特色を生かした教材を地域の住民の協力を得て自主的に作ることは大切なことであると考えております。

 教員の地位、身分などの在り方についてお尋ねがございました。
 教育という営みにおいては、教育の機会や水準の確保のための全国的、共通的な一定の基準の下、児童生徒の実態に応じ、各学校における創意工夫を重視することが重要であります。また、教員の職務は専門的知識や技術の習得だけではなく、豊かな人間性、深い教育的愛情など全人的な資質、能力が求められるなど、一般の公務員等とは異なる特殊性を有しております。

 このため、このような教員の職務の重要性を改めて自覚する必要があることをより明確にする観点から、改正案においては「自己の崇高な使命を深く自覚し、」と規定しました。さらに、教員が安んじて教育活動に専念できるようにするためには、その身分が社会的、制度的に尊重されることが必要であるため、現行法を引き継ぎ教員の身分は尊重されるべきことを規定しております。

 教員の環境整備についてお尋ねがありました。
 学校教育の成果は教員の資質と熱意に負うところが大きく、教員に優れた人材を得ることは教育政策上の極めて重要な課題です。このため、教員免許更新制の導入だけでなく、学校における教員養成課程の充実等により質の高い教員の養成確保に努めるとともに、優秀教員の表彰や能力、実績に見合っためり張りを付けた教員給与体系の検討など、更なる環境整備に努めてまいります。(拍手)

ご意見はこちらまで
(c)2002 Yamashita Eiichi Office All rights reserved.