124国会 決算委員会会議録 1992年09月09日
○山下栄一君 大阪の山下と申します。今回初めての質問でございますので、いろいろ不手際があると思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず初めに、対ロシア外交交渉につきまして御質問したいと思います。
いよいよロシアのエリツィン大統領が来日されるわけでございますけれども、先ほども外務大臣おっしゃいましたように、新生ロシアの大統領として初めて来られるわけでございまして、日本の最高首脳が行かれる前にあちらから来ていただくということで、何としても大成功させなければならないという大きな課題があるわけでございます。特に、日ロ平和条約締結に向かっての大事なステップとして、またアジア、ひいては世界の平和安定のためにも何としても成功させなければならない、このように思うわけでございます。ただ、エリツィン大統領の立場も非常に国内で厳しいものがあるわけでございまして、経済改革も思うように進まないというようなことで、非常に政治的立場が厳しくなっておるわけでございますし、今回の領土交渉も思うような成果が得られないのではないか、このようなことを言われておるわけでございます。
大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、先月の末から病を押されてロシアを訪問されまして、日本の国のためにこの困難な問題に立ち向かわれたわけでございますけれども、そのことにつきまして心から感謝申し上げたいと思います。大臣は、領土交渉の相手としまして直接会われたエリツィン大統領をどのように評価されておられるか。またもう一点は、エリツィン政権中にこの領土問題を解決しようと考えておられるかということをお尋ねしたい、このように思います。よろしいでしょうか。
○国務大臣(渡辺美智雄君) エリツィン大統領をどう評価するかというお話でございますが、これはロシア国民が投票によって決められた唯一の大統領でございますから、もちろん我々はロシアの最高の指導者であるというように考えております。
そして、私は特に、エリツィン大統領が法と正義に従って今後外交を展開する、それから共産主義を捨てて本当に自由主義経済を極力取り入れて改革をやっていく、人権尊重と民主主義を取り入れていく、こういうようなことを幾つか言っておるわけです。そういうことを実は高く評価しておりまして、しかるがゆえに日本としては、領土問題いろいろございますが、今エリツィン大統領が考えている法と正義に従った外交の展開や民主主義、基本的人権、それから軍縮、平和というようなものの考え方はこれは大いにバックアップする必要がありますので、これらについては、領土問題は領土問題としてもG7の一員としてできるだけの協力はしてきておるということであります。
したがって、エリツィン政権が続くのか続かないのかと言われましても、我々としてはぜひとも今までのような姿勢でおやりになるとすれば大いに続いていただいて、今先生がおっしゃったような、近い将来にアジア・太平洋地域にも平和と繁栄をもたらすような政策を法と正義に基づいてとってもらいたいというように考えておるわけでございます。
○山下栄一君 今も積極的にバックアップしていきたいというお話でございましたけれども、経済支援の問題でお尋ねしたいと思います。
エリツィン政権の改革路線を支持していく観点からも、先ほど自民党の委員の方のときにも大臣おっしゃったわけでございますが、今回ロシアを訪問されて大臣は、ロシアの国内情勢は各国の支援を取りつけても非常に厳しい状況に置かれている、このような感想を漏らしておられましたし、きょう午前中に枝村駐ロシア大使が宮澤総理に会われたようでございまして、ロシアの国内情勢を見れば前向きにエリツィン政権を支持すべきである、このようなお話があったということをお聞きしたわけでございます。
特に、経済的な積極支援という観点から、今回通産省がたしか打ち出されているようでございますけれども、技術支援基金というお考え、それからまた大規模な合弁事業への融資を政府は決定したとかいうようなことを新聞報道で拝見しましたが、このような積極的な経済支援策をさらに推進すべきである。余り政経不可分の原則にとらわれ過ぎて、非常に厳しい状況に陥っているロシアに対する支援のタイミングを逸してしまうと日本にとってもマイナスであるというふうなことも考えますし、そういう意味で積極的な支援策をさらに推進すべきである、こういうふうに考えるわけでございますが、その点いかがでございましょうか。
○国務大臣(渡辺美智雄君) かねて私は国会でも申し上げているとおり、日本といたしましては政経不可分ということで、領土問題が解決しない限りソ連に対する支援は一切行わないということを言っているわけではありません。政権がかわってエリツィン政権が新生ロシアとして本当に極東に向かっても法と正義の外交を展開される。したがって、歴史的事実、日本と帝政ロシア以来の国境問題というようないろんな問題も歴史的事実を率直に認めるという立場に立って今後おつき合いをしていくというのであれば、我々は後援、応援することにやぶさかでない、拡大均衡路線でやろうじゃないかということを提唱いたしておるわけであります。
ただ、日本は領土主権の問題はもう一切棚上げで、それでロシアの言うことだけを一方的に聞いて国民の税金をどんどんつぎ込んでいくのかと言われますと、これはそうはいかないのでありまして、やはりそれは共存共栄でなければならぬわけですから、だからおのずから限界があることは当たり前のことでございます。我々はG7の一員としてやるべきことは、午前中にも申し上げたとおり、たくさんもうやっているわけですから、今後も領土が未解決であっても、今回も大いにいろんな面で協力をしていこうということで、サインもしようということで準備を進めているわけでございます。
したがって、大口の金融支援というからには、貸した金は返ってこなければいかぬわけでございまして、そういうようなこと等も考えられますし、やはり日本側だけが協力するということはいかがなものであるか。我々としては、お互いが協力し合うというのでなければこれはおかしいだろう。したがって、国民からの理解も得られないんじゃないか。やはり日本国民の大多数の人の理解を得られるような形にぜひとも持ってまいりたい、そう考えております。
○山下栄一君 非常に厳しい、困難な対ロ交渉であると思いますけれども、今回の大統領の訪日を契機に精いっぱいの外交努力をお願いしたいと思います。
続きまして、学校五日制につきまして文部大臣の方にお聞きしたいと思うわけでございます。
いよいよ今週の土曜日から学校五日制がスタートするということで、学制改革、そして戦後の六三制に並ぶ第三の教育改革というような評価もあるわけでございますけれども、文部省といたしましても非常にさまざまな受け皿づくりのために手を打っておられるわけでございますが、学校教育の観点からお尋ねしたいと思うのでございます。
最近の新聞報道によりましても、いろんな教育現場の心配な事実といいますか、声が載っておるわけでございます。特に、学校におきましては五日制によってかえってゆとりを奪ってしまっている、このような現実がある。本来、五日制というのは子供たちにゆとりを持たせるための制度であるにもかかわらず、学校という場所におきましては土曜日の少なくなった分、四時間分、三時間分を手当てするために学校行事を縮小して、例えば修学旅行をやめてでもとか、また始業式の日に午後は授業をするとかそういう形で授業の確保、手当てを考えたり、また何年か前から始まりましたゆとりの時間、小学校三時間とかまた中学においては二時間とか、そういう時間数があるわけでございますけれども、ゆとりの時間を正規の授業に充てるとか、このような形で対応せざるを得ない。授業時間を確保するために、また学力低下を避けるためにそのようなことを考えざるを得ないということで、かえって学校においてはゆとりを奪っているというふうな事実が、またそういう対応もされておるわけでございますが、これにつきましてどのように考えておられるかということです。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 今度の土曜日が皮切りになりまして、九・一二サタデープランというようなことで各他省庁の皆様方にもいろいろな受け皿等をお願いしておりますが、山下先生におかれては教職にあられた教育の専門家であられますので、その点は十分深く御理解をいただいているとは思います。
学校五日制というような大変大きな社会的変化が与えられるわけでありまして、とりあえず月一遍で始めましたのも、このような大変革が、一気に毎週土曜日全部休みということでは世の中にいろいろな波紋を広げるだろうというので、まず月一でやってみて、そこで出てきた問題点を解決しながら第二段階へ進む。そして、もちろん全部学校が五日制である、毎土曜日すべて休みというものを視野に入れて月一遍というのを九月十二日から開始するわけであります。したがいまして、これだけの大きな変革でございますので、幾つかの摩擦とかあるいは理解不足に基づく事柄とか、越えなければならないハードルあるいは避けて通ることのできない幾つかの課題というものをこれから克服しながら進めていきたいと思っているところでございます。
ただ、先生御指摘のとおり、私ども学習指導要領を変えるとかあるいは学校教育法施行規則に言う標準授業時数を変えることなく月一遍の土曜の休みというものは実現できると思っておりまして、例えば夏等の短縮授業を見直すべきだとか、見直して時間を生み出すことができないかとか、学校のいろんな行事とかあるいは教科外の活動とか、その辺は工夫で何とかやっていってほしいというふうに思っておるわけであります。
土曜日は子供が自分自身の個性を見出す時間、そのように位置づけたい。そうでなければ学校五日制の意味がなくなってしまうわけでありますので、模擬試験を土曜日にやるんだなどというようなこともちらほら聞こえてまいりますが、そういう学校五日制の意義を理解していないような行動はなるべくやめていただきたいというのが私どもの願いでございます。
○山下栄一君 月一回程度であれば何とか学校の方で工夫してできるのではないかという文部大臣のお考えでございますが、教育現場においてはやはり授業を一時間減らすことが大変なことであるという現実がある。
と同時に、特に学校五日制の導入の根拠の一つの中に学力観の転換ということを考えておられるわけでございますけれども、学力というのは知識とか技能の量ではない、主体的に考える問題解決能力という観点から学力は考えるべきである、そういうようなとらえ方があるわけでございますが、授業時間数を減らして、そして教科書の厚さはそのままであるという行き方からは、どうしても知識詰め込みになってしまう。それよりも、主体的な生徒の能力を養うためには、やはり教育内容を精選して、そして生徒とやりとりしながら、その中で考える時間を与えながらというふうなことで、時間数を減らす方向ではなくて教育内容を減らす方向で考えないと、子供たちの主体的な力というのは、考える力、判断能力というものを養えるような授業は行えない。どうしても一方的な、とにかく教科書を終えなきゃならないということが出てくるということではないか、このように思うわけでございます。
本来、今のカリキュラムも六日制が前提になっているわけでございますから、そんな中で、今は月一回ですが、これから将来的には月二回、完全五日制実施ということで考えていきますと、さまざまな観点から教育課程を見直して、そして教育内容を精選するということがどうしても不可欠である。五日制は教育課程の見直しを伴う、そういうふうに考えるわけでございますが、その点につきましてはどうでしょうか。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 長期的に申し上げれば、先生のおっしゃるとおりだと私も思っているわけで、また学校五日制が新しい学力観に基づくもの、すなわち子供が余裕をもって自分の個性を見詰めていく、そして自然との体験とか旅行とかスポーツとか奉仕とかいろんな体験を積む、いろんな経験によって人間的な大きさというものを培っていく。それが社会へ出た場合には、教科書で得た知識以上に大きな力を持つ。これは学校五日制の基本理念にある一つの新しい学力観でございます。
主体的に行動するとか、自分で問題解決をする能力を身につけるとか、生涯学習の理念ではありませんが、みずから学ぶそういう姿勢を身につけるとか、そういう今までと若干違った新しい考え方、今先生が御指摘されたような考え方というのは、平成元年に告示されて、今小学校から、そして来年中学、再来年高校と順次実施してまいります新学習指導要領においても幾ばくかそのような考え方は示されてきているわけでございまして、小学校一、二年生の理科、社会を廃して、経験中心、観察中心、行動中心の生活科というものを新設いたしましたのもそのような基本的な理解から発したところでございます。そのような考え方というのは、これからも時代の流れとともに、もっともっと強く色合いを出していかなければならないことと思っております。
しかし、学習指導要領というものは、時代に沿って常に新しく変革されていくという要請も受けなければなりませんが、同時に一つの安定性というんでしょうか、法律上の言葉で言えば法的安定性というんでしょうか、毎年学習指導要領が変わって毎年教科書が変わりますと、それこそ入学試験でも新課程の人はこれをとりなさい、旧課程の人はこの問題をやりなさいと、こんなことが毎年続くようではやはり困るわけで、そんな意味で学習指導要領がおおむね十年に一度ぐらい改訂されているというのは、私はその時間の長さにおいてはおおむね適当ではないかというふうに考えております。
当然、学校五日制を完全実施した場合には学習指導要領も変えなければならないだろう。平成元年に告示して、平成四年度から小学校で始めたこの学習指導要領の改訂というものが、ちょうど今から十年後に新学習指導要領に切りかわるころ、そのころにまた学校五日制も完全実施というのが、具体的に抱いているプランではありませんが、頭の中で大体そういうタイミングになるのかなというふうに私は考えております。
したがって、今先生がおっしゃった理念はまことに正しいと思いますし、十年先を見越してそのような考え方でやっていきたいと存じます。
○山下栄一君 カリキュラムの新しい新指導要領の実施が今始まったばかりであるという状況であるわけでございますけれども、それと五日制の実施が整合性なく実施されてしまったということがやはり非常に大きな問題点であろうと思うわけでございます。今、大臣おっしゃったように、五日制の実施は必ずカリキュラムの全般的な見直しを必要とすると、こういうふうに考えますと、十年後というのが一つのめどであるというお考えはひとつ了解いたしました。
時間の都合でもう一点だけお話し申し上げたいと思います。
教育費の父母負担軽減の問題でございますが、教育費の家計費に占める負担といいますかは年々重くなってきている。先日の文部省の教育費に関する調査でも、特に家庭教育費の占める比重が高いというお話がございましたし、また昨年度におけるさまざまな調査におきましても、例えば教育に関する貯金の比率が、特に三十代、四十代では三分の二以上の方が子供の教育のために貯金をされているというようなことの御指摘もございますし、特に高校生、大学生にかかる教育費は大変な重さであるというふうなことが言われております。
そういう観点から公明党は、特に大学生の入学金、初年度納入金の負担が大変重いという観点から、奨学金の中に入学金を対象にする奨学制度を考えたらどうかということを御提案しているわけでございますが、これにつきましてお考えをお願いしたいと思います。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 教育費の問題については、幼稚園から始まりましょうが、幼小中高のお子さんをお持ちの親御さんにとっては、いわゆる家庭教育費、小学校の低学年にあってはけいこごと、中学になりますと塾、家庭教師、そうしたもので大変経費がかかっていくということ、そして大学生のお子さんをお持ちであると、これがいわゆる学納金ということになってくるわけでございまして、そういった意味では大学生、もちろん院生を含めてでございますが、育英奨学制度の持つ意味というのは大変大きなものがあると思っております。
そして、先生が今御指摘をされました入学金も育英奨学の対象にすべきではないかというような御意見については、これは重く受けとめさせていただいておりますが、現在育英奨学制度のあり方について学識経験者等による調査研究会議がございますので、その審議の結果も踏まえて検討させていただきたいというふうに考えております。
○山下栄一君 前向きの御答弁どうもありがとうございました。
最後に一点、大蔵大臣の方にお尋ねしたいと思いますが、この教育費の負担軽減の一つの手だてとしまして公明党は、特に参議院選挙の一つの柱としまして教育減税というのを考えたわけでございます。特に、教育費の負担率の高い十六歳から二十三歳未満、高校生、大学生を対象にした年齢の方々、今の特定扶養控除の対象になっているわけでございますが、それをさらに十万円アップして教育減税という形で実施できないか、そういう政策を打ち出したわけでございますが、これにつきまして大蔵大臣のお考えをお願いしたいと思います。
○国務大臣(羽田孜君) 今、山下委員の方から御指摘のありました点につきましては、前国会の中でも実はしばしば議論になったわけでございますけれども、授業料ですとかあるいは入学金等の教育費そのものを控除する教育費控除の創設といったような、税制面で親に対する子女教育の助成の道を開くということになりますと、教育に対する財政的な助成、これは相当大きなものを国家として見ておるわけでございますけれども、こういったものに変更を加えるということになりまして、私どもといたしましては慎重に検討すべき問題であろうというふうに思っております。
特に、税制面のあり方といたしましては、これは税金を納められていない家庭の父兄には恩典が及んでいかないという事実があります。もう一点は、教育費などの生計費というものは所得のうちから支払われるものでございまして、教育費といった個別の支出項目、これを抜き出して所得税においてしんしゃくするということは、これはやっぱりおのずと限界があろうかというふうに考えます。
なお、今のお話の中にもあったわけでございますけれども、四十あるいは五十ぐらいですか、あるいは五十五ぐらいまでだろうと思いますが、働き盛りの皆様方の中で教育費等の支出がかさんで生活にゆとりのない世代の税負担の一層の軽減を図るという考え方から、お話のありました十六歳から二十二歳までの扶養親族につきまして、一般の扶養控除に対し三十五万を四十五万にしたということがありまして、この控除はやはり相当大きな優遇措置をしておろうというふうに考えております。私ども現在の財政事情から考えましても、今このことをとり得ることは難しいということを残念ですけれども申し上げざるを得ないことをお許しいただきたいと思います。
○山下栄一君 時間が参りましたので、終わります。