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国会質問

131国会 外務委員会会議録 1994年11月01日


○山下栄一君 大きく二点について質問させていただきたいと思います。
 まず初めに、今月行われますAPEC、アジア・太平洋経済協力会議につきまして質問させていただきたいと思います。
 APECという新しい地域の枠組みの体制が始まりましてことしで六年目になるわけでございますが、ことしはインドネシアで行われると。このアジア・太平洋という枠組みは、アジアだけではなくてアジア・太平洋という新しいいわば文明の可能性といいますか新しい地平を切り開く、そういう枠組みとして大変大きな意義があるというふうに思うわけでございます。特に、昨年から非公式でございますけれども首脳会議というものも始まりまして、これは回を重ねてということではございません、制度化ということではなくて、ともかくその年に次の会議を開くかどうかを決めていくというやり方でございまして、制度化よりも緩やかな会議体という形で発展させていこうという、そういう考え方については非常に私も賛成であるわけでございます。行く行くは、経済発展を目指すということだけではなくて軍縮とか文化面、そういう面にも構想として発展していけば新しい人類の可能性として大変大きな意義があるというふうに考えるわけでございます。
 今回インドネシアで開かれますアジア・太平洋経済協力会議、APECの首脳会議でございますが、村山総理も参加されるわけでございます。今回、議長国のインドネシア・スハルト大統領が提案される形で貿易・投資の自由化宣言、これが賢人会議の報告を踏まえてされるということをお聞きしているわけでございますけれども、この貿易・投資の自由化宣言につきましては参加国の中にもいろんな意見があると。経済的な格差もございますし、特にASEAN諸国からも非常に懸念が、タイとかマレーシアから表明されておるわけでございます。
 このボゴール宣言、貿易自由化の方針につきまして政府はどういう対応をされるのか、態度表明をされるのか、また特に自由化の時期を設定する、そういうことが言われておるわけでございますが、これについてどういう態度で臨まれるかということをお聞きしたいと思います。


○政府委員(原口幸市君) 本年の非公式首脳会議におきましては、アジア・太平洋地域の経済の発展を確保するための協力の一環といたしまして、スハルト大統領から同地域の貿易、投資の促進自由化を積極的に取り進めていくとの考え方が示されるものと予想しております。我が国といたしましては、域内の貿易の自由化を進めるとの大きな方向性は基本的には支持するものでありますが、この問題につきましては、今後、議長国たるインドネシアの考え方及びその他のメンバーの考え方等を踏まえていろいろな観点から検討がなされるべきものでありまして、現時点でこの議論の内容についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 それから、一定の期限を付して自由化を進めるという考え方は、先生御指摘のとおりAPECの賢人会議の報告書でも提唱されておりまして、こうした考え方も視野に入れた提案がなされております。いずれにいたしましても、この点についても今後APEC各メンバーの考え方を踏まえて検討が進められるべき問題でありまして、現時点でコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。


○山下栄一君 大臣にお聞きしたいんですけれども、EAECという東アジア経済会議、これは特にマレーシアのマハティール首相によって非常に強く主唱されておる構想であるわけでございますが、最近の報道によりますと、きのうでしたかきょうでしたですか、マハティール首相が日本の国の参加がなくてもEAECを創設するという非常に強い意思を表明されておるわけでございますが、このEAECの参加につきましての政府の御見解をちょっとお聞きしたいと思います。


○国務大臣(河野洋平君) かねてからEAEC構想というものがございます。ございますが、このEAEC構想の目的が一体何か、どういう意図を持ってこれをつくろうとしているかということ、それからまたどういう構造を持ってこれに当たろうとしているかということについてまだ十分理解ができないところがあるという理由で、アメリカその他もこれに大変懸念を表明しているところでございます。
 私どもは、EAECというものはこういうものですという説明がきちんとできていれば、それはそれでいいではないかというふうに思ってもいるわけですが、ただ余り地域主義というものがあっちにもこっちにもできるということよりも、今はAPECというアジア・太平洋を、非常な経済成長として注目をされているこの地域を、もっと開放的で、それから多様性を認め合うという形で自由な貿易ができる地域として育てようということからAPECというものが非常に注目をされている中で、その中でまたこの地域主義を主張するということが果たして適当かどうかという議論があるわけです。
 それに対して、EAECというのは東アジアの経済、EAECというのはコーカスという、つまりもう非常に緩やかな集まりという意味なんでしょうか、そういう発想でスタートしたものが、事務局を置き、こういう機構をつくりという説明に途中から少し変わってきたということもありまして、事務局を置いて委員会を置いて何をつくってということであると、これは屋上屋といいますか、逆に屋根の下にまた幾つもの家を建てるというような形になることが果たしていいかどうか。そういうことで我々は、もう少し考え方をはっきりさせろというか柔軟にしろというか、そういうことを申し上げているところでございます。


○山下栄一君 来年、APEC閣僚会議、この会議が日本で、日本で行うならば大阪でと、そういうお話を聞いているわけでございますけれども、今度そういう意味では議長国になるわけでございます。
 このAPECというのは、特に首脳会議は議長国の意向が大変大きく反映できる、そういう会議でもあるということでございますので、非常に日本の国の積極的な貢献といいますか立場も表明できる機会にもなると思うわけでございます。来年の日本開催のことしはその前年ということで、今月に開かれますジャカルタ会議、インドネシア会議におきまして、政府として、日本として本年行われる会議に具体的に提案されることが何かおありでしたらお聞かせ願いたいと思います。


○国務大臣(河野洋平君) 確かに御指摘のとおり、来年は日本、そして大阪でAPECの会議を行いたいという私ども心づもりを持っております。そして、その心づもりを持っておりますだけに、今回のインドネシアのAPECは成功してほしいと思っておりますし、さらにこのインドネシアの会議の議論によっては、その議論の肉づけといいますか具体的な作業を大阪のAPECで行うことになるということもありますので、我々としてはここで日本から何らかの考え方を示す、そしてそれを大阪でさらに具体的なものにしていくというようなことを考えたいという気持ちは持っております。しかしながら、何といってもこれはインドネシアがイニシアチブをとってなさるAPECでございますから、その辺はインドネシアとも十分相談をし、APEC参加国の理解がなければできないところでございます。
 今回のAPECは恐らく、これは先ほど政府委員から答弁をいたしましたがまだ予測でございまして、確かに賢人会議はこういうあれを出すということは言っておりますが、その賢人会議の議論を踏まえて非公式の首脳会議で首脳たちがどういう議論をするかということは全く予測の域を出ませんし、閣僚会議におきましても、私も閣僚会議に参加をさせていただきたいとは思っておりますが、閣僚会議での議論が今から予定稿があってその予定稿どおり進むということであっては意味のないことでございまして、これは閣僚会議もさまざまな議論があってほしいと思っておりますが、その中で域内の貿易・投資の促進及び自由化の議論が当然中心になっていくわけでございますが、それと同時に開発についても議論をしてほしいというふうに私どもは思っております。
 域内で貿易や投資を促進する、あるいは自由化を進めるということになりますと、域内の経済の発展の段階が余り違っていない方がいいわけで、したがって、まずは域内を中心として開発途上国同士の協力とか、あるいは先進国の幾つかの国が協力して開発を援助するとか、そういう仕組みなどもAPECの中で議論ができればいいなというふうに思っておりますが、まだ心づもりの段階を出ておりません。


○山下栄一君 今、大臣申されましたように非常に経済的な発展段階に大きな開きがあるということ、特に自由化促進、また今おっしゃった開発という面の経済協力という、特に日本の立場というのが、アメリカとかオーストラリアの先進国の意向とアジアの一員としてアジアと協調しながら経済発展を支援していくという橋渡し役といいますか、そういう意味がございますので非常に難しい立場だと思いますが、来年の日本の成功を目指す意味で重要な今年の取り組みだと思いますので、もう大体方針はお決まりだと思いますけれども、積極的な提案もぜひお願いしたいと思っております。
 次に、朝から話題になっております政府開発援助、ODAに関することでございますけれども、特に日本と中国の経済協力の面で第四次対中国円借款の協議が昨年以来一年がかりで続けられておるわけでございますが、もう仕上げの段階に入っているのではないかと思うわけでございます。第一次から第三次まで、一九七九年から続けられまして今回が第四次という段階になるのでございますけれども、正式に中国からの要請のリストも提示されておるとお聞きしておるわけでございますが、中国側の主な要請案件、また規模を簡単にお聞かせ願いたいと思います。


○政府委員(平林博君) 第四次円借款計画は、当初三年分を案件と金額で合意する、残りの二年は金額は合意しないで案件だけとりあえず合意しておく、こういうシステムで議論しておりますが、先方から出ておりますのは合計で六十九件、ほぼ百四十一億ドル程度ということでございます。しかし、これは先方のまさに言い値の腹いっぱいのものでございますので、それをどこまで日中の交渉で絞り込むかということで今双方が交渉中でございます。
 先週もやりましたけれども、交渉をもうしばらく継続せざるを得ないということでございまして、どのくらいの規模でどのくらいの案件を取り上げるかということにつきましては、日中関係の全体あるいはODA全体の政策、それから日本国民の御理解がどの辺まで得られるかということを総合的に判断いたしまして、最終的には総理を含めた内閣全体で決めていただくということであろうかと思っております。


○山下栄一君 今、お話しございましたように、従来の三次までの方式とこの第四次について、供与方式、年数五年を中心とした、考え方三年だというお話ございましたし、一月の羽田外務大臣、また三月の細川元首相の訪中時におけるさまざまな日本からの提案もございまして、この円借款協議に関することでございますけれども、対象分野につきましても今までと違う新たな臨み方をされておるとお聞きしておるわけでございますが、こういう方式を変えられた、また対象、要請、支援分野につきましても重点項目が変えられておるということにつきましての変更された理由、方針変更の理由ですね、これをちょっとお聞かせ願いたいと思います。


○政府委員(平林博君) 日本の経済協力は、もともとどこの国に対しても毎年毎年協議をしながらお約束して実行していくというのが建前になっております。中国だけはいろんな経緯がございまして過去多年度のお約束をしてまいりましたが、世の中が急速に動いております。また、中国の経済も開放・改革政策も非常な勢いで動いておりますので、例えば五年間を見通して固定してしまうということは日中双方にとって非常に問題があるということが双方の意識としてございまして、そうであれば、今、世界銀行がやっておるんですが、三年ぐらい一応決めておいて、あとは毎年毎年少しずつ見直しをする余地を残しながらやっていく方がよろしいんではないか、こういう双方の見解が一致しましたものですから三年でやるということにした次第でございます。


○山下栄一君 対象分野。


○政府委員(平林博君) 対象分野につきましては、従来どおり運輸あるいは電力等のインフラストラクチャーが非常に多いのでございますが、今回の第四次円借款の案件といたしましては、新規に農業、水利関係が非常に多くなっております。また、画期的なことでございますが、日本側の要請を受けまして環境案件が、純粋の環境案件が九件、これに我々が環境案件の一種と考えております上水道案件六件を入れますと十五件が出てきております。また、通信案件等も新しく出てきておりまして、我々といたしましては従来以上に貧富の格差の是正とか、それから農業あるいは水利案件の重視とか、なかんずく環境案件を重視した新しい組み合わせで第四次計画を合意してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。


○山下栄一君 環境分野の重視ということでございますけれども、特に中国の環境悪化については非常にさまざまな面で心配されておるわけでございますが、開発と環境との両立という面で経済発展重視、優先というふうな面が非常に強いということから、地球環境への影響が大変心配されておるわけでございます。
 最近、九州の北九州市が大連との協力関係の中で、経済特区と同じような形のモデル地区を設定する環境特区、そういう構想で合意したという報道があったわけでございますが、この構想への日本側としての支援ですね、国としての。この辺についてお聞かせ願いたいと思います。


○政府委員(平林博君) 昨日も河野副総理・外務大臣は中国から今訪日中の国家副主席とお会いになったんですが、その中に遼寧省の副省長さんがおられまして、食事の席で私もこの話をいたしました。
 環境特区という概念につきまして、まだ十分にはっきりしていない点がございますが、環境を重視するために特別の何か手当てをしようということだろうと拝察しております。日本の経済協力政策にも極めて合致するところでございますので、基本的にはよく御相談しながら、御協力できるところは取り組んでまいりたいと思っております。
 また、北九州市が大連市と姉妹都市の関係にございますが、大変熱心にやっておることは私も先週セミナーに行ってよく理解してまいりました。いろいろ自治体が独自の観点で自分の持っておられる経験とか技術とか人的な資源を活用しよう、こういうことでございますので、この北九州市の努力を側面的に政府としてもやってまいりたいというふうに考えております。


○山下栄一君 きょう午前中も話題になったわけでございますけれども、野沢議員だったと思いますけれどもお話ございましたが、ODA大綱四原則とのかかわりでございます。特に、地下核実験が本年二回も行われている。これもその都度、外務省におかれましてもさまざまな形で円借款にも影響を与えるという等の警告をされておるわけでございますが、それを無視して二回目が行われたということがあるわけでございます。これにつきましても日本国民の非常に強い懸念があるわけでございます、心配も広がっておるわけでございます、もしかするとまた三回目も行われるかもわからないというふうなことで。
 それで、大臣にちょっとお聞きしたいわけでございますけれども、今月のAPECの閣僚会議、また首脳会議の際に、例えば江沢民さんに直接その辺の我が国の主張また懸念を訴える場があるのではないかと思いますので、その辺のお考えをお聞きしたいと思うわけでございます。


○国務大臣(河野洋平君) 中国の核実験については、私から銭其シン外務大臣に対して、日本の国民感情に照らしてこういうことは決してやらないでもらいたいということをかねてから直接私は申し上げてまいりました。残念なことに中国は核実験を行ったわけでございまして、この点はもう甚だ遺憾に存じます。外務省としては、中国の大使を外務省に呼びまして、こうしたことについての遺憾の意は表明をしてきたところでございます。
 円借款との関係につきましても、こうしたことが日本のODAに対して好ましい影響を決して与えないということは、私自身、マスコミを通じて述べてきたところでございます。ODA四原則に照らしてどうかということになりますと、これにつきましては、もう議員御承知のとおり、その国の国情その他総合的な判断ということもまた必要でございまして、いろいろな角度から十分検討しなければならないというふうに思っております。
 私は、国際社会が核実験の全面禁止に向けて真剣に議論をして、その条約締結のための努力をしていかなければならない大事な時期でありますだけに、特に残念に思っております。私は、中国が国際社会の多くが望んでいる核実験の禁止に向けて動いてくれることを期待したいと思います。
 お尋ねの江沢民さんとの会談は、残念ながら、このAPECにおきましては非公式首脳会議と閣僚会議は場所が違いまして、私ども閣僚会議はジャカルタで行われますが、非公式首脳会議はボゴールで行われるということで、私がお目にかかることはないと思います。しかし、もし私がお目にかかるようなことがあれば、それは十分議員のお気持ちを頭に入れて対応したいと思います。


○山下栄一君 最後に。
 村山首相に村山・江沢民会談でその辺のことを主張するということについては、大臣の方から御提言をぜひしていただきたいと思うわけでございます。


○国務大臣(河野洋平君) きょうの外務委員会の議論はお伝えしたいと思います。


○山下栄一君 ありがとうございました。

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