131国会 政治改革に関する特別委員会会議録 1994年11月14日
○山下栄一君 初めに、連座制強化の法改正につきまして御質問したいと思います。
いろいろ準備いただいたと思いますけれども、大分削っておりますのでいろいろ御迷惑をかけると思いますけれども、よろしくお願いを申し上げたいと思います。時間の関係で大分はしょりたいと思っております。
朝から何度も強調されておりますように、国会での政治改革への取り組みも、昭和六十三年のリクルート事件が起こって以来六年を超えましていよいよ実を結ぼうとしておるわけでございますけれども、改革の第一歩であるというお話も何度もございました。
政治におけるずっと繰り返し行われてまいりました不祥事の根本原因の問題でございますが、これは単に政治家の倫理観とかそれから制度の不備とかそういうことだけではないという、そういう指摘もあらゆる角度から、またあらゆる階層の立場の方からも御指摘があってきたわけでございます。政治に金がかかる構造的な背景があるという、そういう指摘でございます。地盤培養の行為に金がかかる、選挙そのものに国民の常識を超える大変なお金がかかって、そのお金の関係でなかなか政治家に人材が集まらないという原因にもなってきたわけでございます。
選挙に常識を超えた金がかかる根本原因は何かという点につきまして、まずお考えをお聞きしたいと思います。与党の提案者の方、お願いいたします。
○衆議院議員(大島理森君) 委員にお答えしますが、衆議院選挙の場合、参議院選挙の場合、いささかその理由、原因が若干違う面もあろうかと思います。
私ども衆議院選挙、今までの制度でございますと、政権をとろうといたしますと、中選挙区制において少なくとも一党の候補者は過半数を目指して立てる、あるいは全員当選を目指して立てるという現状が続いてまいりました。そうしますと、そこにおいては、委員御指摘のように、率直に申し上げましてまさに後援会、この組織づくりが一番のポイントであったと思います。その後援会づくりの経過の中で、パンフレットを作成するとか集会を行うとかあるいはまた人と人、フェイス・ツー・フェイスで会うとか、そういうふうな活動がまず第一であった。そういうふうな構造的な中選挙区制における政権を目指す必然性から出てくるところの、どうしても政治資金がかかるという原因があったということは一つあるだろうと思います。
また、そのほかに日本の文化的な風土というものもあるのかもしれませんが、基本的にはそういうことがあったのではないかなと、このように思っております。
○山下栄一君 今、文化的な風土もあったというお話があったわけでございますけれども、第八次選挙制度審議会におきましてもその辺の指摘があったわけでございますが、筑波大学の土本先生という方が「腐敗選挙と法規制のあり方」という論文の中でおっしゃっていること、大変この段階におきまして、また今審議されております連座制強化の大きな法のねらいにもかかわる御指摘がございますもので、引用させていただきたいと思います。
買収の根源は、
我が国の精神風土、ないし日本人の気質に根ざしているように思われます。そもそも買収行為は一種の贈収賄行為です。贈収賄も買収も我が国特有の「贈答文化」に起因しています。その贈答は単なる親愛の情を示すだけでなく、それ以上の「ある気持ち」が託されています。受ける側も暗黙のうちにそれを察知してある負担を感じ、そのお返しとして相手の「ある気持ち」に応じようとします。ちょっと途中を飛ばします。
贈賄や買収の風習を温存させる根源は、この日本人の義理・人情を重んじる気持ちにあるので、その根はまことに深いといわなければなりません。この感情は我が国独特なもので、生活の潤滑油の役割を果たしていますが、法とか正義とは無縁な主観的、情緒的なものです。こういう指摘がございまして、この贈賄や買収の根源はまことに深い、このように御指摘があるわけでございます。
ただいま大島委員もお話しございましたですけれども、日本人の精神風土、文化風土にかかわるというその辺に目をやらないと政治と金の問題は解決しないというこの指摘に対しまして、特に自治大臣にちょっとお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(野中広務君) 先ほど大島提案者が申されましたように、それぞれ政党あるいはまた選挙区事情、そしてまた従来行ってまいりました現行中選挙区制度、こういうさまざまな上に、今、委員御指摘のような我が国の持つ独特の風土等もあったかと思うわけでございます。
○山下栄一君 制度改革は意識改革を伴って初めて魂が入る、こういうことで今回の法改正は意識変革を促す、そこに大きなねらいがある、こういうことで特に政治家みずからの身を切る覚悟というお話も何度もあったわけでございますけれども、そういう従来の選挙常識を根底から変えていきたいんだという法改正の趣旨が意気込みとして述べられておるわけでございますが、今回の法改正が政治家並びに国民全体の意識改革を促すというふうにつながるんだという、その辺の理由につきまして提案者からお聞かせ願いたいと思うわけでございます。与野党それぞれお願いしたいと思います。
○衆議院議員(大島理森君) 山下委員、この腐敗防止法免責事由のところでたびたび答弁させていただきましたが、今度のこの意識改革の先頭に立つべき人間は立候補者及び立候補予定者ですよと。今、私どもも自治大臣に一生懸命PRしてくださいということはお願いしておりますが、むしろPRするべきは我々であるという認識を持たなきゃいかぬと思います。そのことが国民の意識を変えていくということにならなければいけないと思います。
実は、今週、私も帰りまして、我が党の想定される私の選挙区の県会議員さんに集まっていただいて、今、金の話ばっかり出ているものですから、あるいは選挙区の話ばっかり出ているものですから、実は今こういう連座制の強化を議論しておるんだ、こう言いましたらもう大変にびっくりしまして、これは率直な私はお話をします。
つまり、率直に言って、先生もおわかりだと思いますが、こういうことを余り厳しくすると選挙運動の足が鈍るんじゃないかという私ども自身の心配もすべての議員にあるのかもしれません。だけれども、そういうことを乗り越えて私どもがPR者にならなきゃならぬし、意識改革者にならなきゃならぬ。そうすることが最終的に国民の皆さんに改めてこの趣旨、意思が徹底されていくもの、そういう意味で私は、私どもも極端に言えば血を流す、あるいはつらい思いもしながら痛みを思いながらやっていくことが最も大事な手法であるということだと思っております。
○衆議院議員(保岡興治君) 大島提案者の言われたとおりでございまして、今度の選挙浄化法とも言うべき連座制の強化は、いわば従来の司法官憲に刑罰を厳しく細かく規定をして取り締まりをお願いして浄化の責任を果たしていただくというのではなくて、候補者みずからが命がけで自分の選挙運動を通じて選挙の浄化の責任を果たすということで、まさに官憲に頼らずみずから選挙浄化の責任を引き受ける、要するにそれだけの大きな転換を図る革命的な要素を持っている。
そういった意味で、本当に日本の選挙風土というものは、今、山下委員の御指摘のように、本当に贈答文化、日本の伝統文化、礼を尽くすには形を必ずあらわしなさい、そういう教えの中で社会を築いてきておりますから、これは政治の場面だけは違うんだということの意識の大転換を図らないとならない、こういう趣旨でございます。
○山下栄一君 今回の法改正のポイントは、国民に呼びかけるものじゃないんだ、政治家、おまえの、私の、あなたの、その命がけの戦いによって初めて徹底されるんだという、このことにつきましてはまた最後に確認させていただきたいと思います。
連座制強化の内容でございますけれども、連座対象者を拡大する、そしてその拡大された責任者に対して徹底して政治家が、候補者が選挙浄化の責任を持つというのがポイントだろうと思うわけでございます。特に何度もきょうもお話ございましたが、組織的選挙運動管理者の組織でございますが、本来選挙を目的にしない団体、特に人の余りつながりが強くないそういう団体、例えば同好会とか同窓会、町内会、PTA、こういう団体が今回の対象となる選挙運動体、このように認められるのはその組織がどのような態様を備えたときかということにつきまして野党提案者にお聞きしたいと思います。
○衆議院議員(保岡興治君) 午前中の質疑でも申し上げましたとおり、我々の選挙というのは風や何か空気で票を得るということもありますが、一般的に組織を通じて選挙をやる。既存の組織を利用したり新しく組織をつくったりして選挙をやる。今度の法改正では、恐らく政党が選挙運動の中心になりましょうから、政党組織というものが一番選挙にかかわりのある団体組織になると思います。
そのほか議員の後援会とか、そういう多くの系列の議員に応援していただくという意味ではその方々の後援会。その他企業、労働組合あるいは各種業界、団体。小さなものでは同好会、同窓会、あるいは地域のいろんな団体を考えると商店街、町内会、自治会。あるいはまた役所で、本当は選挙をやっちゃいけないんですけれども、実際にやったとすれば役所なども組織的な選挙運動の連座のかかる要件の対象になる組織足り得る。
そういった意味で、我々の選挙の実態を幅広くとらえて、そういう組織を通じて選挙を行う場合、その選挙のあり方やそのあり方を実行する立場にある者に選挙の浄化の責任を候補者を中心に、候補者にそれらの者が買収等の違反をしないように努力を尽くしていただく、こういう趣旨でございます。
それを一般的に法解釈として申し上げますと、組織とは、特定の公職の候補者または公職の候補者となろうとする者の当選を得せしめまたは得せしめない目的のもとに役割を相互に分担して活動する人的結合体またはその連合体というふうに解釈をいたしているところでございます。
これは実質的見地から判断する、あるいはどの程度継続していればいいかということについては、役割を分担して活動する人的結合体として意味がある程度に継続していれば足りるとか、あるいは指揮命令系統が必要かというと必ずしもそうではない。それから組織の総括者みたいな存在が必要かというと必ずしもそうではなく、組織の選挙運動の具体的な意思決定をする一人間の集まりがあれば、その人間の一定の範囲内の方々の同意を得るということで候補者と選挙浄化のつながりをつくっていくことができますので、そういった総括者の存在も不要である。人数はどれだけ必要であるかというと、選挙運動については役割の相互分担を行うための必要な人数があれば足りると。その他いろいろ具体的に目的に沿って解釈をしていくことになろうと思います。
○山下栄一君 人間の考える組織はすべてその対象となるということだと思うわけでございますが、この組織的選挙運動管理者の責任者の中身でございます。今も少し御説明がございましたように、要するにこの選挙運動全体を決定する立場の方、計画の立案とか調整という言葉で法律の中では表現されていると思うわけでございますが、選挙運動全体のあり方を決定する立場の人、今度はこの運動員に対して影響力を持つ人、これは指揮とか監督という言葉で表現されていると思うわけでございます。また、そのほかにも管理という言葉もございましたが、そういう立場にある人、正責任者だけではなくてそれを補佐する人も入る、さらにその正責任者と役割の一部を分担する者も入るんだと、こういうことでございます。
結局、連座対象者が限りなく拡大していくわけでございますけれども、見方によれば選挙運動にかかわった者の大半、運動員の大半に及ぶ話になってくるということで、一つ例を出しますと、ある組織、一つの会社であって、会社の組織の中では役職がない方、一メンバー、この方がある人に投票依頼をしたと。その人がさらに別の、近所だったら近所の方に拡大を強く働きかけた場合は、それでまた本来ある組織の無役職の場合であっても新たな組織をつくることになるんじゃないかなと思うわけでございます。強く他者に投票依頼を拡大することによって、強く働きかけることによってまた新たな組織ができ上がっていくというふうにも考えられるわけでございまして、こういう場合も組織選挙運動者の範囲内に入ってくるという、こういう考え方でよろしいんでしょうか。
○衆議院議員(保岡興治君) 選挙運動というのは、運動を展開するに従っていろいろな組織が参加したり、組織それ自体が同心円的な広がりを示すというのが実態だろうと思います。
そういった意味では、先生がおっしゃったように、どなたかが強く候補者の支持を求め、ある組織がそれを引き受けて選挙運動を展開し始める。その場合、この連座の適用の要件としては候補者に制裁を最終的には科するということでございますので、候補者等とその組織とが意思を通じていなきゃいかぬ。要するに選挙運動をなさることについて明示であろうと黙示であろうと相互に了解がなければならない。そういう状況が先生が今御指摘の事案で発生していれば、そういう組織の選挙運動管理者等の違反は連座の適用になってくると、こういうふうに思います。
○山下栄一君 公職の候補者等と意思を通じてというあかしの問題でございますが、よく支持決定推薦状とか推薦決定証の発行、これがある場合は当然意思を通じてということになると思うわけでございますけれども、ほかにどのようなことが考えられるか。例えば名刺の交換などをした。ところがそれ以上の働きかけはなかった。こういう場合、この名刺の交換だけで意思を通じたと言えるかどうかという具体的な問題ですが、お願いします。
○衆議院議員(冬柴鐵三君) この条文で「意思を通じて」というところは大変重要な部分であります。
意思を通じてというからには当事者がまず必要であります。だれとだれの間にどのようなことが行われることが必要かということであります。一方の当事者は公職の候補者またはそれになろうとする者、それに限られます。それからもう一方の当事者は組織的選挙運動体の総括的地位にある人平たく言えば、その選挙運動をやってあげよう、いわゆる推薦決定をしようあるいは応援をしようということを組織の代表として決め得る立場にある人、そういう人が両当事者であるというふうに言えると思います。その間に何が行われなければならないかというと、選挙運動をやろうということについて両当事者の間に相互に了解が成立していることであります。
したがいまして、名刺を交換したという一つの事実から、それだけの事実で今言った三つの要件を判断することは乱暴でありますけれども、あえて申し上げれば、その間に今申し上げたような関係が成立をしていると客観的に認定され得る場合には、これは意思を通じたことになる、このように考えられます。
私は、名刺の交換だけでは、今、答弁することは乱暴だと思うわけであります。しかし、その名刺を交換することに象徴される内容ですね。そこに今、両当事者の間に名刺が交換された、それが客観的にその選挙を運動してあげよう、してください、そういう意思が諸般の事情から認められる場合には意思を通じたことになり、そうでない場合には意思を通じたことにはならない、そういうふうに申し上げたいと思います。
○山下栄一君 別の例でございますが、支持決定をしていただいた会社があるとすると、その会社の課長が意気に感じて、会社とは関係のない地域の町内会、その課長さんがたまたま地域の町内会の会長をしているという町内会の組織を利用して買収に及んだと、こういう場合、意思の連絡はその町内会組織にまで及ぶのかという、そういう一つの例でございますが、この点についていかがでしょうか。
○衆議院議員(冬柴鐵三君) 候補者以外の者が行った選挙犯罪の結果、候補者が資格を喪失するという重大な結果が及ぶわけですから、候補者がその運動体の存在を認識しなければここには意思を通じたということにはなりませんので、候補者としては、頼んだ会社の課長さんと言われましたが、その会社に運動してほしい、そのようなことであったと思うんですが、たまたま違うところでやられたとしても候補者とその町内会とは意思を通じているとは思えません。
なぜそういうことが必要かというと、認識した結果、その町内会へ赴いて選挙犯罪やらないでくださいよということを候補者自身が働きかける経過がなければこの結果を引き受けるというわけにはいかないわけでございますから、今の場合には意思を通じたことにはならないというふうに言えると思います。
○山下栄一君 参議院選挙区の場合、衆議院と違いまして選挙区域が非常に広大なわけでございます。したがいまして、候補者自身じゃなくてその代理の方、例えば秘書とか親族とかそういう方が組織の責任者と直接交渉して支援を取りつける場合があると思うわけでございますけれども、この代理者が候補者に報告しないで代理者の裁量でそういう行動に及んだ場合、候補者とその組織と意思を通じていたかどうかは非常に判断が難しいと思うわけでございますが、基本的に意思を通じていると言えない場合が多くなるのではないかと思うわけでございますが、この点についてはいかがでしょうか。
○衆議院議員(冬柴鐵三君) いずれも事実問題でありますけれども、先ほども申しましたように、一方の当事者は候補者等、すなわち公職の候補者と候補者となろうとする者であります。しかしながら、手足論ということがあります。
質問者がおっしゃいましたように、広大な日本全国を一人の人間が走るわけにはまいりません。したがいまして、多くの補助者というものが必要になろうかと思います。今、挙げられましたように、親族、秘書、そういう人たちが候補者の手足となってそういうような活動をされる。その認識結果が候補者に通じなければ候補者としては努力のしようがありませんからそういう意思を通じたことにはなりませんけれども、諸般の事情から、その一点ではなしにその前後の事情その他から意思を通じたと認め得る事実が認められる場合には、候補者本人でなくてもその手足の人が認識することをもって意思を通じた場合もあり得ると思います。
しかし、原則として今説明されたことでは私は意思を通じたことにはならないのではないか、このように判断をいたします。
○山下栄一君 次に、免責事由についてでございますが、免責事由の中の、特に相当の注意を怠らなかったときは連座の適用を受けないという規定についてでございますけれども、この相当の注意を怠らなかったということは、選挙浄化のための注意義務を怠らなかったということになると思うわけでございます。きょうも朝から何度もお話がございました候補者に遠いか近いか、また注意を直接的に行ったかどうかという問題もあるというお話がございましたけれども、特に候補者から遠い位置にある末端の組織、末端の責任者、この責任者は候補者に一度も会ったことがないという、そういう場合に要求される注意義務の程度はどの程度か。
特に参議院の場合、先ほど申しましたように、相当組織の上位の者、候補者に近い責任者にも直接会わないということも多いわけでございますが、その場合、先ほどもお話しいたしましたが、代理の人が、例えば秘書とか親族が間接的に働きかけ、候補者が直接演説したりとか握手したとかというんじゃなくて、間接的な働きかけをやる。特に文書等の広報活動を通じて候補者でない代理の方がやる場合もある。この場合、相当な注意という問題がございますけれども、相当な注意を行ったかどうかということについてですけれども、候補者が秘書とか親族に対する周到な注意を行っておればこの適用を受けないのかという、この点についてはいかがでしょうか。
○衆議院議員(保岡興治君) この点については、たびたびお答えも申し上げてきておりますけれども、候補者等に課せられている選挙浄化の注意義務というのは、一般的に社会常識上それだけの注意があれば組織的選挙運動管理者等が買収等の選挙違反を犯すことはないであろうと期待し得る程度の注意義務ということでございますが、この点は、候補者に近い位置にあろうが遠い位置にあろうが基準として変わりのないところでございます。
しかし、具体的にどういう注意を払って尽力して努力していれば注意義務を果たしていたと言えるかどうかということについては、近い位置にある者は非常に高い注意を求められますし、遠い位置にある者はそれよりか程度の低い注意で足りるということになりますが、今回の連座制の趣旨が公職の候補者等に徹底した選挙浄化を果たしていただこう、その責任をとっていただこうということでございますので、遠い位置にある場合であっても、社会通念上、候補者に要求されるできる限りの注意を払うということは要請されていると思います。
そういった意味で、通常一般の注意能力を前提としますけれども、候補者が可能な限りの措置を講じていたにもかかわらず、それでもやむを得ず偶発的に犯罪が発生してしまった場合のように、社会通念上、通常こういう努力を払えば違反は発生することはないであろうという、そういう程度の措置は講じていることが求められている、こういうことが言えると思います。
先生がおっしゃるように、非常に末端の遠いところの責任者に対し組織に対してどういう浄化を求めれば注意義務を達成したと言えるかどうかというのは、最終的には具体的な事案で判断する以外ないのですけれども、先ほど申し上げているとおりに、選挙運動にはいろいろな方法、手段があって、中身の濃いものから薄いもの、近いところで非常に密度の濃い選挙運動を展開しているところもあれば比較的薄い選挙運動を展開しているところもある。
少なくともそういった選挙運動をお願いしている方法、内容に沿った同質同量の注意義務を果たすということは必要なことで、ポスターやパンフレット等で広く末端にお願いしている場合は、それに合わせて連座制が今度こういうふうに改正になって当選の無効あるいは資格剥奪など重大な結果が生ずるということについて、同じようなポスターやパンフレットでその趣旨を徹底していただくということは最低限度必要だと。
しかし、そういう努力をしていたにもかかわらずという場合でしょうか、例えば中心部分で選挙違反が多発する、あるいは末端部分でも非常に広く選挙違反が起こってしまったというような結果がそこにあらわれた場合には、注意義務が本当に尽くされていたかどうかということについては非常に厳しく問われるということになるのではないかと思います。
○山下栄一君 候補者が相当な注意を怠らないということをするために、組織への間接的な働きになればなるほどパンフの発行とか、そういう広報活動をやっぱり必死になって訴えてやる必要があると思うわけでございますが、広報活動をやればやるほど金がかかってしまうという面もあると思うんですけれども、この点についてはどうでしょうか。
○衆議院議員(保岡興治君) それは工夫の問題で、同じパンフレットやポスターにその趣旨を書くとかいろいろ工夫も可能だろうと思いますし、全体としてはやはり選挙運動を熱心に行うと同じように熱心に浄化運動をするということで、経費の負担がどうなるかちょっと具体的にはわかりませんけれども、日本の選挙風土の一新を図っていくためにはこれ以外ないという決め手としての制度でございますので、日本全体として選挙に候補者の負担が非常に将来は軽減されてくるだろうと思いますし、何よりも国民の信頼を回復する大きな力になると思っております。
○山下栄一君 次に、連座裁判について御質問いたします。
組織的選挙運動管理者の刑罰によって候補者が当選無効並びに立候補制限となる場合の裁判の手続、行動と挙証責任、これがどうなるのか、御説明をお願いしたいと思います。
○衆議院議員(冬柴鐵三君) 連座の裁判は、他人の犯罪によって自己の当選が無効にされるという重大な裁判手続であります。
二つの大きな形がありまして、一つは候補者以外の人が犯した選挙犯罪について有罪の判決、すなわち懲役、禁錮刑以上の裁判が確定をしたと。これは今回、執行猶予がついた場合も含むわけでございます。そういうものが確定をいたしますと、一つの制度では、その候補者に対して、あなたに関係する組織的運動管理者あるいは関係者が有罪の確定がありましたよという通知が行ってから三十日以内に候補者の方から訴訟を起こさなければいけないという一つの方法と、もう一つはそういう確定しましてから三十日以内に検察官の方から当選者に対してあなたの当選には問題がある等、そういう訴訟を起こす、二つの方法があります。
一つの方法は、法定刑が加重される場合にそういう類型が選択されております。後者の検察官から訴訟を起こすという類型はそうでない場合でありまして、今回の今問題になっております組織的選挙運動管理者の場合は最終的に刑が加重されなくなりましたので、それが今の法律案になっておりますので、そういう管理者に対して有罪の判決が確定した場合には、検察官が原告になって、当選人等に対してその当選が無効であり、そして確定後五年間立候補制限がありますよ、受けますよという訴訟を所轄の高等裁判所に対して提起することになっております。三十日以内であります。判決確定後三十日以内でありますから、三十日を超えて提起されたらそれは無効にはなりません。三十日以内に提起されれば訴訟が係属することになります。訴訟の形態は民事訴訟であります。一審は高等裁判所、二審は最高裁判所で二審制になります。
このときの立証責任の分配でありますけれども、原告である検察官は、この当選が無効になるという理由を立証しなければなりません。すなわち、組織的選挙体と意思を通じてそしてこの運動がされた、その管理者たる地位にある人が買収等の重罪を犯した、これは四つの類型だけになっております。二百二十一条、二百二十二条、二百二十三条、二百二十三条の二という四つのこれは非常に重い類型でございます。買収とかそういうような犯罪でございますけれども、そういうもので禁錮刑以上の刑に処せられる、執行猶予はついているけれども処せられてそれが確定した、こういう事実をまず立証しなければなりません。
そうなりますと、被告とされた候補者、当選者の方としてはその当選を無効とされないためには、先ほど来問題になっていました、その有罪を受けた者がおとりであった、あるいは寝返りであった、もう一つはそういうことをしてもらっては困るという万全の注意を払った、相当の注意を払ったということを被告の方が立証しなければならないという責任を負うことになります。立証配分はそうなります。
ただ、ここから先は私の私見でありますけれども、おとり、寝返りというのは、先ほども説明がありましたように、大変難しい事実を立証しなければならなくなります。挑発とか誘導、そういうものによって当選を無効にする目的を持って、しかも相手の候補者あるいはその運動員と意思を通じてやったというようなことは、強制捜査権のない候補者は到底その事実を立証することは私は困難であろうと思います。そういうことから、私は、そういう疑いが相当濃厚であるということを候補者が立証した場合には検察官の方で、いやそういうものではありませんでしたということを完全に立証しなければならないことになるのではないか。すなわち立証責任転換の法理がそこでは一部働く場合があるのではないか。私の私見ではありますけれども、そういう意見を持っております。
以上であります。
○山下栄一君 ちょっともう時間がなくなってきました。最後に一点だけ。
冒頭の質問に返るわけでございますけれども、今回の連座制強化の法改正の趣旨は、とにかく政治家自身の徹底した選挙浄化責任、これを要求する法改正である。それによって選挙風土を変え選挙革命を目指すんだという、そういう意気込みで臨んでおるわけでございます。したがいまして、国民への啓蒙啓発の前に我々政治家自身の覚悟といいますか、これが大変重要になってくる、そこがポイントになると思うわけでございます。先ほど川橋委員の方からもお話がございましたが、したがいまして政治家我々の意識変革を行うために、政党として、政党挙げてこれに取り組む必要がある、このように考えるわけでございます。
先ほど三塚委員からも少しございましたけれども、与野党それぞれ政治の取り組み、今回の先頭に立って戦うという取り組みについてどうしていくのかということについて、その決意をお伺いしたいと思います。
○衆議院議員(大島理森君) 先ほど三塚委員がお話しした方針で我が党も取り組んでおりますし、もう一つは、政党政党というそれぞれの政党と同時に、かつて政治改革をつくるとき民間政治臨調の皆さんがえらい熱心にやって、その後さっぱり声が聞こえません。むしろこれからああいう形での運動をしていただくことが非常に大事なのではないか、私どももそういうふうに働きかけていきたいと思っております。
○衆議院議員(保岡興治君) 先ほど申し上げましたとおり、これは本当に政党、政治家、有権者の意識改革をこれからこそ一層努力して努めていかなければならない。そういった意味で、政党間で、与野党間でもっと協議の場をつくって、新しい政党政治のあり方ということあるいは選挙のやり方、政策協議のやり方、いろんなことを話し合ってルールをつくるということを真剣に考えることが大事なんじゃないだろうか。そういった意味で、我々もこれから新党を結成するのを間近にしておりますけれども、新しい政党としてそういう新しい時代の政党政治に対するはっきりした対応をしていきたいと考えております。
○山下栄一君 以上で終わります。(拍手)