131国会 世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会会議録 1994年11月30日
○山下栄一君 公明党の山下でございます。
きょうは遠いところ、宮澤参考人また渡邊参考人、平日でございましたのにお越しいただきまして、またさまざまな形で大事な今回の国際的な自由化促進のための国際機関の設立に関する条約批准の問題、またそれに伴う国内法関連の審議が衆議院、参議院それぞれ行われておるわけでございますが、それぞれの見地から高い見識をお教えいただきまして本当にありがとうございます。
まず、渡邊参考人にお聞きしたいと思うわけでございますが、時間が十分しかございませんので、まず二点お聞かせ願いたいと思うわけでございます。
今回のマラケシュ協定の合意の意義につきましては、冒頭に陳述の中でわかりやすくお教えいただいたわけでございますけれども、ガットと比べますと暫定的な適用という状況から、今回の常設機関の設置と、二国間交渉だけではなくてそういう国際的な話し合いの場が常にあるという状況をつくったこと、また紛争処理体制も非常に改善強化されたこと、大変大きな意義があるということをおっしゃったわけでございます。
ただ、超国家的な権威というのが非常に今の国際社会は弱いわけでございまして、国家主権を制限するようなものにつきましては非常に厳しい反発があるというそういう状況があったわけでございます。一九四八年二月一日から暫定的適用という形になってしまったガットと同じ運命をたどることはないとは思いますけれども、あのときもITO、国際貿易機関ですか、一応用意されておって、結局設立できなかったという状況があるわけでございまして、今回もたとえ発効いたしましても実際骨抜きになってしまうというふうなことも心配されるわけでございます。
特に、過日のアメリカの議会がクリントン大統領に注文をつけたと申しますか、WTOの紛争処理によってアメリカの主権の侵害を監視するための紛争処理チェック委員会ですか、これを設置する、これを国内法で来年つくりなさいと。WTOからの侵害が五年間に三回に達した場合は米議会は大統領にWTOからの脱退を勧告できるという、そのような国内法を制定しようという約束を取りつけたという話が載っておるわけでございます。今回のWTOの設立の問題につきましては、アメリカがかぎを握っておる状況を考えましたら、アメリカの今回の大統領と議会との合意、米議会に勧告権を与えるというそういう内容につきまして、非常に骨抜きになる可能性という面で心配されるわけでございますが、この点につきましての参考人の御見解をお伺いしたいということ。
それから、この紛争処理手続、紛争処理体制の強化改善という、ガットと比べて今回はそういうさまざまな面で、手続の迅速化とかそれから統一的な運用という、そういうふうに非常に強化されておる、改善されておるということでございますが、拘束力という観点から、私は、ほかの例えば国際司法裁判所、ICJの拘束力と比べると格段の実効力のある今回の内容になっておるということがわかるわけでございますが、主権との関係で内容的には非常に画期的な実効性のある裁定ができるという体制になっておるわけでございます。
そういう意味で申しますと、人間の社会といいますか国を越えた国際社会を形成していく、つくっていくという意味におきまして、国家を越えた国際的な拘束力の強化ということで今回の条約の内容は非常に意義があると、このように思うわけでございますが、そういう国際社会における国家に対する拘束力の実効性確保という意味から今回の条約内容の意義につきまして少し教えていただきたいと、このように思います。
○参考人(渡邊頼純君) 山下先生から大変、ある意味でテクニカルで非常に難しい御質問をちょうだいいたしました。
まず、アメリカの実施法案との関係でございますが、アメリカの実施法案の中にも、三〇一条ないしはスーパー三〇一条の適用を受けるようなケースにおきましても、それが何らかの貿易協定の中に含まれている場合には、その貿易協定の方でまず紛争処理をしなさいということが書いてあります。この場合、例えばWTOもそういう意味では当該貿易協定の中に入ってくるということがありまして、アメリカといたしましてもまずWTOの中で、相手国がWTOのメンバーであればWTOの紛争処理の中で問題を解決するという義務はやはり負っているというふうに考えることができると思うわけでございます。
それから、今度クリントン政権下で復活せられましたスーパー三〇一条をよく見てみますと、実際に不公正貿易国であるという指定、そして調査、インベスティゲーションから実際の制裁発動まで大体十二カ月とか十八カ月という非常に長いタイムスパンをとっているわけでございます。他方では、ウルグアイ・ラウンドの中で紛争処理に要する期間、これはパネルの設置からパネル報告の採択まで通常であれば九カ月、もし上層組織の方へ訴えるとすれば十二カ月ということで、かなり短縮を図ったわけでございます。
ですから、先ほどの、当該国が何らかの貿易協定に入っていればということで、WTO協定の中でまず取り上げなければいけないような貿易紛争につきましては、WTOの中の紛争処理の中で迅速に問題処理をすれば、わざわざ三〇一条、スーパー三〇一条の対象にならなくても済む可能性が非常に高まった。そういう意味では、単に一方的主義はいけませんと言っているだけではなくて、実効的にアメリカの一方的なユニラテラリズムによる措置というものを回避できる可能性が以前より高まった、その点がやっぱり最大のポイントではないかと思うわけでございます。
それから、拘束力いかんということでございますが、拘束力については以前もあったわけですね。それはある程度、もしパネルの勧告に対して、被提訴国がちゃんとした違反措置と認定されたものをガット整合的なものに変えないときにはリタリエーションといいまして、報復措置の対象になったりするという形でそこが担保されていたわけでございます。ですから、そういう意味では拘束力自体はそれほど変わっていない。むしろ、先ほど申しましたように、全体のプロセスを時間を短くしたりすることによりまして紛争処理のメカニズム自体の信頼性というものを大きくするということがあったかと思います。
他方では、先ほども問題になりました経済主権の制限というのが入ってくるのではないかということでございますが、それにつきましては、被提訴国の主権の制限というものをある意味でバランスをとるために、上訴組織、アップレートボディーと言いましていわば控訴審を設けてあるという形である程度の担保がされているかと思います。
それから、一般論として申し上げますと、これだけ経済の相互依存が進んでまいりまして世界市場といったようなものがある意味で国境を越えて資本も人も物もサービスも動く、こういった中におきましてはある程度の主権の制限ということもこれからはやむを得ない。要はどうやって主権の制限をやっていくか。それを一方的なユニラテラリズムでやるか、ないしはこれをガットとかウルグアイ・ラウンドとか、ないしはWTOといったような多国間のマルチラテラルなフレームワークの中でその制限をお互いにある程度合意をしながらやっていくか、そこがまさに重要なポイントであろうかと思います。
○山下栄一君 時間になりましたので、宮澤参考人、大変申しわけありませんけれども、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。