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国会質問

131国会 世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会会議録 1994年12月05日


○山下栄一君 公明党・国民会議の山下でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今回、特別委員会という形で、衆議院を終えましていよいよ本日から参議院で審議に入ったわけでございますけれども、私の問題意識としましては、このWTO協定は大変膨大な中身を持った、また壮大な国際機関をつくり、そしてまた国際貿易のルールを築き上げるという大変な内容を持ったものであるわけでございます。ところが、その割には国民の皆さんにはなかなか理解されておらない、こういう面があるわけでございます。
 きょうは、テレビを通じて国民の皆さんがこの審議の内容を注目し、またこの審議を通して理解を深めていくという、そういう啓発の意味を込めた審議になっていくのであろうと思うわけでございます。きょうから参議院がスタートいたしまして、我々の国民生活全般に大変大きな影響があろう、そしてまた一次産業のみならず二次産業、三次産業、全産業に対しても大きな影響があるんだということが大分明らかになってきたと思うわけでございます。
 ただ、先ほど申しましたように、国民にとっては非常に関心が薄いといいますか、WTOというのは一体何だというそういうことでございまして、WTOというのはお米の国際協定ではないかと、そういうふうな認識になりがちな面があるのではないかと思うわけでございます。それほど農業問題が大変クローズアップされ、強調され、またそれは当然な面もあるわけでございますけれども、我々の食生活に多大な影響を与える、また日本の農業の根本の政策転換にかかわる農業合意が入っておるわけでございますので、そういう意味でWTOというのはお米の問題なんだというふうな認識があるわけでございます。
 また、私の出身の大阪の方でも、大阪は比較的都市の比率が高い地域でございますけれども、そこの大手の新聞の社会部の記者の方も、先日電話がかかってきまして、ほかの件であったわけでございますが、ちょっと今、WTOの特別委員会というのができてその委員としておるのでなかなか時間がとれないというふうなことを申しましたら、この大手の新聞の社会部の方がWTOというのは何なんですかというふうな、これは十一月の下旬の話でございまして、それほどこの永田町と一般の地方また国民とは非常にずれがあるというふうに思うわけでございます。ただ、内容的には大変大きな影響を与えるものであるというふうに思いますので、そういう観点から、きょうは特に総理、外務大臣等にお聞きしたいと思うわけでございます。
 衆議院の審議におきましても五十時間近い審議が行われたわけでございますが、その八割方はやっぱり農業問題であったというふうに思うわけでございます。そういうことに隠れまして、農業の問題は痛みを伴う問題でございますので、どうしてもマイナスイメージでWTOをとらえてしまうという面があるのではないか。そうではない、これは大変積極的意義があるんだということをきょうは外務大臣、通産大臣、また首相からもお話があったわけでございます。
 このWTO、いわゆる世界貿易機構、これは戦後世界の経済復興の担い手として構想されたわけでございますが、なかなかこれが実現しなくて、やっと今回、世界初の国際貿易組織として結実したという、そういうものでございますけれども、このWTO協定の積極的な意義、このプラス面を特に総理にお聞きしたいと思うわけでございます。何度も朝からも、また衆議院の方でもこのWTO協定の意義につきましてお話しされておるわけでございますが、なかなか積極的なアピールという面ではちょっと弱かったのではないか。これぞ大変な意義があるんだぞということを、農業問題の痛みの陰に隠れてかすんでしまっている面があるというふうに思いますもので、それを確認したいと思うわけでございます。
 このWTO協定は、七年七カ月というウルグアイから始まったロングランの貿易ルール交渉を経て今回でき上がったものであるわけでございますが、このウルグアイ・ラウンドの提唱者は実は日本である、特に中曽根総理のときであったということでございまして、この七年にわたる交渉にやはり一貫して政府の方でも取り組み、ある意味ではリードしてきたのではないかというふうに思うわけでございます。そういう意味で、国民にわかりやすく今回の協定の積極的な意義を、もしこれ失敗していたら大変な損失になったのではないかということも含めまして、村山総理に国民の方に目を向けた答弁をお願いしたい、このように思います。


○国務大臣(村山富市君) きょう、もう午前中からの質疑の中で、WTO協定を締結することが我が国にどういう意義があるのか、どういう効果があるのかといったようなことに対する質疑も行われておりますので、おおよそもう皆さん方には御理解をいただいたんではないかというふうに思いますが、さっきお話もございましたように、今度の協定は単に鉱工業品の関税引き下げや農業分野だけではなくて、新たな分野として知的所有権や金融、運輸などのサービス貿易分野を含んでおるということは大きな前進でありまするし、同時にまた、最終的には百二十五の国や地域が参加して七年にわたって、お話もございましたように包括的かつ、歴史的な時代考証の結果として妥結を合意されたものでありまして、その意義は大変大きいものがあると私は思います。
 この協定の締結は、午前中からもずっと議論されておりますように、多角的な自由貿易体制の維持あるいは強化といった面もある反面、国際経済秩序を、言うならば貿易のルールをどう確立していくかということについても大変な前進を見たし、その意味から申し上げますと、国際経済全体の秩序に対する信頼が高まっていくんではないかというふうに思います。そうした全体の動向の中で、貿易立国である我が国にとっては、先ほど我が国が提唱したというふうな話もございましたけれども、それだけに大きな意義があるんではないか。
 ただ、その反面、農業問題等を抱えた我が国にとっては大変厳しいものもあるわけですから、その厳しい問題については国内問題として十分万全の対策を講じていくということはもちろん大事なことでありますけれども、全体としては大変大きな意義がもたらされるものだというふうに認識をいたしております。


○山下栄一君 ちょっとどうしても答弁の中身が同じように繰り返しになるわけでございますが、特に今、最後の方で総理がおっしゃった国民生活への具体的な影響、どのように具体的に国民生活に影響があるのかという、これが一番大事なことであるのではないかなと思います。例えば、消費者という観点から国民をとらえましたら、今回の協定は、人、物、サービス、権利と、本当に衣食住を含めまして、レジャーも含めてさまざまな国民の生活にかかわってくる、そういうことでございます。そういう意味で消費者の選択の幅が今回の設立協定によりまして、また合意によりまして広がるのではないかという、そういう一面があると思うわけでございます。
 また次に関税引き下げ。日本は大分低くなってきておるわけでございますけれども、この関税引き下げにより国内価格が低くなるという、そういう面もあると思うわけでございます。これも非常に国民にとって関心の高い問題ではないかなと思うわけでございます。
 それと、今おっしゃった食品安全基準の問題でございまして、特に日本の基準が国際基準よりも高いということから、この国際基準に合わせますと国民の健康、安全に大変な影響を与える、そういうことでも今回の協定は国民の生活に大変かかわりがある。
 また、物だけじゃないということから、第一次産業、第二次産業、そして第三次産業まで網羅するそういう中身を持っておるということから、全産業に影響を与えるということは、それを通して雇用の面、これもプラス面、マイナス面、そういう形で国民生活に影響を与えていくのではないか、このように思うわけでございます。
 そういう国民生活への影響ということを国会の議論を通して浮かび上がらせていくということがやはり重要なのではないかというふうに思いますもので、ちょっとかけ離れた議論にならないように、そういうことを国民生活への具体的な影響で多大な影響があるということを総理のお口からもテレビを通してアピールしていただきたい、このように思います。お願いします。


○国務大臣(村山富市君) 具体的に数字を挙げてどういう影響があるかということについて今ここで申し上げるだけの資料を持っておりませんけれども、しかし貿易が拡大されていくということは、輸出もふえるだろうし、同時に今お話がございましたように、関税が引き下げられるということになれば安く物が入ってくるということにもなるわけでありますから、したがって輸出がふえるだけではなくて輸入ももちろんふえてくるだろうというふうに思います。そんな意味では、消費者の選択の幅も広がっていくのではないかと思いまするし、価格の面においてもいろんな意味で影響が出てくるのではないかというふうに思いますから、そんな面では大変なプラスが出てくるのではないかというふうに思います。
 あるいはまた、さっき言いましたように農業問題等については深刻な問題もまた反面抱えておりますし、また産業の空洞化とかいろんな面が言われているだけに、そういう問題に対してどういう影響を与えていくのか。あるいは雇用問題については、これは新しい分野を開拓して貿易の拡大を図っていくというようなこともこれからやっぱりつくっていかなきゃならぬと思いまするし、そんな面では新しい雇用の場も創出されていくというふうに思いますから、言うならばこれが国民の暮らしにとってプラスに展開されていくような国内対策というものを十分これから考えていく必要があるということは申し上げるまでもないと私は思います。


○山下栄一君 今、具体的な数字というお話がございましたけれども、ガットの事務局とかまたOECDのデータ等もきょう朝から披露されておりますが、これは国際機関のデータでございまして、影響がいかに大きいかという観点から考えますと、経済効果の試算、これはやはり政府としておつくりになる必要があるのではないか。
 今回の審議を行うに当たりまして、やはりそういう試算も、産業の面、また経済効果、GNPをどれだけ押し上げるのか、貿易量がどれだけふえていくのかというふうなことも含めまして、試算はしっかり用意するべきではないかなと、こういうふうに思いますので、その観点からでございますが、要するにマクロの観点から我が国への経済増大効果といいますか、これがどれほどあるのかということでございます。
 通産大臣にお聞きしたいと思うのでございますけれども、きょうの朝の議論で大臣の方から国内産業への影響、これは確かにある、プラス面、マイナス面両方あると、ただ産業分野によって異なるんだ、全体としてはだけれども好ましい効果があると、このようにおっしゃったわけでございますけれども、産業政策を今日まで進めてこられて、日本の産業の今日をつくり上げたのは通産省の力が大変大きいという、そういうことから考えまして、今回の膨大な内容を含むWTOの協定、これが我が国の産業にどのような影響を与えるのか、経済効果があるのかという、プラス面マイナス面を含めまして産業別のそういうふうな試算等ございましたらお示し願いたい、このように思います。


○国務大臣(橋本龍太郎君) 産業別の試算と申し上げるようなものは我々として、委員の御指摘でありますけれども、準備をいたしておりません。ですから、その点はどうぞお許しをいただきたいと存じます。
 そして、午前中に申し上げたことの繰り返しになりますが、ガット事務局が先月、二〇〇五年時点における効果というものを五兆一千億ドルという試算をいたしたわけでありますが、その中で、日本に対しては二百六十七億ドルの所得拡大効果があるという試算がなされておるということでございます。
 個別の分野につきましては、残念ですが、我々そうした試算を用意しておりません。


○山下栄一君 今、大臣も何度も示しておられるわけでございますけれども、ガット事務局の二〇〇五年時点における、これはGNPでしたでしょうかGDPでしたですかね、二百六十七億ドル。だから三兆円近いそういう所得の増大効果があるということでございます。
 これは先ほど申しました国際機関の話でございまして、きょう朝からも議論がありますように、第一次産業、農業以外にも、例えば繊維産業にも大変大きな影響がある、皮革産業もそうだと、中小企業にも大変な大きな影響があるんだと、それだけではなくてやはり新しいビジネスチャンスの拡大の効果もあるんだという、そういう御指摘も通産大臣からあったわけでございます。
 やはり国民が一番知りたいのは、この協定を通して具体的に我が産業にどのような影響があるのかという、まだこれから始まるわけでございますので確かに具体的な数値はこれからであるわけでございますが、少なくとも試算ぐらいはやはり出すべきなのではないかと、このように思うわけでございますが、この点いかがでしょうか。


○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、経済企画庁長官にも確認をさせていただきましたが、そうした試算を行っておられないということでありまして、お許しをいただきたいと存じます。


○山下栄一君 国際組織が具体的な、それは試算でございますので、出しておるわけでございますから、日本の政府も出してないことは僕はないんじゃないかなと思うわけでございますけれども、なかなか公表できないということかもわかりません。
 今ちょっと触れられました経済企画庁にお聞きいたしますけれども、このOECDの試算とかガット事務局の試算を企画庁としてはどのように評価されておられますか。


○国務大臣(高村正彦君) 定量的な試算が極めて難しいということで、今、経済企画庁としては試算をしていないわけでありますが、ガット事務局でも二つばかりの試算をして、そしてOECDでも試算をして、ちょっと前提条件が違うとそれが全然違う結果が出ているということで、それなりの意味はあると思いますが、その一つの試算に決定的な意味を持たせ得るものではないと、こういうふうに考えているわけであります。


○山下栄一君 ひとつ別の観点から御質問したいと思うわけでございますが、きょう朝、同僚議員からもお話ございましたけれども、WTOの事務局の体制の問題です。
 ガット事務局には五百人近い専門員、事務職員がいらっしゃるというふうにお聞きしておりますが、日本は一人とか二人という数であるというお話がございましたが、日本の置かれた世界の中における経済的な立場を考えますと、やはり事務局の体制にも積極的にかかわっていく必要があると。特に、初代の事務局長の人事の問題につきましても、衆議院でも話題になっておりましたが、ガットの方は、ダンケルさんとかサザーランドさんとかほかの方も含めまして初代から五代目までどちらかといいますと官僚の方が多かったのではないか、このように思うわけでございます。
 今回のWTOの初代事務局長は、これはもう極めて重要な国際貿易に関する調整役とか、ある意味じゃ推進役になる立場であろうと思うわけでございますけれども、今回はお役人じゃなくて政治家の方が、それも大物政治家が立候補されておる、メキシコ、イタリア、韓国と。だけれども、日本はそこにはまだ立候補の余地があるんじゃないかと思うんですけれども、そういう気持ちはないという答弁を外務大臣はおっしゃっておりました。それよりも韓国の方を支持するんだと、こういうふうな方向でございましたですけれども。なぜそんなに遠慮されるのかなと思うんですけれども、人がおらないのかなというふうなこと。いろいろそれにかなった方もいらっしゃるというふうに私は思うわけでございます。
 日本の政治家で英語とかそういう語学の達者な方で私はいらっしゃらないはずはないと、このように思うわけでございまして、今からでも遅くないというふうに思いますので、外務省といたしまして、また日本の政府として積極的な大きな役割を担う、また初代という重みを考えまして、初代事務局長への立候補、河野外務大臣もその候補者の一人ではないかと私は思うわけでございますけれども、その辺の決意を、お気持ちをお聞きしたいと思うわけでございます。


○国務大臣(河野洋平君) 国際機関の長といいますか事務局長は、各国それぞれいろいろな人材を擁して立候補し、あるいは推薦をし合うということが多うございます。
 御案内のとおり、日本でもWHOの事務局長に中島氏、あるいはUNHCRに緒方さん、こういった方々がその立派な国際機関のリーダーとして業績を残しておられます。そういう意味からも、国際社会の中で我が国の人材は十分通用するし、高い評価を受けているということがございます。
 そこで、問題はWTOの事務局長人事についてでございますが、これは、今、議員が御指摘のように、今三人の候補者が世上うわさをされているわけでございます。イタリーのルジェロ氏、メキシコのサリナス氏、前の大統領でございますが、そして韓国の金侮氏と三人の候補者が今それぞれ支持を得るために努力をしておられます。
 我が国も実はこのWTOの事務局長人事に関心が大いにあったわけでございますが、九月でしたか、あるいはもう少し早い時期かもわかりませんが、韓国から金侮氏をWTOの事務局長に推薦をしたい、ついては日本からも支持を願えないかという打診がございまして、我が国としても種々検討をいたしましたが、重要な隣国、韓国から、金侮氏は国際的にこの種の経験が非常に豊富な方でもございます、立派な候補者だと考えて金侮氏を支持することを政府部内で決定をいたしまして、韓国にその旨通報をしたという経過がございます。
 したがいまして、今から日本がこの問題について候補者を出す、現在の状況の中で候補者を出すということは現在考えておりません。


○山下栄一君 もう時間が来ましたので、特に農業問題につきましても一言質問したかったわけでございますが、一般質疑に譲りたいと思います。
 残余の時間につきましては、関連質問という形で浜四津議員の方にお願いしたいと思います。

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