142国会 文教・科学委員会会議録 1998年02月05日
○山下栄一君 公明の山下でございます。
まず私は、財源確保のためのスポーツ振興くじ導入の前提の話をきょうは少し提案者の方また文部省にお聞きしたいと、このように思うわけでございます。
スポーツの振興は極めて重要であり、またスポーツ議連が中心となって今日まで取り組んでまいりましたスポーツ振興くじ法案の理念、非常にすばらしいと私も思うわけでございますけれども、国会の場におきましてスポーツ振興のこういう議論というのがそんなに今まで行われてきたのかなということもございます。また、各地域におきましてもそういうニーズというのはそんなに高まってきているようにも私思っておらないというふうに思うわけです。
それで、日本の国の歴史的、文化的伝統の中でのスポーツの位置づけですけれども、そんなに高くなかったと。提案者の方は、このような日本のスポーツと生活という観点から現状をどのようにとらえておられるのかなということをまずお聞きしたいというふうに思います。
○衆議院議員(柳沢伯夫君) ただいま先生お話しのとおり、日本のスポーツの歴史あるいはそれを踏まえた現状というものについてはいろんな意味でゆがみがあったということは否めないと、こう思っております。
きのうもちょっと申し上げましたけれども、例えばスポーツという言葉が入ってきたときに、最初日本ではこれを狩人と訳すのかというようなお話もあったようでございます。つまり、スポーツには気晴らしという意味が非常に強いものですから、狩人もおかしいなというようなことでスポーツの訳語が決定せずに、スポーツがスポーツという言葉で定着をしていったと、こういうことのようでございます。
しかし、日本では富国強兵というような考え方がありまして、体育増進というような国家的な要請もありまして、これがスポーツという言葉のいわば概念の一つの分野であったわけですけれども、いつの間にかこれがほとんど肥大化していって、スポーツイコール体育増進あるいは体力向上というようなことになったといういきさつがあったようでございます。したがって、それはすべからく学校教育というようなことに結びついていった。
ところが、最近における都市化あるいは生活の利便化、余暇時間の増大、所得水準の向上、高齢化社会の進展といったような状況の推移に伴いまして、やはり国民の健康、体力に関する関心が高まってきまして、スポーツというものがようやく本来の意味でのスポーツとして受けとめる素地ができてきた、こういうように認められておるようでございます。特にその点は女性において目覚ましい状況になっておる。これは例えば、家庭婦人バレーボールの練習がかなり夜遅くまでそれぞれの地域の体育館の明かりがともって行われているというようなことにもあらわれているというように思います。
そこで、実は戦後西ドイツがゴールデンプランというものをつくりまして、スポーツ・フォー・オール、すべての人にスポーツをということでゴールデンプランという大々的な国家的計画を立てました。そして、各地域にスポーツのクラブを置いて今のスポーツ・フォー・オールを実現していった、こういういきさつがございます。
そのときに、我々の党で、最近議員を辞職されました西岡先生がこの構想に非常に早くから着眼しまして、同じような日本でのスポーツ・フォー・オール構想、あるいは日本版ゴールデンプラン構想というものの実現を図ろうとしてかなり積極的に動かれたといういきさつもあったようでございますけれども、やはり財源の壁というか、そういうものに当たってこれが成功を見なかったといういきさつがございます。
そういうようなことで、Jリーグが発足するときに、我々としても今までのそういういきさつというものを考えましたときに、同じようなことが日本でも考えられないだろうか、そしてそこでいわばスポーツ愛好者が寄附をすることによって、今言ったスポーツ・フォー・オールの施設整備あるいはソフトの支援といったようなものにそういう浄財を使うというシステムを我々のスポーツ愛好者の中でつくれないか、こういうようなことで、もちろんそれだけですべてができるというわけではありませんけれども、その大きな柱になり得るんではないか。
こういうようなことで今回の構想に結びついていったというのが、今日の日本のスポーツ界あるいはスポーツに対する我々政治の取り組み、あるいは関心のあり方と今回のこのスポーツ振興投票法が出てきた経緯であるということで御理解を賜ればと思う次第であります。
○山下栄一君 学校、企業中心のスポーツから地域スポーツの振興へというその理念はすばらしいというように思っているわけです。ただ、それを行政主導型でやるのはよくない、こういう考え方に私立っておりまして、地域におけるコミュニティーづくりの重要性みたいなものは叫ばれているわけですけれども基盤がない、そんな状況の中でまた今議論されていることは行政主導型になりはしないかと、こういう私は心配があるわけでございます。
学校におきましても少子化とともに教師が高齢化し、運動クラブ担当の先生も少なくなってきている。子供も集まらない、チームが編成できない、運動クラブの廃部が多くなってきているという実情がある。不景気のために企業スポーツも、最近も報道されていますように、建設会社またさまざまな会社が実業団チームを持っていたけれども、それも廃部に追い込まれているような状況になっている。
そういう意味から考えますと、地域における取り組みというのは非常に重要であると。大人が連帯して子供にかかわるという場の必要性も、最近のさまざまな青少年の凶悪事件の増加等にもよりまして地域の教育力ということも非常に求められている。しかし、その地域の連帯感というのは、まだまだ企業、学校中心の日本のライフスタイルの状況の中でなかなか定着しない。そういう現実の中で、非営利の、住民主体のスポーツ振興の取り組みも余りないままに行政主導型で、そういうのが必要だから財源確保せにゃいかぬというふうなことになっているのは本末転倒であると、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
国や地方自治体の今までスポーツ振興法に基づく体制づくり、また最近、文部大臣認定のスポーツ指導者の資格等も始まったわけでございますけれども、マンパワーの観点から私ちょっと取り上げたいと思うんです。スポーツ指導者として活躍されている実情について、地域の取り組み、国の取り組みについてお伺いしたいというふうに思います。
○政府委員(工藤智規君) スポーツの指導者につきましては、御承知のように、かねがね各スポーツ団体が自主的にいろいろな養成、研修等を行ってきているわけでございますが、たまたま十年ほど前になりましょうか、昭和六十二年に文部大臣の認定制度をつくってございます。
これは、各スポーツ団体からの御要請を受けまして、それぞれのスポーツ団体で多様に行われているのは結構なのでございますけれども、全体としての養成水準の向上を図るためにそういう認定制度が必要であるということから、私ども御要請を受けましてそういう制度を設けてございます。
その概要は、スポーツ団体が自主的に行うスポーツ指導者の養成事業のうち、一定の水準を備えたものを認定いたしましてそれぞれの団体が養成事業を行うわけでございますが、団体が行う事業に参加されて、定められた講習等を受けながら指導者としての認定を受けられるということでございます。日本体育協会でございますとかあるいは水泳連盟、テニス協会等々、競技団体四十八団体がこれまでに養成されました指導者というのが約七万九千人に上っているところでございます。
他方、その活用状況ということでございますけれども、それぞれ自主的に行っている事業でございますし、修了者の方々の就職状況まで私どもも十分把握していないのでございますが、それぞれの地方公共団体のスポーツ担当者でございますとかあるいは体育指導委員、それから民間や公共スポーツ施設の指導者、あるいは地域のスポーツクラブの指導者、いろいろな形で中核的な指導の任に当たっておられると承知しておりますが、若干断片的に申し上げますと、高校以下の教員でそういう資格を得ておられる方が約八千五百人、それから市町村の生涯スポーツ担当職員の中で得ておられる方というのが、総数が一万七千人ぐらいのうち千二百人ぐらいでございますから、市町村の担当者の中ではパイとしては七%ぐらいの状況でございます。
それから体育指導委員、これは各市町村に置かれておられるボランティアの方々でございますが、全国で六万人余りいらっしゃいます中で五・二%ぐらいの方々がそういう資格を得ておられるというふうに承知しているところでございます。
○山下栄一君 先ほど柳沢提案者が、日本の場合はスポーツ振興、スポーツの生活とのかかわりの中でゆがみがあったということをおっしゃっていましたけれども、私もそう思っておりまして、今も体育局長からお話がございましたけれども、例えば体育指導委員という方が市町村に任期二年で非常勤でスポーツ振興法に基づいていらっしゃるわけですけれども、何をされているのか、実情を文部省は御存じなのかなというふうに思っております。提案者の方も御存じなのかなと。
日常的な、どのようにして運動施設を利用したらいいのかとか、また健康とのかかわりの中で具体的なアドバイスをしていただきたい、そんなふうな役割なのかと思いましたら、実態はそうじゃないと。現実は、スポーツ行事の来賓みたいな形で参加されているのが体育指導委員である、年輩の方も多いと。そういう形だけの体制づくりはある。昭和三十六年以来、今も何万人とおっしゃいました。
また、文部大臣が認定されているさまざまな指導者の資格もあるわけですけれども、これが、地域において資格のある方が活躍できる場の保証とか、また、そういう方々がふえていくための体制がどれだけ整備されているかということを考えましたときに、非常に貧弱な体制であると。受講料も高いし、実際受講するための場所も、遠いところへ行かないと資格が取れないというような状況もあるというふうなことを考えましたときに、形だけのスポーツ振興をやってきたけれども、本当に地域の住民のために資するようなそんな状況になっていない。
そういう状況の中で今回、理想はすばらしいわけですけれども、地域スポーツの基盤整備をやっていきたいと言ったところで、僕は、それはまた同じような行政主導型の、住民との乖離のあるままのスポーツ振興になってしまうのではないか、こういうことを大変危惧しております。
文部大臣認定のスポーツ指導者の話もそうなんですけれども、総理府の世論調査でも、国、自治体の方に住民の皆さんがスポーツ振興のためにどういう要望をするか、第一位はスポーツ指導者がきちっと機能してほしい、もっとふやしてほしいということが出てきているわけです。私が先ほど申し上げましたような、国とか自治体が役職をつくり資格を与えているけれども機能していないという実情について、提案者の方はどういうふうにお考えでしょうか。
○衆議院議員(柳沢伯夫君) ちょっと私の名前も今回の質問で出ましたのでお答えするんですが、私がゆがみと言ったのは、やはり日本のスポーツがスポーツとしてそのままうまいこと全体として輸入されたのではなくて、富国強兵と結びついて体力増進、それとまたさらにそれが結びついて学校体育というような形で受容されてきた、これはやっぱりゆがみだったのではないか、こういうことをそういう表現でさせていただいたということをまずもう一度申し上げておきたい、このように思います。
それから今、山下先生、官製のスポーツ指導者なものですから、本当の意味で地域スポーツの指導者として根づいていないのではないかというお話でございます。これは私は、一面当たっていると思いますし、一面、山下先生のお地元での御経験はどうだろうかというふうにいぶかる気持ちも正直言って持ちました。
と申しますのは、私の地元では大変体育指導委員も活動しておるし、また体育指導委員というような公式の資格を持たなくても、例えば小学校六年生以下の人たちにバスケットを教える、これはミニバスケットとかポートホールとかというようなことを言うわけですけれども、親と一緒になってやっていますけれども、親の前で子供たちを叱咤激励して一生懸命教えているというような人たちがおります。私はその大会を主催しておりましたのでその状況をよく知っているんです。
そういうようなことで、これは確かに公式の大会の役員になる程度で終わっているというような面もありますけれども、スポーツ指導者あるいはその下のレベルぐらいの人たちが一生懸命地域のスポーツの振興のために汗を流しているということも全国的に言ってもかなりの規模ある、これはやっぱり認めてかからなきゃいけないのではないか、私はこのように思います。
そして、我々がこれからこのスポーツ振興くじでもってやろうとしていることは、さらにそういう地域のスポーツのクラブを振興していこう、これは官製のものでなくていいと。今ちょうど河村先生ここに答弁者としておりません。それはなぜいないかというと、NPO法案の方に行っているんですが、例えば我々はスポーツクラブをNPOの一つとして位置づけられないか、こういうようなことすら考えておるわけでございます。これは文部省とは関係ありません。正直言って、文部省はどう思われるか知りませんが、我々はそのくらいのところを思っておるということであります。
ちょっと私機会がないとあれなんですが、今非常に著名人になっておりますサッカー日本代表の監督岡田武史さんが、なぜサッカーの世界に戻ってきたかということをことしの一月五日の日経の、「マンデーニッケイ」の「じんじロジー」という欄で言っておりますが、彼は「コーチ留学したドイツで、休日に人々が思い思いのスポーツで汗を流す、地域に根差したスポーツクラブの実際の姿に接した。」。もう一度サッカーを通じてこういう地域スポーツクラブの振興、そして国民が本当に休日あるいは余暇を楽しむためのスポーツの振興に自分が力になれたらいい、こういうようなことで彼はサッカーに戻ってきて、彼は嫌々ながらサッカーを続けていたそうですけれども、ついにワールドカップの監督にまでなってしまった。なったそのスタートは、そういう彼のドイツ留学において経験した、見聞きしたドイツのスポーツ、先ほど言ったゴールデンプランがどれだけ普及したかという実態に基づいているということも申し上げておきたいと思います。そう我々はいたしたいのであります。
○山下栄一君 いたしたいのはよくわかっているんですけれども、文部省の取り組みの中に総合型地域スポーツクラブ育成モデル事業ですか、これが平成八年から始まった。こういうモデル事業にあちこちから、自治体主導型じゃなくて、もちろん自治体を通さにゃいけないかもわからないけれども、自治体にそういうモデル事業として認定してもらいたいという住民からの要望がどんどん広がっているというふうなものがないとこの構想は行政主導型になってしまう。
今おっしゃった、非営利のNPOに法人格を与えて、その団体には寄附の税額控除もしてあげるというふうな形で広がっていくということがまずないと、財源確保というようなことはまだまだ議論がそこまでいかないのではないのかなと。国会でもこういうスポーツ振興のための議論がほとんど今まで行われてこなかった、そういう状況もあるわけでございますから、全国的なそういう住民ニーズの高まりといいますか、これが先行しないと私はまずいのではないかということを強く危惧するわけです。
保体審議会の答申にも、スポーツ健康推進会議、こういうのを地域の住民の自発的な主体的な活動としてやっていったらどうかというふうなことが提案されたばかりの現状なわけですね。先ほど申し上げました文部省の事業も始まったばかりだと、まだまだ手を挙げるところも少ないという現状があるというふうに思いますので先ほどから申し上げているわけです。
ちょっと時間がなくなってきましたけれども、一つだけ、先ほどの学校のクラブ活動の話なんですけれども、深刻な話ですのでちょっと具体的に文部省に御答弁をお願いしたいんです。
顧問の先生が高齢化し、土曜日、日曜日の引率もままならないという状況の中で、教員免許を持っていないいわゆる外部のスポーツ指導者、能力もあり実績もあるという方々を指導者として学校の中に応援していただくというふうなことを保体審議会でも提案しているわけですけれども、クラブ活動だけじゃなくて、保健体育の授業においてもそういう方々が主体的にかかわれるような立場を考えていったらどうかなと。
実習助手か、さまざまな形でスポーツ指導者がボランティア中心になってしまっているわけですけれども、そういう方々の活躍する場を広げるという意味でも、教員免許を持っておられないスポーツ指導者の方々をクラブの顧問、また体育科の助手という形で考えられないかということについてお願いします。
○委員長(大島慶久君) 持ち時間を超過しておりますので、簡単明瞭にお答えをいただきたいと思います。
○政府委員(工藤智規君) 御指摘のような観点は大事なことだと感じております。
それで、既に部活動等の指導には外部の方々の御協力も得ながら随分参画していただいているわけでございますが、正規の授業へのそういう学校の教員以外の社会人の参画ということにつきましては、御承知のとおり、既に特別免許状制度あるいは特別非常勤講師制度というものが設けられてございまして、お呼びできるような形になっているのでございます。
ただ、それぞれの地域あるいは学校の取り組み姿勢によって違うのでございますが、いい意味でも悪い意味でも、学校の先生方あるいは校長先生を初めとしてどうも責任感が強過ぎる部分がございまして、外へ頼むよりは自分たちでできるだけやろうということから、なかなか輪が広がっていない部分もございます。今やそういうことも言っておれませんので、子供たちを取り巻くいろいろな関係者が手をとり合って相連携しながら、授業でも授業以外の教育活動の場でも御指導に当たっていく必要があるんじゃないかと、御指摘のようなことを考えてございます。