145国会 文教・科学委員会会議録 1999年03月30日
○山下栄一君 まず、振興会法一部改正にかかわる質問をさせていただきたいと思います。
平成九年十二月二十六日に特殊法人等の整理合理化第三次分の閣議決定が行われておりますが、この中に共通事項として、業務量を減らしていくというか、事業の減量化に努めるという項目がございます。もう一つ、職員定数、これについても十年間で一〇%削減する。これは日本学術振興会も例外じゃない、このように思いますが、特に事業の減量化についてはスクラップ・アンド・ビルド、この考え方に基づいて減量化に努めるということなんですが、今回の法改正はこれに反するのではないかと。業務の減量化と職員定数の問題について御答弁をお願いします。
○政府委員(工藤智規君) これまでも学術振興会の体制につきましては毎年見直ししながらそのあり方を探ってきたところでございまして、定員削減というのも、国家公務員の定員削減に合わせて特殊法人の職員の削減計画という原則があるわけでございまして、残念ながら学術振興会についても計画的な定員削減を行ってまいってきております。
ですが、他方で、先生御存じのように、国家公務員の定員削減もただ機械的に減らすということではなくて、一定の定員削減をしながら、行政需要の消長に応じて、必要なところには必要な体制整備を図るというのが行政のやり方でございまして、この学術振興会についても、一方で定員削減をしながらも、業務の必要性に応じて若干の整備をさせていただいてきているところでございます。
また、業務につきましても、今回いろんな業務の見直しの一環といたしまして、従来学術振興会で行っておりました特許関係の業務につきまして、これをいずれ一緒になる省庁でございます科学技術庁所管の科学技術振興事業団の方に移管するなどしながら、より密接な連携協力を図って体制整備の見直しを図ったところでございます。
○山下栄一君 科研費補助金、基礎研究をさらに充実させていくために、この関連の費用をふやすこと、また研究者を養成することは大賛成でございますが、なぜそれが学術振興会でなきゃならないのかということでございます。
特に、基本的な疑問といたしまして、補助金を分配する、こういう仕事をなぜ特殊法人がするのか。基本的な素朴な疑問でございますが、最近そういう例は久しくないのではないか。特殊法人に補助金を分配させる例はほかにもあるけれども、二十何年間ほどなかったんじゃないかなと思いますが、この点いかがでしょうか。
○政府委員(工藤智規君) 特殊法人で補助金の配分を行っている事例というのは多々ございまして……
○山下栄一君 多々ない。
○政府委員(工藤智規君) 三つ以上は多々とも言うのかもしれませんが、失礼しました。少なくとも文部省で申し上げますと、日本私立学校振興・共済事業団、ここで私立大学等の経常費補助金を配分しているわけでございます。
もともとこの日本学術振興会というのは昭和七年に各界の御支援、御協力を得て財団法人として発足したものでございます。時の各界の勢いは相当なものでございまして、会長に総理大臣が御就任になり、理事長には当時の帝国学士院院長が御就任になるなど、科学界挙げての財団法人でございました。その当時は、実は天皇陛下の御下賜金なども元にしながら研究助成を行っていたのでございます。
○山下栄一君 局長、時間がないから簡潔に頼みます。
○政府委員(工藤智規君) 今回はこういういろいろございますけれども、海外の対応機関との関係も考えまして、アメリカのNSFなどがそうでございますけれども、国際交流事業、それから若手の研究者育成事業にあわせて研究助成事業を行うことによって、学術振興のより機能強化を図らせていただこうというものなのでございます。
○山下栄一君 総務庁にもお聞きして、補助金を分配することを特殊法人がやるという例は五つあるらしいんです。四つの省庁で五つの特殊法人。久しくなかったんですよ、これは。
僕は、学術振興会は伝統のある特殊法人、もともと財団だったということでございますので、別に信用しないわけではないけれども、基本的に特殊法人に対する不信感が国民にあると。
それで、そのために整理合理化ということを閣議決定もしているわけですから、その補助金というものを分配する仕事を実際やるのは、学術振興会がやるのではなくて、審査したりするのは専門家である学術審議会のメンバーがやる、名前を変えて審査会にするのか知りませんけれども、そういうことだと思うんですよ。だから、仕事がふえたから本省からよそに移すという考え方ではおかしいと思うし、余り説得力ないなというふうなことを思うんですね。
それで、この法案の提案理由の中にも、さらに効率的・効果的で適切な配分を図りたい、審査・評価の充実や研究者へのサービスの向上を図りたいんだと言っているけれども、じゃ、今まではそういうことをやってこなかったのかということにもなるわけですね。そういうことになって、だから余計ひどくなる可能性もあるんだということも考えられると、特殊法人に対する不信感からですよ。学術振興会を信用しないわけではないけれども、そういう国民的な疑問についてどう答えるんだと。メンバーは別に新たに振興会でやるわけではないわけですから、この点いかがですか。
○国務大臣(有馬朗人君) 二点ほどお答えしたいと思います。
まず、特殊法人が研究費を配分したことがないかということでございますが、最近、出資金というのができました。今度は二百五十億ですか、日本学術振興会に二百五十億円ぐらいのお金が行っておりますし、また、科学技術庁に属する科学技術振興事業団の方にも三百億ぐらいのお金が行っておりまして、特殊法人ですから出資ができる。そこの出資金によってさまざまな新しい技術開発などにお金を出すようにこの数年なっております。そういう意味で、もう既に研究費を特殊法人が分けているということを申し上げておきます。
それからもう一つの点は、特殊法人で分けるということになりましても、科学技術振興事業団でありますとそこに一つの審査会がつくられます。それからまた、多分同じように学術振興会におきましても、今までの学術審議会がやっていたようなメンバーで同じく審議会が、審議会とは言いませんけれども、そういう委員会がつくられまして、そこでどういうふうに分けるかを決めることになると思います。そういう点では矛盾はないのであると思います。
ただ、私が心配をしていたことがむしろ逆にある。それはなぜかというと、この十年間で科学研究費の予算が二・五倍に伸びていった。それを、今までの文部省の中にあります一局の下にある一課ぐらいではとてもできない。ですから、私は一方ではありがたいと思いながら、一方では大変だなと思っておりました。
そういう意味で、今度これが学術振興会に移され、しかるべきマンパワーの上での手当てがされれば、今までよりも効率よく審議もでき、そしてまた研究者に対するサービスも行われるようになるのではないかと判断をしております。
○山下栄一君 ちょっと角度は違いますけれども、私は、科学研究費補助金という名前、これはもうやめたらどうかなと思うんです。特別研究員の方々に対する研究奨励金として今までやってこられていると。だから、これも科学研究費奨励金か何かという名前にしないと、補助金ということをやると何か非常に悪いイメージもありますし、ちょっとこれも考えたらどうかなということを思います。
それと、将来的には科学技術振興事業団とも合併するとか、先の話で申しわけないけれども、そんなことも考えられるんじゃないかと。例えば研究者の交流とか研究者に対する財政的な支援とかいうことは科学技術振興事業団もやっているわけだから、重複している部分もあるし、それが行革の観点からもどうかなというようなこと。
以上二点、お願いします。
○政府委員(工藤智規君) 科学研究費補助金という名称につきましては、従来定着しておりました中で、私どもごく抵抗なく使用させていただいてございます。
例えば、アメリカの場合はNSFというところが中心になってやっているグラントがございます。また、イギリスの場合もリサーチカウンシルからのグラントがございますが、それをどう訳すか。助成金と訳される場合が多いのでございますけれども、私ども、予算の仕組みでいえば補助金適化法の対象になる補助金であろうかと理解しておるわけでございますけれども、先生の御指摘の示唆も含めまして検討させていただきたいと思っております。
また、将来の科学技術振興事業団との関係でございますけれども、日本学術振興会というのは基礎研究の中心である大学関係の研究者のバックアップをしている機関でございまして、基礎研究の中心は何といいましてもボトムアップの研究者の自発性、創造性を基礎にした研究でございます。
他方で、科学技術振興事業団は、大学関係ではなくて、国立試験研究機関等を主として対象とした助成・振興機関としての役割を果たしているほかに、以前のJICSTと言われております科学技術情報関係のお仕事をしているなど、若干重なる部分もあるように見えますけれども、その機能あるいは成り立ち、性格等からしてかなり違っている部分がございます。
私ども、今後の学術あるいは科学技術の振興を考えますときに、基本的には大学のボトムアップ型の研究手法というのは、あくまでもどういう形になっても大事にしなきゃいけないという考えでおりますので、その辺を兼ね合いながら今後さらに検討するべき課題ではないかと思っております。
○山下栄一君 大臣も今兼任されていますし、将来そういう方向ですしね、科学技術庁と文部省は。
話は変わりまして、奨学金の話をちょっとさせていただきたいと思います。
平成十一年度、もうすぐ四月でございますが、特に日本育英会の事業の中の有利子の奨学金が抜本的に拡充されると。その中で私は画期的だと思いますのは、成績要件を実質上撤廃するというこの考え方は、これは有利子に限っているわけでございますけれども、非常に時代に合った考え方であるというふうに考えます。
と申しますのも、日本育英会の前身は大日本育英会、昭和十九年にできた。そして、一部のエリート、英才を育てるまさに育英という考え方から来ているというふうに思うんです。
ただ、その英才の考え方そのものが非常に古い考え方で、見直しされないままに日本育英会となり、それが成績要件という形につながっていったのではないかなというふうに思うわけです。画一的な成績評価、数値に置きかえて、三・五以上とか二・五以上とか言っているわけだから。
僕は、そういう考え方を見直すことが、偏差値中心とか知識に偏っているとかいう考え方をもうとらないんだということにつながっていくのではないか。この育英会という言葉に、物すごい古い体質が今も残っているということを感じさせているというか、新しい学力観と言いながら、また、総合的な学習時間を置くという精神に反するようなことを成績要件を設けながら今までやってきたこと自身が、言っていることとやっていることが違うのではないかという批判につながっていくのではないか。日本育英会という名前も変えなきゃいかぬのではないかなということにつながるのではないかというふうに考えるわけです。
この点、いかがでしょうか。
○政府委員(佐々木正峰君) ちょっと事務的に御説明させていただきたいと存じます。
御案内のように、日本育英会の事業はすぐれた人材の育成と教育の機会均等の実現を目的とするものでございまして、学資の貸与に当たりましては、学業成績がすぐれていること、経済的理由により修学が困難である、その二つの要件を必要としているわけでございます。
そのうち、学力基準につきましては、平成十一年度有利子貸与事業につきまして、成績が平均水準以上の者、または特定の分野において特に優秀な能力を有すると認められる者に加えて、勉学意欲のある者を基準として追加をいたしたところでございます。ただ、この勉学の意欲のある者というのは、これは学力基準の緩和でございまして、その意味において、現行の法律の範囲内における運用の一環として対応をいたしたものでございます。
このように、日本育英会の事業が、学力基準及び家計基準、この要件のもとに運用をいたしておるところにいわば事業の特色があるわけでございますが、この二つの要件のうちいずれに重点を置くかにつきましては、御案内のように、近年、すぐれた人材を育てるという育英の側面よりも、幅広く人材を育成するという奨学の側面を重視する方向で文部省としても予算の充実を図っておるところでございます。
○山下栄一君 英才というのをどうとらえるかということなんですけれども、大臣にお聞きしたいと思うんです。
○国務大臣(有馬朗人君) 育英ということと、それから奨学という両面が確かに奨学金の中にあるわけでありますが、やはりこのごろはどちらかというと奨学の方に重点が移っていますね。すぐれた人材を育てるという育英というよりは、幅広く人材を育成するという奨学の側面がずっと大きくなっていると思います。そして、その上で予算の充実を今図っておりますし、有利子を大幅に、十万人から二十万人ないしは二十五万人というふうなことを今図っているわけでございます。
ただ、私が思うのは、大学院あたりになりますと、これは単に奨学だけではない。もちろん学術振興会でドクターコースのための奨学金があるんですが、それプラス育英奨学会があるわけですが、ここのあたりになりますとかなり育英という側面が入ってくる。ですから、やっぱり両面あると思うんです。
ですから、どちらに重点を置くかというと、おっしゃるとおり、奨学にも今重点があると思う。しかしながら、やはり育英という面もあるぞということを申し上げておきたいと思います。残っていると思います。
○山下栄一君 僕は、貧しくておくれた時代、そういう時代もあったわけで、そのころには、そういう優秀な国家に役立つ人材をつくらなきゃいかぬという、そういうことからもともと育英事業というのは始まった歴史的な背景があるというふうに思うんです。
それで、今は少子高齢時代だと。子供をどう育てていくか、子育てが難しい。また、子育てに大変な不安があると同時に教育コストが大変かかるということもある。少子高齢時代に向けた奨学金のあり方というか、こういう抜本的な考え方、理念の考え方の変更が必要なのではないかという観点から申し上げているわけで、子供は単にお父さんお母さんの後継者、宝という観点だけではなくて、社会の宝であり、そして後継者なんだという観点から、みんなで応援をするんだ、税金を使って応援しようと。財政投融資というよりも、僕の考え方はそうなんです。そういうふうな子育て観といいますか、そういうようなことが必要ではないか。
と同時に、先ほど申しましたように、学力ということも、新しい学力観ということが今言われているわけで、一人一人の個性を大事にしようと。それは、数字で三・五以上とかであらわせるものでないものを大事にしていこうというのが新しい学力観であろうと思うし、総合的な学習時間というのも数値で評価しないということを決めているわけだから、総合的な学習時間の評価はたしかそうだと思うんです。
そうすると、学力に対する学業優秀というのは、点数であらわされることを中心に今までやってきた。成績優秀というのはどこで基準を決めるんだと、それは五段階の何点以上とかいうようなことになってくるわけで、そういう考え方そのものを変えることが今求められている。心の教育というのはそういうことなんだという観点から考えると、この育英奨学金という考え方そのものもやはり見直す時代を今迎えている。少子高齢時代の中における奨学金のあり方、これをやはり考えていくことが必要なのではないか。
日本育英会法第一条の目的に書いてある、「優れた学生」とか、「経済的理由により修学に困難があるものに対し、」とか、「国家及び社会に有為な人材の育成に資する」という、こういう考え方そのものを変えなきゃいかぬのではないかということを私は申し上げているわけです。
少子高齢化時代における奨学金、みんなで応援して、どの子も人材なんだ、能力は全部違うんだという考え方に立って支援する、そういうふうな一律的な数字であらわせないものを大事にしていこうという観点からの奨学金のあり方、これをやはりこれから検討していく必要があるのではないかというふうに思っております。
大臣の所見をお伺いしまして、終わりたいと思います。
○国務大臣(有馬朗人君) 先生の御主張はよくわかりました。しかしながら、先ほどお答え申し上げましたように、わずかかもしれないけれども、やっぱり育英の側面も残しておきたいと、私はやはり今でも思っております。
それは、非常に貧しい家の子で、しかも非常に勉強したがっている子というのはおりますね。そういう人たちは、やはり育英の面というものもあろうと思っています。もちろん奨学の面もあるわけです。
同時に、先ほど御指摘のありました、二・幾つだからいいとか、三・幾つじゃなきゃいかぬとか、こういうことは、今までのように単に筆記試験で出てきた成績とかそういうものではなく、その人が勉強していく意欲というふうなものも評価に入れて、そしてより違った側面も加味しながら、やはり有限な予算でございますので、その予算を十分うまく使うために、選び方などに工夫をさせていただくべく努力をさせていただきたいと思っております。
○山下栄一君 ありがとうございました。