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「改正教育基本法」 についての
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■4月15日 公明新聞 太田代表(幹事長代行=当時)インタビュー
■5月16日 衆議院本会議(太田昭宏質問)
■11月17日 参議院本会議(山下栄一質問)
■12月15日 参議院本会議(公明党・賛成討論 風間昶)

■公明新聞・太田代表(幹事長代行=当時)インタビュー(4/15付)

与党が最終報告/21世紀拓く教育基本法に/太田昭宏・幹事長代行に聞く 2006/04/15

個人の尊厳」「憲法の精神」など現行法の理念を堅持
前文と全18条 時代の変化に対応

 実務者で構成する与党の教育基本法改正に関する検討会が最終報告をまとめた。約3年にわたる議論を経て、政府に提出された最終報告のポイントについて、検討会メンバーの太田昭宏・党幹事長代行に聞いた。

――改めてなぜ今、基本法の改正なのですか。
太田 時代の大きな変化に対応する教育を確立するためです。教育基本法が施行された1947年当時は、小学校教育さえ受けさせられない家庭もありました。それが約60年を経て、高校への進学率は今や約97%になります。大学・短大への進学率も約5割となり、むしろ大学のあり方など質が問われるようになりました。さらに、基本法制定当時には想定されていなかった児童虐待やニート(若年無業者)・フリーターの増加、不登校や学級崩壊の問題などがあり、社会も教育現場も大きく変化しています。このため、2000年には、首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」が、基本法見直しを含む17項目を提言。中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)も改正すべきとの答申を03年3月にまとめています。そこで、法改正にあたって、拙速な判断があってはならないということで、与党で引き取り、実務者で構成する検討会で約3年にわたり、70回の議論を重ねて、今回の最終報告となりました。

――最終報告のポイントは。
太田 現行基本法の基本骨格は堅持し、時代の変化に対応した項目を盛り込んだことが最大のポイントです。「個人の尊厳」「人格の完成」など現行法の骨格となる理念や、「基本的人権の尊重」「平和主義」「国民主権」の三原則を軸とする憲法の精神は、普遍的で極めて優れたものと認識しています。前文に、教育基本法と憲法の関係を明確にする「憲法の精神にのっとり」という言葉を残したほか、骨格となる理念は堅持されました。  その上で、前文と全18条からなる最終報告では、「生命の尊重」「自然や環境との共生」の概念や、「知・徳・体」の育成、社会の形成に主体的に参画する「公共の精神」なども「教育の目標」の中で明確に反映されました。そして新たな項目として、「生涯学習の理念」「大学」「私立学校」「教員」「家庭教育」「幼児期の教育」「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」「教育振興基本計画」の8項目が加わっています。いずれも時代の変化に対応するために大変、重要な項目です。

――教育現場は変わりますか。
太田 これまでも、国民会議の提言は、法改正などで具体化されてきました。その中で、最後に残ったのが基本法の改正です。与党の最終報告では、国が教育振興基本計画を策定し、教育の方針を示す規定が盛り込まれたほか、将来の社会状況の変化に対応できるよう、義務教育は9年とする年限の規定も削除されました。「生涯学習の理念」では、あらゆる機会・場所で学習でき、成果を適切に生かせる社会がうたわれ、「大学」の項目では、「知」の世紀をリードする学術の中心として、専門性を培うこと、職業や社会とのかかわりが強調されています。教育の理念を示す基本法としては、将来の教育改革に十分対応できる、未来志向のものだと言えます。

――国家主義への回帰を懸念する声もありますが。
太田 個々人が、親や兄弟、郷土や国を愛するという感情を持つに至ることを否定するものではありませんが、法律で規定することに対しては慎重な議論が必要だと考えました。検討会の論議においても「国家主義的色彩にならない」、国の三要素である「国土」「国民」「統治機構」の中で、「統治機構を含まない」ということは、与党の共通認識となっていました。最終報告の「教育の目標」の中では、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土」とすることで、国家主義的な「ナショナリズム」ではなく、郷土といった意味合いの強い「パトリオティズム」、「ネーションステート」ではなく「カントリー」に近い表現にできたと思います。また、「他国を尊重」「国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」と続くことで、国家主義の懸念は払拭できたと認識しています。

――今後の見通しについて。 太田 法案の提出時期は、政府が判断することですが、最終報告を受け、現在、政府において法案作成作業が進められています。法案が提出されれば国会の場での論議となります。


公明新聞:2006年4月15日付

■5月16日衆議院本会議(太田昭宏質問)

164国会 衆議院本会議会議録 平成18年05月16日

太田昭宏君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました教育基本法案について質問いたします。(拍手)
 二十一世紀は人間の世紀であり、人道の世紀であります。そしてまた、二十世紀前半が領土を争う覇権の時代であり、二十世紀後半は富を争う時代であったのに対し、二十一世紀はアイデンティティー競争の時代であると識者の指摘するとおり、グローバリゼーションと歴史性の中でアイデンティティーを問う時代を迎えております。

 しかも、司馬遷が史記の中で、「国の衰亡は戦乱等によらず。人間の基本を失った時に起きる」として「本(もと)を失う」と表現したように、また、現行教育基本法がその前文において、「この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。」とあるように、我が国において今最も重要課題は人間教育にあり、教育改革にあると言えると思います。
 まさに教育の深さこそが日本社会の未来を決定づけるのであり、今こそ衰弱する社会総体の教育力を向上させなければなりません。私は、まず、教育基本法論議の前提として、二十一世紀を教育の世紀とすべく、教育改革への総理の決意を伺いたい。

 大切なのは人間教育であります。東洋の思想では、人間という概念を、一人の人間とともに、人と人との間として人間(じんかん)とあわせてとらえています。我の世界と我々の世界と表現した教育学者もおり、教育は、我の世界の深まりと、我と我とが織りなす我々の世界、双方の充実を期さなければなりません。
 私は、現行教育基本法にある個人の尊厳、人格の完成の理念を、学校教育のみならず、生涯学習を含めて貫き、教育を大切にする社会を形成しなければならないと考えます。

 ビクトル・ユゴーは、海よりも壮大な眺めがある、それは大空である、大空よりも壮大な眺めがある、それは人間の魂の内部であると言っています。海よりも大空よりも広いものが人間の心だというユゴーの言葉は、ある意味では、地域をも国家をも超える、自由闊達な、時空を超える人間の生命空間の広がりと人間の無限の可能性への賛歌であると思います。教育はまさしく、無限の可能性を持つ人間を磨き、手入れをし、耕し、鍛え、豊かにするものでありましょう。

 憲法に規定されているように、教育を受けることは国民の権利であり、人間という視点を中心に据えた人間教育の復興に努めるべきだと考えます。総理の見解を伺います。
 同時に、グローバルな時代における日本人のアイデンティティーの問題であります。

 今から約百年前、明治期半ばの日本は、近代化への激しき波の中で、欧米の文明を受容しつつ、日本の文化、歴史とは何か、日本人とは何かと、多くの知識人、哲学者がアイデンティティーを模索し、問いかけました。
 新渡戸稲造の「武士道」が一八九九年。岡倉天心の「茶の本」、内村鑑三の「代表的日本人」、牧口常三郎の「人生地理学」などは、いずれも一九〇〇年前後の著作であります。今まさに、グローバルな時代における日本の未来を考えるときに、アイデンティティーの問題を、長い歴史的スパンと文化を常に念頭に置き、考えるべきであります。

 人は、その地域、環境によって与えられた文化を呼吸して生きていく存在であり、デューイの言うように、人間は学ぶことによって人間になる存在であります。それゆえに、最終価値を押しつけるのではなく、成長の過程で、人間観や自然観、国家観や世界観を持つ、判断力を持つ人間へと育ち行く教育が大切だと思います。総理の見解を伺います。
 さらに、先ほど述べました、人と人との間に生きる人間、社会の中に生きる人間の教育についてであります。

 率直に言って、人と人とのつながり、人と自然とのつながり、人と社会とのつながりが希薄になっていることは事実であり、これを取り戻す努力が必要となっています。個人ではなく私人になっていると批判し、それを現行の教育にすべて帰するのは誤りであります。むしろ、社会の変化によるところが極めて大きく、高度に発達した社会全体が大衆社会化状況において個の埋没や人間関係の分断化をもたらすものであることは、数十年前よりオルテガやホイジンガ、リースマン、オーウェル等が先駆的に指摘したところであります。

 私は、だからこそ、教育によって、他者への無関心と閉じた自己意識を克服すること、分断からのきずなの回復を目指す視点が大事であると思います。むしろ、より積極的に、本当の意味での幸福感は、人間と人間、人間と自然といった結びつきを通してしか得られない、その中において人格は鍛えられるものだという積極的考えに立つべきだと思います。総理のお考えを伺います。

 次に、今回の教育基本法案について何項目か伺います。
 第一に、なぜ改正するかという点であります。
 制定された昭和二十二年当時は、憲法二十六条においても、教育基本法においても、国民は、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う、その義務教育は九年であると書かれているように、当時は小学校教育さえ十分に受けさせられない家庭すらあったという状況であり、貧困の悪循環を断ち、国家には教育保障責任があることを規定しています。それが今、高校進学率が九七%、大学、短大への進学率が五割にも及び、むしろ大学の質と役割が問われる状況となりました。
 さらにまた、幼児期の教育や生涯学習、社会教育など、学校という場ではない教育が重要となっています。こうした時代の変化に対応した教育を打ち立てる基本法案になっているのか否か、お伺いいたします。

 第二に、教育の現状認識であります。
 昨今、教育にかかわるさまざまな問題が噴出しています。制定当時、想定されていなかった児童虐待や不登校、いじめ、薬物汚染、さらには学力低下の問題、そしてニート、フリーターの増加など、社会も教育現場も激変しています。また、子供を取り巻く社会環境も大きく変化し、高度情報社会、メディア社会、地域のつながりの希薄化、核家族化、労働環境の激変などにさらされています。それらの変化が子供の心をしぼませたり、傷つけたりしていることは間違いありません。これらの教育にかかわる諸問題をどうとらえるのか、教育基本法との関連で総理の御見解をお伺いしたいと思います。

 第三に、教育力の低下の問題です。
 子供は社会の鏡と言われます。少年による犯罪やいじめ等の問題が取り上げられると、家庭でのしつけや学校教育のあり方のみに問題があるかのような議論が交わされていますが、果たしてそうなのか。社会総体が本来有しているはずの教育力の低下という根因が巣くっていると思います。教育力の向上についての考えを伺います。

 第四に、学校教育の位置づけです。
 今回、義務教育を九年とする規定を教育基本法から外しましたが、それでは、小学校は一体何を教えるところなのか、中学校は何を教えるのか。普通教育、義務教育、初等教育、中等教育、高等教育、そして高等学校、大学との関係と性格と位置づけを明確にすることが大切だと思います。特に、私は、高校とは何かというその位置づけの不明確さが気になります。これらの点、今回の改正でどう位置づけたのか、お答えいただきたい。

 第五に、ニート、フリーター、そして二十代の雇用問題が我が国において今極めて重要な問題となっています。当然、職業教育が大きな役割を果たすことになりますが、中学、高校、大学教育の中でどのように組み込むか、現状と展望をお示し願いたい。

 最後に、今回の改正は、今から六年前の二〇〇〇年、小渕内閣、森内閣のもとで行われました民間有識者より成る教育改革国民会議の議論が事実上のスタートとなっています。そのとき、私も政治家として特別参加させていただきましたが、その答申で十七の提言があり、最後に指摘されたのがこの教育基本法改正と教育振興基本計画の策定でありました。そのほか、十五の提言が既に法改正を初め実現していると思いますが、その状況をお示しいただきたい。
 以上、何点か指摘させていただき、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 太田議員に答弁いたします。
 教育改革への決意でございますが、社会の未来を切り開くのは人であります。人こそが我が国の財産であります。我が国が今日まで発展してきたのは教育を重視してきたからであり、一人一人が豊かな人生を生き、互いに支え合って豊かな社会を築いていく原動力は教育であると私は信じております。
 今後とも、教育を国政上の重要課題として位置づけ、一人一人の人間力の向上を目指し、社会全体の力を結集して教育改革に全力を挙げて取り組んでまいります。

 人間という視点を中心に据えた教育についてですが、教育の本質は、教える者と学ぶ者との人格的触れ合いの中で、一人一人の能力を最大限に伸ばし、その可能性を開花させ、自立した個人としてそれぞれが夢と勇気を持って、かけがえのない豊かな人生を送ることができるようにするものであると考えております。

 御指摘のように、個人の尊厳や人格の完成の理念を教育全体に貫くことは普遍的で重要なものであると考えており、今回の教育基本法案においても、現行法に引き続き、これらの理念を規定することとしております。
 アイデンティティーと教育ですが、グローバル化が一層進展した新しい時代においては、一人一人が、先人の築いてきた知恵や文化に触れ、理解を深めるなどの経験を通じ、みずからがはぐくまれてきた背景を理解し、自覚することにより、日本人としてのアイデンティティーを確立することが重要であると考えております。

 同時に、国際社会を生きるこれからの日本人として、他国の多様な伝統、文化を尊重し、国際社会の平和と発展に貢献していくこともまた重要であると考えております。
 人間と人間、人間と自然などの結びつきという視点からの教育ですが、御指摘のように、少子化や都市化などが進み、人と人とのつながりや人と自然のつながりが希薄になっている今日において、教育を通じて社会体験、自然体験などを豊富に積み重ね、豊かな人間性や社会性を身につけることはますます重要になっていると考えております。

 教育の現状認識ですが、科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化など、我が国の教育をめぐる状況は大きく変化しております。近年においては、道徳心や自律心の低下が指摘され、いじめ、不登校、さらには家庭や地域の教育力の低下など、さまざまな課題が生じております。

 これらの課題を社会全体の問題としてとらえ、それぞれの原因を究明し、総合的に解決していくことが必要でありますが、それと同時に、教育基本法を改正して新しい時代の教育の基本理念を明確にし、国民全体による教育改革を着実に進めていくことが重要であると考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 太田議員から五問、御質問を賜りました。
 最初に、時代の変化に対応した基本法案となっているかどうかとのお尋ねでありました。
 教育基本法の制定以来、半世紀以上が経過する間、社会状況が大きく変化し、高校、大学の進学率の上昇とともに、家庭や地域の教育の重要性が増すなど、教育のあり方は変容を遂げております。
 このため、教育の根本にさかのぼった改革が求められており、今回の法案では、現行法の普遍的な理念は大切にしながら、今日重要と考えられる理念を明確にいたしております。また、時代の変化を踏まえ、新たに、生涯学習の理念や大学、さらに家庭教育や幼児期の教育の規定を設けるなど、新しい時代の教育の基本を明確にするものとなっていると考えております。

 次に、社会全体の教育力の向上についてお尋ねでありますが、子供たちをめぐる課題は大人社会の病理の投影とも言われており、社会全体の教育力の低下がその根本にあると考えております。
 今回の法案においては、家庭、学校、地域社会の三者がそれぞれの責任を自覚し、連携協力に努めることを新たに規定いたしております。これにより、社会全体の教育力を高め、心身ともにたくましい次世代を担う子供たちを社会全体ではぐくむことができるよう努めてまいりたいと思います。

 次に、普通教育や義務教育、高等学校、大学の位置づけなどについてお尋ねでありますが、まず、義務教育に関する規定においては、義務教育として行われる普通教育の目的を明示するとともに、機会の保障や水準の確保を図るため、国、地方公共団体の責任を規定しております。また、学校教育に関する規定においては、初等教育から高等教育までを通じた学校の基本的な役割として、児童生徒などの心身の発達段階に応じ、教育を組織的、体系的に行うものであることを規定しております。
 新しい教育基本法のこうした規定を踏まえ、現在、大変多様化している高等学校の位置づけなど、各学校種のあり方などについて、今後十分に検討を行っていく必要があると考えております。

 次に、職業教育についてのお尋ねでございますが、今回の改正案では、「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。」を教育の目標として規定しております。
 ニートやフリーターについては、雇用環境や景気の動向のみならず、将来の目的が見出せず、何をしたらよいのかわからない若者の増加も背景の一つと考えます。これからの学校教育においては、学ぶことの意義の自覚や自分の将来に関心、意欲を持たせることなどを通じて、望ましい職業観、勤労観や主体的に進路を選択する能力、態度を培うキャリア教育の充実が重要であります。
 このため、中学校における五日間以上の職業体験の推進や、高校、大学等におけるインターンシップなどの推進など、キャリア教育の充実に取り組んでおります。今後とも、生徒や学生がみずからの生き方を考え、主体的に職業を選択できるよう、キャリア教育の充実に積極的に取り組んでまいります。

 最後に、教育改革国民会議からの提案への対応についてのお尋ねでありますが、国民会議での報告では、人間性豊かな日本人の育成、一人一人の才能を伸ばし、創造性に富む人間の育成、新しい時代の新しい学校づくり、教育振興基本計画の策定と教育基本法の見直しの四項目について、十七の御提案をいただいております。
 具体的には、平成十四年一月から、指導が不適切な教員の転職を可能とする制度を導入し、平成十五年四月に、高度専門職業人の養成に特化した専門職大学院制度を創設するなど、教育改革を迅速かつ果断に実行してきたところであります。

 また、今日、教育基本法の改正案を国会に提出したところであり、今後とも、教育改革国民会議の御提案を踏まえ、教育改革にしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。(拍手)

■11月17日参議院本会議(山下栄一質問)

165国会 本会議会議録 2006年11月17日


山下栄一君 私は、公明党を代表し、教育基本法案について安倍総理に質問をさせていただきます。
  明治の初めの学制発布より百三十余年、さらに、戦後六十余年が経過し、日本の教育、人の命をはぐくむことは、かつて経験したことがないほど機能不全に陥っているように見えます。公表されている児童虐待、そして、その半分以上が実母によると言われています。学校教育の機能不全とも言える不登校問題、中学校では平均ではどのクラスにも一人以上は存在する計算です。実の親による児童虐待、そして不登校問題もともに例外現象ではないというとらえ方が大事だと思います。

 家庭、地域社会、企業、そして学校、すなわち、日本の社会全体が人を育てることに関し大変な機能不全状態にあるという強い危機感に立ち、社会そのものの在り方を問い直すべきときに来ています。そして、日本社会の最重要課題は、学校の教育力だけではなく、社会全体の教育力をいかに回復するかにあると強く訴えたいと思います。
 安倍総理、この私の問題意識を共有していただけますでしょうか。

 まず、最近起こっている深刻な課題について質問いたします。
 一つはいじめ問題です。
 いじめが主要な原因と考えられる小中学生の自殺が連続しております。いじめられる側にも問題があるという考え方がありますが、この考えの中にいじめがなくならない原因があるように思います。いじめに甘い社会であってはなりません。いじめられる側が悪いのではなく、いじめる側が一〇〇%悪いという考え方に立つことこそ生きた道徳教育であると思います。
 孤独地獄に陥っているいじめの被害者の心のやみに光をともす環境づくりが政治の仕事ではないでしょうか。子供の人権を断じて守るという強い決意に立っていじめ対策を取るべきです。
 学校内のいじめの情報を共有するための教員間の連携体制が恒常的にできていることが第一です。

 その上で、文科省、教育委員会、学校というラインの外に子供や保護者が相談できる第三者機関を地域につくる必要があります。分断された家庭と教育をつなぐ第三者的な相談機関と言ってもよいでしょう。例えば、兵庫県川西市や神奈川県の川崎市などに数年前から設置されている子どもの人権オンブズパーソン制度があります。また、茨城、兵庫、香川、大阪等で広がりつつあるスクールソーシャルワーカーの配置です。これは福祉と教育の連携という視点です。
 身近な地域で心の悩みを相談できる体制づくりについての総理の所見をお伺いいたします。

 次に、全国の高校の一割を超える学校で起きた未履修問題です。

 今や大半の中学生が高校に進学する時代です。その高校は、普通科、専門科、総合学科、また別の分類では全日制、定時制、通信制、また学年制と単位制など、高校の多様化が各県で著しく進んでいます。すべての高校生が学ぶべき必履修科目の在り方、履修時間の在り方を、継ぎはぎではなく高校教育の在り方を含め抜本的に見直すべきです。

 さらに、高校学習指導要領の弾力的運用についてです。国の基準は大綱にとどめ、具体的基準作りやその運営責任は設置者に任せるべきと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 次に、教育基本法案の主要な論点について確認したいと思います。
 我が党は、現行基本法の理念の骨格は堅持すべきだと主張しています。法案前文の「日本国憲法の精神にのっとり、」については、その精神の根幹は個人の尊厳の理念であると考えますが、いかがですか。

 次に、付け加えるべき理念としては生涯学習の理念です。
 人はだれも、いつでもどこでも学び、自身の人格を磨き、成長していく権利があるという考え方です。学ぶ側を重視する考え方に立ち、教える側は学ぶ側をサポートする役割という考え方です。この生涯学習の理念の意義について御所見をお伺いいたします。

 付け加えるべき理念として重視したい次の視点は、国際人権保障の流れです。
 父母及びその保護者は我が子の教育について第一義的責任を有する、これは子どもの権利条約で確認されたものです。人間は、自身の成長だけでなく、後継者をきちんと育てることが必然の責務のはずです。物質文明の進展とともにこの点が危うくなっています。児童虐待はその最たるものです。親の子育て責任が大前提で、その上に公教育があるというのが正しい考え方だと思いますが、総理いかがですか。

 多文化共生の教育という考え方も国際人権規約で保障されています。これを反映したのが、法案の二条五項で規定されている「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する」という部分です。我が国の伝統文化だけではなく、他国そして他国の伝統文化も尊重するという趣旨です。多文化共生の理念は、品格ある美しい日本、国際社会で信頼される日本をつくるための大切な理念と考えますが、いかがでしょう。

 次に、国を愛する態度についての考え方です。
 法案の方向性を示した中教審の答申で、国を愛する心を規定すべきと提言されました。我が党は、国家主義には反対、国という表現に統治機構は含まないと一貫して主張してまいりました。ナショナリズムではなくてパトリオティズムという考え方に立った表現として、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛しという規定になったと理解していますが、確認いたしたいと思います。

 また、国を愛する態度を教育評価の対象にすることは、基本的人権の柱である精神の自由を侵すおそれがあります。教育の評価の対象にしないことを明確にお答えください。

 自身が育った、また住んでいる町への愛着を感じない若者が多いと言われます。自身が育った郷土への愛着があって初めて国を愛する気持ちもわいてくるというのが自然の考え方ではないでしょうか。地域の歴史や生活、文化の学習を中心とした郷土教育の重要性は、現在、地域コミュニティーの崩壊が深刻な問題になっているだけに確認したい点です。郷土教育を充実させるための地域における様々な取組、特に自主的な郷土教材づくり、住民参加型の教材づくりは大変重要だと考えますが、いかがでしょうか。

 最後に、教員の在り方について確認したいと思います。
 教育、すなわち人を育てる行為は、医療や芸術と同様、文化的行為であり、自主性を重んじ権力から距離を置いて行われるべきものです。指揮命令という官僚統制は最小限に抑制すべきだと考えます。教育の自主性重視は教育行政において尊重すべきであります。

 教員の身分は、公務員の地位にある場合でも一般公務員とは趣を異にし、むしろ司法官の地位に近いものであると考えます。法案九条で、教員は自己の崇高な使命を深く自覚しとあり、また、教員はその使命と職業の重要性をかんがみ、その身分は尊重されとあるのはこのような視点からであると考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 現在、教員を取り巻く環境は厳しさを増す一方です。二十一世紀に入り、教員の仕事は激増しているにもかかわらず、人件費削減の中で学校への人の配置は増える気配は現在ありません。子供にとって最大の教育環境が教員自身であるという観点から、私は今、教員に必要なのは教員を形式的な評価にさらすのではなく、しっかりとサポートすることだと主張いたします。

 教育再生のかぎは、教員の応援体制を財政支援を伴わせて強化することであって、締め付けることではありません。免許の更新制も大事ですけれども、大学教員養成課程を充実させることであり、教師という職業はしんどくてもやりがいのある職業として若者が職業希望の第一位に挙げたくなるような環境整備が必要であると考えますが、御所見を伺います。

 児童虐待、そして不登校、日本の教育の行き詰まりが日増しに大きくなっている今だからこそ、人を育てることの重みを国民が共有し、国家のための教育ではなく、教育のために国家があるという理念のベクトルの大転換が必要です。政治や経済というより教育の深さが日本の未来を、子供の未来を決めると確信いたします。

 教育基本法案の国会審議を日本が教育で世界をリードする流れをつくるための突破口にと訴え、質問を終わります。


内閣総理大臣(安倍晋三君) 山下栄一議員にお答えをいたします。
 社会全体の教育力の回復についてお尋ねがありました。
 学校、家庭、地域社会は教育においてそれぞれ重要な役割と責任を担っており、社会全体の教育力の再生は極めて重要な課題であると認識しております。

 いじめ問題に対応した相談体制づくりについてお尋ねがございました。
 いじめ問題については、子供の訴えなどの問題の兆候をいち早く把握し、学校、家庭、地域社会が連携して迅速に対応することが重要です。現在、地域の実情に応じて第三者機関を活用した取組やスクールソーシャルワーカーのような専門家を活用した取組があることを承知をしております。政府としても、子供一人一人を地域で一体となって守り育てていくため、教育機関や福祉機関を始めとした関係機関が連携した取組がなされるよう推進してまいります。

 高校の未履修問題に関連して、高校教育の在り方についてお尋ねがありました。
 各地の高校で大学受験のため必修科目を履修させていないことが判明したことは極めて大きな問題と考えております。今後、大学入試の改善とともに、高校生にとって必要な幅広い知識と教養とは何かという観点から、高校教育の在り方を検討する必要があると考えております。

 高校の学習指導要領の弾力的な運用についてお尋ねがございました。
 高校の学習指導要領は、必修科目を除き学校の判断で生徒が履修すべき科目を設定できるとともに、学校独自の教科、科目を設けることができるなど、現在でも教育課程の編成の上で高校の裁量を大きく認めております。各高校には必修科目の履修などルールはしっかりと守った上で、特色ある学校づくりのために裁量を活用してもらいたいと考えております。

 教育基本法案に言う日本国憲法の精神についてのお尋ねがございました。
 現行の教育基本法は、日本国憲法に定める理念を具体化するための規定を多く含むなど、日本国憲法と密接に関連している法律であり、このような理念の骨格は今回の改正によって変わるものではないことから、教育基本法案において引き続き「日本国憲法の精神にのっとり、」と規定しています。また、前文における「個人の尊厳を重んじ、」や、第二条第二号の「個人の価値を尊重して、」など、憲法の精神を具体化する規定を設けているところであります。

 生涯学習の理念の意義についてお尋ねがございました。
 科学技術の進歩等により人々は絶えず新しい知識や技術の習得を求められており、また、人生をより豊かなものにする観点からも生涯にわたって学習に取り組むことが重要であり、また意義深いものと考えます。
 このため、だれもがいつでもどこでも自由に学べる社会の実現が必要であり、このような学習者の視点に立って教育に関する各種の施策を推進することが重要であると考えます。このような観点から、教育基本法案においても生涯学習の理念を規定したところであります。

 父母の第一義的責任についてお尋ねがありました。
 教育は学校だけで全うできるものではなく、何よりも大切なのは家庭であります。すなわち、家庭教育はすべての教育の出発点であり、家庭の教育力の向上に努めることが公教育の充実につながるものと考えております。今回の教育基本法案においては、このような家庭教育の重要性にかんがみ、父母その他の保護者が子の教育について第一義的責任を有することを明確に規定しているところであります。

 多文化共生の教育についてお尋ねがありました。
 今日、急速に国際化が進展する中にあって、自らが国際社会の一員であることを自覚し、日本人として異なる文化や歴史を持つ人々といかに共生していくかが重要な課題となっており、自国の、自分の国のみならず、他国の伝統や文化などを尊重する態度を養うことが求められております。そこで、本法案では、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」を規定しており、こうした教育を通じ、世界に信頼され、尊敬され、愛される国の実現を目指してまいります。

 愛国心についてお尋ねがございました。
 法案に言う我が国を愛するとは、歴史的に形成されてきた国民、国土、伝統、文化などから成る歴史的、文化的な共同体としての我が国を愛するという趣旨であります。この趣旨を条文上明確にするため、伝統と文化をはぐくんできた我が国と郷土を愛すると規定し、統治機構、すなわちその時々の政府や内閣等を愛するという趣旨ではないことを明確にしております。このことは自由と民主主義を尊ぶ我が国にとって当然のことであります。

 国を愛する態度の評価についてのお尋ねがありました。
 我が国と郷土を愛する態度の評価については、子供の内心を調べ、国を愛する心情を持っているかどうかで評価するものではありません。学習する態度を評価するものであり、内心の自由にかかわって評価するものではありません。

 郷土教育についてお尋ねがありました。
 子供たちが地域の伝統と文化を学び、自分の生まれ育った郷土や地域を大切にする態度を養うことは重要であります。このため、郷土の人物や文化財、自然、産業など、地域の様々な特色を生かした教材を地域の住民の協力を得て自主的に作ることは大切なことであると考えております。

 教員の地位、身分などの在り方についてお尋ねがございました。
 教育という営みにおいては、教育の機会や水準の確保のための全国的、共通的な一定の基準の下、児童生徒の実態に応じ、各学校における創意工夫を重視することが重要であります。また、教員の職務は専門的知識や技術の習得だけではなく、豊かな人間性、深い教育的愛情など全人的な資質、能力が求められるなど、一般の公務員等とは異なる特殊性を有しております。

 このため、このような教員の職務の重要性を改めて自覚する必要があることをより明確にする観点から、改正案においては「自己の崇高な使命を深く自覚し、」と規定しました。さらに、教員が安んじて教育活動に専念できるようにするためには、その身分が社会的、制度的に尊重されることが必要であるため、現行法を引き継ぎ教員の身分は尊重されるべきことを規定しております。

 教員の環境整備についてお尋ねがありました。
 学校教育の成果は教員の資質と熱意に負うところが大きく、教員に優れた人材を得ることは教育政策上の極めて重要な課題です。このため、教員免許更新制の導入だけでなく、学校における教員養成課程の充実等により質の高い教員の養成確保に努めるとともに、優秀教員の表彰や能力、実績に見合っためり張りを付けた教員給与体系の検討など、更なる環境整備に努めてまいります。(拍手)

■12月15日参議院本会議(公明党・賛成討論 風間昶)

165国会 本会議会議録 2006年12月15日

○風間昶君 私は、公明党を代表して、教育基本法案につきまして賛成の立場から討論をいたします。
 戦後、我が国の学校教育は、日本国憲法、教育基本法の下、戦前の国家主義、中央集権の教育行政を否定する形で出発しました。国民に新しい民主国家、平和国家を形成するという希望と責任を与えるという高い理念を掲げるものであり、それが現在の学校教育の振興や経済発展の基礎となってまいりました。しかし、六十年を経た今日、子供をはぐくむ家庭や地域社会そのものの変化が原因となって深刻ないじめや校内暴力、子供の規範意識や学ぶ意欲の低下などの課題が生じております。

 こうしたことから、特定政党の憲法草案にのっとったものでなく、日本国憲法の精神にのっとった現行法の理念を大切にしながら、社会の変化に対応するという観点から、足らざる部分を補うという考え方に立った改正が重要と確信しております。
 以下、賛成の理由を具体的に申し述べます。

 まず第一は、生涯学習の理念を明示したことであります。現行法は、どちらかというと学校教育にウエートを置いた規定になっておりますが、教える側よりも学ぶ側を重視した学習の理念とともに、激しく変化する社会において、あらゆる機会にあらゆる場所で学習できる社会の実現を明示した意義は大きいと言わなければなりません。

 第二は、現行法制定後の動きである世界人権宣言、国際人権規約、児童の権利条約などを踏まえた改正案になっていることであります。
 一つ目に、国際社会、国際平和に更に貢献できる人間の育成、あるいは多文化共生の社会を目指しているということであります。伝統と文化を尊重するという姿勢も、我が国のみならず、他国の伝統と文化も同様に尊重しなければならないという意味を内包しております。第二条「教育の目標」に「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」としているのもそうした考え方に立つものであります。戦前のようなへんぱな愛国心は、むしろ否定する考え方に立っていることをあえて指摘したいと思います。
 二つ目に、家庭教育の条文に、児童の権利条約に明記されている父母及び保護者の第一義的責任を明示し、家庭教育本来の自主性の担保についても明らかにされているところであり、行政が家庭教育の内容にまで介入するのではないかという懸念は杞憂にすぎないと言わざるを得ないのであります。

 第三は、第二条の教育の目標達成の大前提として学問の自由の尊重を掲げたことです。個別の教育目標において、教育の自主性を前提とした学問の自由が学校教育を始めあらゆる教育活動において尊重すべき基本理念であることを明らかにしたことであります。

 第四は、教育の目標の中に男女平等を明記したことであります。男女共学につきましては、その普及状況からして削除いたしましたが、より基本となる男女平等を教育の目的及び理念の章に記述して、真の男女平等社会の実現を目指しているということであります。

 第五は、教育行政についてであります。改正案では、教育は、不当な支配に服することなく、法律の定めるところにより行われるべきものであると明記し、教育行政機関が法令ではなく法律に従って公正かつ適正に行うとの責務を明確化したことであります。本規定により、政省令や告示を作成する行政機関が不当な支配の主体になり得ることを明らかにしたものであり、不当な支配の主体の範囲を狭くすることに意図があるわけではないことは答弁からも明らかであります。

 さらに、教育振興基本計画の規定を設け、教育の振興に関する施策について総合的、計画的な推進を図ることとされており、これにより、教育内容への公権力の介入を必要最小限に抑制しつつ、国、地方を通じた教育条件の着実な整備が図られたことが期待できます。

 本委員会においては、連日の政府質疑に加え、三度にわたる参考人質疑、六都市における地方公聴会、そして中央公聴会と、国民の皆様の多様な意見を聞きながら丁寧で濃密な審議が行われました。
 新しい教育基本法の下、学校教育法や地教行法の抜本的見直しを始め、子供の幸福のためにという根本原則に立って必要な諸条件を構築することが私たち大人の役割であることを申し添えまして、賛成の討論といたします。(拍手)

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