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改正教育基本法成立に当たり確認すべき重要事項(個人的見解)
2006.12.31

T.基本法改正案は議員立法ではない

○ 2000年3月に小渕首相が、内閣総理大臣の諮問機関として「教育改革国民会議」を設置。同年12月に、教育改革に関する15の具体的施策とともに、教育基本法の見直しと教育振興基本計画の策定の必要性を合わせた17の提言を発表。

○ 教育基本法改正以外の項目に関しては、法改正などで対応してきた。

○ 教育基本法の改正については、教育改革国民会議の提言を受けて、議論の場を中央教育審議会へ移し、検討を開始。(2001年11月)

○ 基本法制定当時(昭和22年)から時代は大きく変化している。制定当時は、子どもに義務教育を受けさせることが大きな課題であったが、今日では、高等学校への進学率は97%を超え、大学進学者も多く、大学のあり方自体(知の専門性や職業の関連など)が問われるようになっている。

○ また基本法制定当時では想定されていなかったような問題(児童虐待、ニート・フリーター問題、いじめ・不登校・学級崩壊、科学技術の進展等)が噴出し、社会も教育現場も大きく変化している。国際社会へ目を向けてみると、世界の中の日本という視点も強く求められるようになった。さらに、子どもの人権保障をはじめ、国際的な人権関連の条約の締結も進展した。

○ こうした国内・国際的な大きな変化の中で、教育において重視すべき点も変化してきていることから、中教審は2003年3月20日「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(答申)を発表。

○ 教育基本法改正については、拙速な判断があってはならないということから、中教審の答申後、与党として検討会を立ち上げ、今日まで3年間、70回にわたる協議を進めてきた。

U.ポイント

前文


1.「日本国憲法の精神にのっとり」

○改正前の教育基本法は日本国憲法の「教育を受ける権利」(26条)「学問の自由」(23条)「個人の尊重」(13条)「思想及び良心の自由」(19条)「信教の自由」(20条)など、教育と国家との関係で踏まえるべき大原則を明記している。この優れた理念を継承しつつ足らざるところを補う観点から改正されたのが、今回の改正教育基本法である。従って新教育基本法という呼び方は適切ではない。


第一章 教育の目的及び理念

1.教育の目的は教育の普遍的な原理としての「人格完成」。(1条)

2. 教育の目標を達成するために踏まえるべき大前提は、教育の自由性を志向する「学問の自由」である。(2条)
  「国を愛する態度を養う」という目標も、「学問の自由」「教育の自主性」を踏まえることが前提。

3.男女の平等(2条3号)
  「男女共学」の条文は削除されたが、「男女平等」は教育全般の理念として位置づけられた。

4. 多文化共生の理念(2条5号)
  「伝統と文化を尊重し、……他国を尊重し」とは、日本の国や郷土を愛するだけでなく、伝統と文化を育んできた他国を尊重することを明記した。(子どもの権利条約29条)

5.生涯学習の理念
  教える側より、学ぶ側の立場を重視する「生涯学習の理念」を新たに規定した。(2条4号)


第二章


1.父母の子の教育についての第一義的責任(10条)
  「子どもの権利条約18条」の考え方を基本法に明記することにより、「教育の自由」を志向する家庭教育の重要性の確認と同時に、家庭教育の「自主性の尊重」を明記。

2.学校、家庭、地域住民の相互連携(13条)
  「人を育てること」は学校だけでなく学校・家庭・地域社会など、あらゆる社会集団が相互に協力して行うべきものであることを確認。(「教育のための社会」「人間の幸福のための社会」という理念に通じる。)


第三章


1.教育行政(16条)

   ・ 「不当な支配に服することなく」とは「教育の自主性」「教育の政治的中立性」という教育行政がふまえるべき大原則を継承。

   ・ 「法律の定めるところにより」であって「法令の定めるところにより」でないことを確認。それは政省令を定める教育行政機関が「不当な支配」の対象になりうるからである。

    ・ 「法律に定めるところにより」とは、単に手続き的な面で法律を根拠にして教育行政を行えばよいというものではない。法律の手続的合法性のみならず、内容的正当性をもってはじめて法律による行政が成り立つものである。

    ・ 教育行政が恣意的に行われたり、権力的に実施されたりすることを避けようという趣旨。従って、教育行政が従うべき法律は、教育を受ける側や教育を行う側にとって、権利や権限を不当に侵すようなものであってはならないし、不当な内容のものであってもならない。

   ・ 教育という営みが、自由な人間の精神活動に関するものである限り、本質的に法律になじみにくい部分がある。従ってすべての教育事項を法律で規律できるとか規律すべきとする、法律万能・法律絶対の考え方は誤りである。教育行政の法律主義には、このような意味で自ら制約があることを留意すべきである。

2. 「教育振興基本計画」(17条)
  教育の条件整備としての計画は重要である。
  ただし、教育内容に関しては、公権力の介入は必要最小限に抑制すべきである。


第四章


参考「現行法10条の変遷」
※『資料教育基本法50年史』(鈴木英一・平原春好編 勁草書房)より作成

○昭和21年11月29日案(教育基本法参考案・教育刷新委第一特別委作成)
  + 教育行政は、学問の自由と教育の自主性とを尊重し、教育の目的遂行に必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならないこと。

○昭和22年1月15日案(文部省作成)
 第十一条 教育行政 教育は、不当な政治的または官僚的支配に服することなく、国民に対し、独立して責任を負うべきものである。
  教育行政は、右の自覚のもとに、学問の自由を尊重し、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

○昭和22年1月30日案(文部省作成)
 第十一条 教育行政 教育は、不当な支配に服することなく、国民に対し直接に責任を負うべきものである。
  教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

○昭和22年3月4日閣議決定
 第十条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民に対し直接に責任を負って行われるべきものである。
  教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

○昭和22年3月12日枢密院議決
 第十条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。
  教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

○昭和22年3月31日 教育基本法(昭和22年法律第25条)
 第十条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。
 A 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

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